九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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脳卒中患者の作業と自己効力感の関係について
回復期リハ病棟での効果的な作業療法実践に向けた予備的調査
*森山 愛子佐藤 友美大野 沙織佐藤 浩二佐藤 周平衛藤 宏
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p. 17

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抄録

【はじめに】
患者がより活動的な生活を送るためには、患者の作業遂行能力の向上だけではなく、作業を行う自信を得ることが重要と考える。盛田らは、自己効力感(self-efficacy:以下、SE)が日常生活活動に影響を及ぼすことを明らかにしている。そこで今回、M.Gaugeによって開発された日常的作業に対するSEを測定するSE Gaugeをもとにアンケート調査を実施し、回復期リハ病棟での効果的な作業療法に向け予備的調査を行い、作業遂行能力とSEについて検討したので報告する。
【対象】
対象は平成17年7月から平成18年2月までの8ヶ月間に当院の回復期リハ病棟に入院したCVA患者で失語症がなく、SDS39点以下で鬱傾向なく、また高次脳機能障害やHDS-R21点以上で認知症を認めない者の中より、本調査への協力に同意が得られた31名とした。内訳は男性14名、女性17名、病名は脳梗塞症18名、脳出血症12名、脳動静脈奇形術後1名、麻痺側は右片麻痺12名、左片麻痺17名、両麻痺2名、平均年齢63.1±10歳、平均Bathel Indexは83.7±15.8点、発症からアンケート実施日までの平均は140.9±39.5日、入院からアンケート実施日までの平均は96.2±36.2日であった。
【方法】
調査用紙はSE Gauge28項目の中から家事など女性に偏る項目など除外した合計20項目とした。この調査用紙をもとにCVA発症前(以下、発症前)と調査時点(以下、現在)についてアンケートを行った。なお原則自己記入とし、記入困難な場合は検者が口頭にて質問し記入した。
分析はアンケート20項目について、「目的活動」17項目と「活動を行う意欲(以下、意欲)」3項目に分け、発症前と現在の得点変化を見た。また「目的活動」と「意欲」の相関関係について検討した。相関係数は発症前と現在、発症前と現在の差(以下:差)で各々求めた。なお、分析ソフトにはstat view 5.0Jを用いた。
【結果】
1) 得点の変化:SE総得点、「目的活動」、「意欲」それぞれの合計点は、発症前より現在の方が有意に低かった(各々p<0.05)。 2) 相関係数:「目的活動」と「意欲」との間には発症前、現在、差において正の相関(発症前r=0.62、現在r=0.48、差r=0.57(各々p<0.05))を認めた。
【考察】
CVA発症前よりも発症後の方がSEは低く、「目的活動」と「意欲」との間には正の相関を得た。この結果より、CVA発症により低下するSEを向上させるには、作業遂行能力の向上だけではなく、その自信を高めることが重要だと再確認できた。そしてSEを向上させることで、少しでも活動的な生活を送る姿勢を引き出すことが可能となると考える。
今後、今回の結果を踏まえて、回復期リハ病棟での効果的な作業療法実践に向け、さらに研究を進めていきたい。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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