九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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腰椎分離症とハムストリングス柔軟性との関連
腰椎-骨盤アライメントの変化に着目して
*野崎 壮
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p. 49

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抄録

【はじめに】
 腰椎分離症に対し、過度の前彎を有する腰椎-骨盤アライメントの改善を目的とした理学療法が広く行われ、筋力強化、ストレッチが主体となっている。当院においても同様の指導を行い、症状の改善を得ている。指導の中にハムストリングスのストレッチが挙げられるが、腰椎-骨盤アライメントが前彎位にあれば、ハムストリングスは伸張位にあるため、症状改善とハムストリングスストレッチの有効性との関連に疑問を感じる。今回、腰椎分離症に対するハムストリングスストレッチの有効性を検討するため、症状の改善に伴う腰椎‐骨盤アライメントの変化とハムストリングス柔軟性との関連を考察した。
【対象】
 当院受診にて第5腰椎分離症と診断されたスポーツ競技者12名(男性6名、女性6名、年齢13‐19歳、平均14.8歳)。
【方法】
 ハムストリングス柔軟性の評価として左右Straight Leg Raising(以下SLR)角度、X-rayにて腰仙角、仙骨角、腰椎前彎指数の計測を行い、初期と最終(初診時より2‐6ヶ月)で比較し、Spearmanの順位相関にて検定を行う。
【結果】
 1 )各項目の平均値は、左SLR:初期77.1°(最低60°最大95°)最終84.1°(最低65°最大105°)右SLR:初期77.5°(最低60°最大95°)最終83.3°(最低70°最大105°)腰仙角:初期140.8°最終148.3°仙骨角:初期39.2°最終31.2°腰椎前彎指数:初期1.4cm 最終1.1cm。2 )SLR角度との相関は、腰仙角初期と右SLR角度初期、仙骨角最終と右SLR最終にのみ認められた(p<0.05)。
【考察】
 過度の腰椎前彎、骨盤前傾角度を有する腰椎分離症に対し、腰椎-骨盤アライメントの改善を目的として筋力強化、ストレッチを中心とした理学療法が広く行われている。今回、それらを中心とした理学療法によりハムストリングス柔軟性の増加、腰仙角の増加、仙骨角の減少、腰椎前彎指数の減少が見られ、指導内容は妥当と思われる。
 これらのアライメント変化とハムストリングス柔軟性との関連を見ると、相関関係を認めたものは少なく、腰椎‐骨盤アライメントの改善にハムストリングス柔軟性は関与しないことが示唆された。腰椎前彎を増大させる要因として腸腰筋、腰背部筋群の短縮、腹筋群の筋力低下が考えられ、症状改善には短縮位にある筋群のストレッチ、筋力低下を示す筋群の強化が必要であることは明確である。疼痛が著明である初期のSLR角度に60°から95°と大きな幅があるということは、全ての腰椎分離症患者がハムストリングス柔軟性の低下を有しているとは言えず、ハムストリングスに短縮が認められる者に対してのストレッチは当然だが、短縮が認められない者に対しては筋力強化を行っていくことが、早期の競技復帰、パフォーマンス向上につながるのではないだろうか。

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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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