九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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立ち上がりの動作分析
表面筋電図解析を用いて
*神崎 裕美大平 高正高橋 朋子山野 薫伊藤 恵
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p. 49

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抄録

【目的】
立ち上がり動作(sit-to-stand:STS)は、日常生活の中で頻繁に行われる動作の1つである。臨床では、患者の身体機能に即したSTSの指導が要求されるため、種々のSTSパターンの詳細な解析が必要である。今回、3パターンのSTSについて、筋の活動順序や活動量を表面筋電図によって解析したので報告する。
【方法】
対象は、健常女性(年齢:26歳、身長:161cm)。表面筋電図測定装置(NORAXON社製TEREMYO2400)を用いた。サンプリング周波数は1,500Hzとし、0.05秒間隔で平均振幅を算出した。対象筋は左側の多裂筋(Mf)、脊柱起立筋(SE)、腹直筋(RA)、大殿筋(GM)、内側広筋(VM)、外側広筋(VL)、半腱様筋(St)とした。計測動作は、40 cm台からの自由速度でのSTS(自由型)、手すりを用いてのSTS(手すり型)、両手で坐面を押してのSTS(プッシュアップ型)とした。同時にビデオ撮影を行い、静止坐位から殿部離坐までを第一相、殿部離坐から立位までを第二相として解析した。
【結果】
活動順序は、自由型でSE、Mf、VM・VL、St、GM、手すり型で、VM・VL、SE、Mf、St、GM、RA、プッシュアップ型でRA、VM・VL、St、GM、Mf、SEであった。自由型は、殿部離坐時にVM、VLの平均振幅波形の傾きが大きかった。自由型のピークと比較した手すり型における各筋の平均振幅値の割合は、第一相のVMで47%、VLで34%、SEで36%、第二相のSEで19%、RAで392%であった。同様に、プッシュアップ型では第一相のRAで815%、第二相のVMで27%、VLで46%、SEで197%であった。
【考察】
自由型の特徴は、殿部離坐時の体幹屈曲角度が3パターンの中でも最大であり、VM、VLの平均振幅波形の傾きも大きかった。これらより、自由型は殿部離坐時の体幹屈曲と強い膝伸展筋活動によりSTSを完成させると考えた。 手すり型は第一相のVM、VL、SEの活動が抑制され、SEの活動も遅れた。これは重心の前方移動が体幹屈曲でなく、上肢での誘導により行われたためである。第二相では全体にわたってSEの活動が抑制された。これは、手すりを用いることで体幹の制御を行ったためである。また、第二相初期のみRAの活動が大きくなったのは重心が足部後方へ位置しているため、体幹の屈曲モーメントが大きくなったためである。これらより、手すり型は、全体的には体幹筋抑制型と考えることができる。
プッシュアップ型は第一相では、両手で坐面を押す動作が体幹屈曲角度と重心の前方移動を最小にするため、RAのみの活動となっている。第二相では、両手が坐面から離れた時の体幹屈曲角度が最大となり、SEの活動も高まった。また、SEの活動は立位まで続いた。これは上肢から体幹へと体重負荷の移動が起こり、そこから体幹を伸展していくためである。これらより、プッシュアップ型は、全体的には体幹優位型と考えることができる。
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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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