九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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学会長基調講演:アクティブ・ライフ
-生活習慣病とリハビリテーション-
*塩塚 順
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p. 1

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抄録

生活習慣病の中で、癌、脳卒中、JL、疾患は日本人における3大死亡原因である。その中でも脳卒中、心疾患の原因は血管の動脈硬化を基礎とする血管病変が主である。動脈硬化を起こす原因には脂質代謝異常からなる肥満を伴うことが多い。各年代における肥満者の割合は、若年代になるはど高くなっており、幼少時の遊びの変化や副食(おやつ)や外食・主食の欧米化が要因と考えられる。一説には、死亡原因の第1位である癌が特効薬の出現で仮に治療(治癒)可能となっても、平均寿命は約3年しか延びない。しか し、肥満者がいなくなると驚くことに7年は平均寿命が延びると云われている。このことは肥満に伴う様々 な原因で多くの病気を引き起こしていることが容易に分かる。肥満の中では内臓脂肪型肥満(上半身肥満・ リンゴ型)が問題であり、特に冠動脈疾患の発症と高く関連している。
 冠動脈疾患に関連するさまざまな危険因子は、個々の因子が冠動脈疾患の発症と進展に寄与するばかり でなく、相互に関連し、集積することで冠動脈疾患のリスクをさらに上昇させることが指摘されている。これには、主にインスリン抵抗性や肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧などが関連する。近年、そうした病態は「マルチプルリスクファクター症候群」と総称することがWHOから提言されている。アメリカでは肥満が社会問題とな?ており、死亡原因の第1位は癌ではなく心疾患である。
 日本人の場合は少ないが2型糖尿病も肥満が原因になる場合が多く、糖尿病患者では脳卒中の発症率は 一般人に比べ約2~3倍と高い。合併症として腎症を伴う場合は脳出血の発症率は8倍とも云われている。 また、肥満者の場合は閉塞型睡眠時無呼吸症候群の発症との関係も深く、減量により症状の改善する症例も多く見られる。運動の効果としてHDLコレステロールの増加に伴い高血圧の改善が確認されている。
 従来は各疾患を発症した後の理学療法・作業療法が行われていたが、最近は予防リハビリテーションや介護予防で転倒骨折教室や高齢者筋力増強トレーニング事業などに我々も関与する機会が増えた。中高齢者の病院・施設から在宅での「アクティブ」な生活の場面での日常での生活習慣の改善や支援体制作りが今後は増えることが期待される。
 今回の学会長基調講演では、生活習慣病の中でも肥満を主とした、動脈硬化や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群におけるリハビリテーションの可能性について論じてみたいと思う。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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