九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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橈骨遠位端骨折に伴う手関節の関節可動域制限因子に関する一考察
*多武 里恵安永  雅年益満 美寿田中 政敏
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p. 152

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抄録

【はじめに】
 橈骨遠位端骨折は、転倒・転落時に起こる骨折の中で股関節頚部骨折と並び受傷頻度の高い疾患である。手関節の可動域を拡大する事は、日常生活や復職に於いて筋力の回復と伴に重要な因子である。臨床上、手関節の他動的関節可動域(以下P・ROM)はある程度改善が認められているにも関わらず、P・ROMに比較して自動的関節可動域(以下A・ROM)は低下を示す症例を多く経験する。
 今回、橈骨遠位端骨折に伴うP・ROMとA・ROMの差(以下、ラグと称す)について若干の知見を得たので報告する。
【対象】
 対象は平成16年10月から平成17年3月の6ヶ月間に受傷した橈骨遠位端骨折患者9例9肢(男性5名・女性4名、右側4名、左側5名)であり、観血的治療8例(創外固定1例、プレート固定7例)、保存的治療1例であった。平均年齢60.9±10.7歳。受傷から調査日までの期間は平均13±6.7週であった。
【方法】
 まず手関節背屈・掌屈においての関節可動域測定を行い、P・ROMとA・ROMの値の差よりラグ値を求めた。ラグに影響を及ぼすと考えられる受傷からの運動開始期間(自動・他動)、腫脹の有無、内出血の有無、安静時痛の有無、手関節筋力、握力の6項目について調査し、これらの因子と手関節の背屈および掌屈ラグとの関連について検討を加えた。また、健側ラグ値と患側ラグ値を用いてt検定を行い、有意差を調べた。
【結果・考察】
 平均的ラグは、患側背屈18.3°・掌屈15°健側背屈ラグ6.7°・掌屈6.7°であった。対象者9名全症例に手関節背屈及び掌屈時に於けるラグを認め、背屈のみではあるが患側ラグと健側ラグにも有意差を得た(P<0.05)。各因子別分析から、受傷からの運動開始期間(自動・他動)、腫脹の有無、内出血の有無、安静時痛の有無、握力には有意差は認められなかった。ラグに最も影響を及ぼす因子の一つである筋力との関係では、手関節筋力の増強と伴にラグは減少する傾向が認められた。
ROM制限をもたらす要因としては、(1)関節の変形・不動等による関節性のROM制限、(2)炎症・不動等による軟部組織性のROM制限、(3)出血・腫脹・不動などによる筋性のROM制限があると述べている(Halar.E.M.Bell.K.R.1988)。今回、我々の研究でも筋性(筋力低下)による影響が認められた事は、この可動域のラグ要因と一致するものと思われる。今回は、症例数が少なく充分な検討ができなかった。症例数を増やし今後さらに追及していき、最終的には治療法への示唆へとつなげていきたい。

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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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