九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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円背患者の車椅子座位姿勢における取り組み
-症例を通して-
*片岡 靖雄後藤 祥世
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p. 72

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抄録
【目的】
 車椅子生活となった患者にとって、離床時間を延長するためには、安定した座位姿勢をとることが必要である。これまでは円背患者の座位姿勢改善が困難であった。今回、円背患者に対し標準型車椅子(以下、標準型)と身体に合わせ調節可能なモジュラー型車椅子(以下、モジュラー型)を用い、比較検討した。
【症例】
81歳  女性
 診断:胆嚢摘出術後廃用症候群
     麻痺認めず
標準型座位姿勢の問題点
 殿部を後方にひくと、体幹が背もたれに押され前傾が強まる。そのため、前腕をアームレストにおき上体を支えている。
【方法】
 10×10cmの方眼紙を壁に貼り、標準型とモジュラー型での座位姿勢を前額面・矢状面からデジタルカメラにて撮影し、比較検討する。
  標準型とモジュラー型の変更点
   ・背もたれ角度 90°→105°
   ・背張り調整
   ・アームレスト高さ 18cm→21.5cm
   ・フットレスト高さ 14cm→6cm
   ・座面角度 5°→10°
【結果】
標準型とモジュラー型の姿勢の違い
 (1)水平面に対し大転子を通る垂直線より耳垂が前方→後方へ移動
 (2)前額面に対し肩峰を通る垂直線より下顎が下方→上方へ移動
 (3)頸部屈曲角度70°→45°
  膝関節屈曲角度60°→90°
  足関節底屈30°→中間位
【考察】
 円背とは、「一度生じると進行予防に努める以外に方法はないのが現状である。円背予防としては前かがみ姿勢をできるだけ続けない」とある。しかし、当院で車椅子を使用している円背患者は、前傾姿勢で無理に頭部を持ち上げていることが多くみられた。今回、高齢者に多い円背姿勢に着目し、車椅子座位姿勢の調整を試みた。
 結果(1)は背もたれの調整により、体幹の重心が後方へ移動し、前傾姿勢の改善が得られたと考える。それに伴い結果(2)(3)の様に、頭部の位置が改善し、膝・足関節も基本的座位姿勢に近づき、座位姿勢は安定したと考える。また今回モジュラー型での姿勢調整により、支持面は座面と背もたれ全体へと広がり安定し、頭部もあがった。顔が前方を向き易い状況となったことで、周囲からより多くの刺激が入り易い座位姿勢になったのではないかと考える。
 車椅子を選択する際、本人・介助者が使いやすい車椅子が望ましく、介護保険対応のモジュラー型は両者のニードを満たしていくと考えた。車椅子座位姿勢が改善することで疲労が軽減すると、在宅での離床時間の延長やQOL向上にも繋がってくると考える。今後も様々な情報を収集し、患者・家族へよりよい車椅子が選択できる様努めていきたい。
【おわりに】
 今回、症例を通して姿勢変化を検討し、車椅子の工夫・調整により、よりよい座位姿勢が得られることがわかった。今後更なる症例を検討していき、姿勢変化が生活にどの様な変化を齎すのか検討していきたいと考える。
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© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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