九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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頸・体幹・骨盤帯機能検査でみる屋内歩行自立の要因
*真喜屋 賢二江口 友紀高橋 啓輔照屋 聡船曳 拓生金澤 寿久
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p. 65

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抄録
【目的】過去当院研究で屋内歩行自立の諸因子を検討した結果、頸部・体幹・骨盤機能検査(NTP)でstageVレベル以上の因子に歩行自立度との関係性を示唆する所見を得た。今回は当院で判定した屋内歩行自立群(自立群)と屋内歩行に監視を要する群(監視群)の違いをstageIV・Vの動作可能率で比較し、どの動作が歩行自立と関係があるのかを検証する。
【対象・方法】当院入院・外来で理学療法を継続中の脳卒中片麻痺患者30名を対象とし、歩行や立ち上がりが自立可能の者とした(男性19名、女性11名、平均年齢72±9歳、罹患日数567±45日)。歩行に支障をきたす整形疾患は除き、高次脳機能障害や認知症はそれぞれSIAS・HDS-Rを用いて評価した。方法は、被検者にNTPを実施し、stageIVおよびstageVと判定した群を抽出する。この2群間を主観的に判定された歩行自立・監視群で分け、stageIV群と監視群、stageV群と自立群で各々一致率を求める。自立群と監視群でのstageIV・Vにおける動作可能率を求めて比較する。一致率はstageIVでの監視人数/stageIV×100=(%)、stageVでの自立人数/stageV×100=(%)で求める。上記の主観的な判定の裏づけは、過去当院で報告した歩行自立度の要因と相関の高かった。1)10m最大歩行速度2.45m/min以下,2)6分間歩行距離142m以上,3)健脚立位23.56秒以上,4)timed up & go test 28.65秒により客観性を持たせた。統計学的検定はWelch’s T検定を用いて有意水準5%とした。動作可能率はstage項目動作遂行可能人数/自立・監視群総数×100=(%)で表わした。
【結果】stageIVと判定された群に監視群が含まれる一致率は75%、stageVと判定された群に自立群が含まれる一致率は85.7%となった。2群間のstageIV・Vの動作可能率を比較すると、stageIVa・b・cにおいて監視群では57%・50%・50%に対して自立群が81%・88%・100%となった。一方stageV-a・b・cでは監視群が21%・14%・7%に対し自立群は56%・38%・38%となった。監視群で多かった不可項目はStageV-cであった。
【考察】当院で規定している歩行自立群には、NTP stageVの割合が多く、屋内歩行自立にstageV動作可能の必要性が示唆された。NTP項目別で自立群・監視群の動作可能率を比較したところ、監視群に椅子坐位での骨盤挙上動作が不得手である傾向を示した。骨盤挙上動作は体幹と骨盤の分離性を要し、健脚立位バランスに大きく関与すると思われる。自立群と監視群の健脚立位を比較すると、他の評価と比べて著しく優位差が認められたことから、屋内歩行自立に要する動作に体幹・骨盤機能の分離性向上の必要性が示唆された。
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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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