九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
会議情報

当院の医療連携の現状と課題
*徳丸 由美子
著者情報
キーワード: 医療連携
会議録・要旨集 フリー

p. 76

詳細
抄録
【はじめに】
 当院は、232床のケアミックス型の病院である。施設基準は、総合リハ承認施設A、言語聴覚療法施設?を取得している。今回は、急性期病院との連携(以下、前方連携)、入院中のスタッフ間の連携(以下、院内連携)、退院後の連携(以下、後方連携)について回復期リハ病棟を中心に整理し、今後の課題について考察した。
【前方連携】
 入院の連携は、入院受入前訪問(以下前訪問)の実施、疾患別病病連携パス(以下連携パス)、診療情報提供書等を主体に行っている。前訪問は、回復期リハ病棟入棟予定者を対象とし、紹介翌日の訪問を基本として、病床管理師長、理学療法士が訪問している。1回の訪問で1~6名程度、患者家族へのオリエンテーションと情報収集を行っている。情報は、院内の専門職種間で共有し、入院時からのADLや転倒対策に活用する。
【院内連携】
 入院後は、連携パスと前訪問による初期情報をもとに、合同カンファレンス、転倒アセスメント、家屋チェック、職場訪問など必要なプログラムを盛り込んだチームアプローチが展開される。
 連携ツールとして、?FIMに基づく「しているADL評価表」を作成し、一般病棟、回復期リハ病棟でのADLの把握や申し送りに活用している。?「転倒アセスメント表」は、リスクに対応した対策の指標がマトリクス上に示されており、入院、病室や病棟移動時に多発していた事故を防ぐためにリハと看護で活用している。?摂食嚥下リハビリテーションの情報共有ツールとして、「食札」、「食事状況記録票」を使用している。?「青磁野リハビリテーションカタログ」は、病院内の食事に関する標準用具、嚥下食の作り方、転倒・転落防止グッズ、褥瘡対策グッズなどがまとめられ、病棟、外来など関係各所に配置している。
 連携を支援する仕組みとして、?テクノエイド部門を開設し、相談、既製品の選定、製作、使い方の指導、モニター、研究開発を行っている。?病棟担当制を導入し、連絡調整の窓口として、病棟毎に、PT・OT・ST・MSWを各1名以上配置し、病棟ミーティングへの参加や、回診・カンファレンスの運営、病棟との種々の共同作業推進の役割を果たしている。?新人教育システムを考案・導入し、教育マニュアル、バイザーマニュアルをもとに指導を行っている。担当バイザーによる入職後3ヶ月間の専門域別基礎プログラム指導と、9ヶ月間のOJTから構成されるシステムである。病棟実習も含まれておりチームで行うリハビリテーションを徹底して指導していく。
【回復期の実績】
 当院では、急性期病院からの紹介患者は、まず、アセスメントユニットである一般病棟に入棟後、回復期リハ病棟に移るシステムである。一般病棟で平均4日間在棟し、回復期リハ病棟に入棟する。平均在棟日数は66日。
 転帰先は、50%が自宅復帰、34%は維持期リハ目的で介護療養病棟や老健施設へ入所している。様々な共同作業の試みが回復期リハ病棟の運営につながり、総合的な院内連携のモデルとして進化しつつある。
【後方連携】
 退院前から、本人、家族、ケアマネージャー等退院後の生活を支援する関係者も参加して合同カンファレンスを開催している。退院後の生活をシミュレートし、必要なサービスの最終調整を行う段階である。退院時には、関連施設へ情報提供を行っている。連携パスは、紹介元急性期病院へ退院時の状態、転帰先、住宅改修や適用サービスなどの情報をフィードバックした時点で完結するしくみになっている。
【考察】
 患者本位の医療連携は、急性期から回復期、維持期への継ぎ目のない円滑な流れがあってはじめて実現する。
 前方連携の課題は、連携パスの効果測定とデータベース作成および活用である。
 院内連携の課題は、チーム内での各職種の役割の明確化である。さらに、回復期から維持期病棟へのリハケアの連続性確保の課題があり、実現するためには、情報伝達の工夫、マンパワーの確保、関係職種のリハマインドの醸成が不可欠である。
 後方連携の課題は、法人内サービスとの連続性の確保、法人外サービスとの連携強化、かかりつけ医との情報交換、さらにはニーズの高い訪問・通所リハのマンパワーの充足であると考える。
 今後は、チームアプローチに対する認識を高め、共同作業の機会を増やし、知識を補完しつつ効率性、効果性の高いチームを形成し医療連携を強化していきたい。
著者関連情報
© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top