抄録
【はじめに】
当院では厚生省循環器病委託研究班プログラムを参考に,1992年に急性心筋梗塞に対して心臓リハビリテーションプログラムを作成し,現在まで急性心筋梗塞のリハビリテーションを施行している。早期再灌流療法の実現に加え,長期臥床によるdeconditioningや合併症の予防の観点から,発症後早期より心臓リハビリテーションを開始してきた一方で,高齢化や様々な合併症,既往により,プログラムを順調に遂行できない症例も増加している。今回,プログラムの進行に関わる要因について検討した結果,新しい知見が得られたので報告する。
【方法】
2004年4月から2005年3月までの期間に急性心筋梗塞を発症し,当院にて心臓リハビリテーションのプログラムを施行した13名を対象とし,プログラムの最終段階をクリアできた成功群(以下S群)8名とプログラムの途中で終了となった不成功群(以下U群)5名を比較検討した。対象群の比較項目は,発症時の年齢,Swan-Ganzカテーテルからの平均肺動脈楔入圧(以下PCWP),心係数(以下CI),心拍出量(以下CO),発症直後に検査した心エコーからの駆出率(以下EF),発症時のbody mass index(以下BMI)である。統計処理は発症時の年齢,PCWP,CI,CO,EFについては対応のないt検定を,BMIについてはWilcoxon検定を使用し,危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
発症時の年齢については,S群67.5±8.3歳,U群78.2±11.7歳となり,S群に比しU群は有意に高齢であった(p<0.05)。PCWP(S群17.6±9.1mmHg,U群17.6±18.3mmHg),CI(S群2.3±0.6l/min/m2,U群2.2±0.5l/min/m2),CO(S群4.1±1.0l/min,U群3.2±1.2l/min),EF(S群54.9±12.6%,U群49.8±18.6%)については有意差を認めなかったが,心機能は全ての項目でS群がU群より優れていた。発症時のBMIについては,S群26.5±5.0,U群22.1±0.7となり,S群は肥満傾向でU群に比し有意に高値であった(p<0.05)。(Mean±SD)
【まとめ】
発症年齢,心機能,BMIの観点から当院での心臓リハビリテーションプログラムの進行に関わる要因を検討した結果,発症年齢とBMIがプログラムの進行に関与した。心機能については心臓リハビリテーションプログラムの進行の要因に特に関与しなかった。これまで肥満は冠危険因子として捉えられているが,急性心筋梗塞の発症後には,肥満が心臓リハビリテーションプログラム進行の阻害因子にはなりえないことが示唆された。