九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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退院前後のADLにおける介助量の変化
退院後訪問指導を実施して
*野見山 清美松雪 孝広原 由希子今村 純平富松 順子古澤 郁恵
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p. 69

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抄録
退院前後のADLにおける介助量の変化
退院後訪問指導を実施して
キーワード:家屋調査、退院後訪問指導、ADL
久留米リハビリテーション病院
PT 原 由希子 野見山 清美 今村 純平
  OT 松雪 孝広 古澤 郁恵 富松 順子
【はじめに】
 当院では退院が近づくと、在宅生活を想定した家屋調査を行う。また、退院後には訪問指導を行い、生活状況を確認している。今回、退院前後で介助量が変化した2症例に関し、考察を加えて報告する。
【症例紹介・考察】
症例1:72歳、男性、脳出血後遺症(右片麻痺)。入院中、日中のADLは車椅子で自立、夜間の排泄はオムツにて全介助であった。
 退院前家屋調査では、(1)移動:車椅子駆動自立。(2)排泄:日中ポータブルトイレ使用自立(ベッドに介助バーを設置)、夜間オムツ全介助(尿意訴え時は尿器使用介助)。(3)整容:洗面台使用自立(壁を取り壊し通路拡大し、車椅子を近づける)。(4)入浴:通所サービスで施設浴をおこなう。
 退院後訪問指導時は、(1)移動:想定と同様。(2)排泄:ポータブルトイレ使用介助。(3)整容:居間で洗面器を使用して自立、セッティングは介助。(4)入浴:自宅浴全介助。
 相違点が生じた理由を以下に挙げる。排泄は、本人の希望により、ベッドの位置を変更し、ポータブルトイレを置くスペースがなくなっていた。そのため、居室の一角に縦手すりとポータブルトイレを設置するが、訓練時の環境と異なっていたため、一連の排泄動作に介助を要していたと考える。整容は、在宅では洗面台に膝入れスペースがなく、環境が異なっていた。また、入院中は動作が自立していたことで、問題点として認識できず、在宅にあった整容動作訓練が行なえていなかった。入浴は、年末退院のため施設利用ができないことを把握できていなかった。また、自宅でも入浴したいという症例の新たな希望が出てきたことも挙げられる。
症例2:80歳、女性、脳梗塞後遺症(左片麻痺)。入院中のADLは入浴以外車椅子で自立、一本杖歩行は近監視であった。
 退院前家屋調査では、(1)屋外移動:車椅子駆動介助。(2)屋内移動:一本杖歩行と手すり等での伝い歩き近監視。(3)階段昇降:居住スペースは2階を使用。片手すりで近監視(4)入浴:通所サービスでの施設浴の利用を検討したが、退院直前に本人・家族が在宅での入浴を希望された。しかし、入院中の対応が困難であったため、退院後訪問時に確認することとした(シャワーチェアと滑り止めマットを購入済みであった)。
 退院後訪問指導時は、(1)屋外移動:車椅子使用はなく、介助歩行。(2)屋内移動:一本杖歩行介助(服装はロングスカート)。(3)階段昇降:中等度の介助。(4)入浴:動作確認を行った結果、ヘルパー利用を勧めた。
 相違点が生じた理由を以下に挙げる。屋外移動は本人・家族の希望が歩行であった。屋内移動は畳上での歩行訓練は行っていたが症例の場合はフローリング上での歩行が必要であり、歩行時の安定性に違いがあったのではないかと考える。また、入院中はズボンを着用していたため服装の違いが歩行動作に影響を与えていたことが予想される。階段昇降は上記の要因とともにらせん状階段で段差、踏面が訓練で使用していたものと異なっていたことが挙げられる。さらに手すりの構造上把持しづらいという訴えが聞かれ、動作に影響していたと考える。入浴は退院後訪問指導時までに方法が確立できなかったが、これは本人・家族の希望を把握できていなかったことが考えられる。また入院中から個人浴での訓練を実施していたが、家族指導が不十分であったことと環境の違いから本人の恐怖感が出現し家族の介護負担が増加したため、家族による自宅浴が困難であった。
【おわりに】
 今回の2症例を通して、退院前後でのADLにおける介助量の違いがみられた。今後の課題としては「在宅生活を想定する上で本人・家族の希望を十分に把握すること」、「入院中からより在宅に合わせた環境設定での訓練を実施すること」、「本人・家族への動作指導を徹底すること」を挙げる。
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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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