九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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表在温である部分浴の温熱効果について
*大重 匡國生 満鄭 忠和
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キーワード: 部分浴, 深部体温, 冷え症
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p. 106

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抄録
【目的】
 物理療法の一つである水治療法は温水の伝導を利用した表在熱による治療であり、部分浴は水治療法のひとつで、温水で身体の一部を加温する治療である。部分浴の温熱は熱伝導作用と皮膚表面の温められた血液の循環作用を示すことになるが、皮膚表面の温められた血液の循環作用についての報告はない。そこで今回は、温水の表在熱が身体に与える影響について、皮膚表面血流の一部を遮断した場合の部分浴について検討し、部分浴の新知見を得たので報告する。
【対象】
 対象は、健常若年男性6名(平均年齢21.2±1.2歳)である。
【方法】
 部分浴の方法は、椅子座位で充分な安静後に43℃の単純泉に右前腕部の部分浴(前腕浴)を25分間行い、日を変えて右上腕を100mmHgの加圧で駆血した右前腕の部分浴(駆血前腕浴)を15分行ったのち、加圧を除去しさらに10分部分浴を継続した。なお、前腕浴と駆血前腕浴の施行はランダムにおこなった。測定項目は、皮膚血流量、舌下温、表在温、心拍数、血圧、主観的温感強度である。
【結果および考察】
 上腕部皮膚血流量について、15分の前腕浴と駆血前腕浴では、入浴前から約1.3倍に増加し、25分の前腕浴と駆血前腕浴から加圧除去後10分の皮膚血流量は、ほぼ同量の皮膚血流量となった。前腕の皮膚血流を圧迫し表在血流の一部を駆血した時に、駆血により皮膚血流減少の影響を持つと考えたが、駆血部より中枢部の皮膚血流には影響がなかった。舌下温は15分の駆血前腕浴は0.25℃、15分の前腕浴が0.38℃上昇し、駆血前腕浴より有意に前腕浴が上昇した(P<0.01)。このことから、表在温による熱伝導は、加圧により減少されたが、駆血前腕浴でも舌下温が上昇したことから、表在温熱である部分浴の温熱が、動脈血の循環作用を持ち、身体の深部体温を上昇させたと推察できる。なお、25分間の前腕浴の舌下温は入浴時間の延長によりさら上昇し37.2℃まで上昇した。15分間の前腕浴と駆血前腕浴の上腕の表在温は、前腕浴で約1.2℃上昇し有意差はなかったが、足背の表在温は、前腕浴で有意に30.2℃から32.9℃へ2.7℃上昇した(P<0.01)。これにより、表在温である部分浴の温熱が、動脈の循環作用により前腕から遠く離れた足背の加温に貢献することがわかった。足背温の有意な上昇は、前腕浴が足部の冷え症に対して治療効果を持つことになると考えられる。15分間の前腕浴と駆血前腕浴の心拍数は前腕浴と駆血前腕浴は共に約9bpm増加し、血圧は拡張期血圧がわずかに低下したが他の血圧値には著明な変化は認めなかった。15分間の前腕浴と駆血前腕浴の温感は、ちょうどよい温感であった。
【まとめ】
 表在温である部分浴の前腕浴と駆血前腕浴の比較では、前腕浴が駆血前腕浴より深部体温を上昇させるが、駆血前腕浴でも深部体温が上昇した。さらに四肢末梢部で表在温を上昇させることがわかった。
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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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