九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
会議情報

体幹・下肢側方構成体が骨盤傾斜に及ぼす影響
*宮本 良美榎畑 純二幸良 光栄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 53

詳細
抄録


【はじめに】
立位アライメント評価において、前額面でのマルアライメントを呈する症例は数多く見られる.そこで今回我々は、骨盤傾斜に影響を及ぼす因子として、身体側面の筋群が大きく関与しているのではないかとの仮説をたて、体幹・下肢側方構成体との関連性について検討した.
【対象】
体幹・下肢に疾患の無い健常者20名(男性:10名、女性:10名)、平均年齢25.5±3.52歳とする.
【方法】
1.端座位での体幹側屈
両殿部を接地した状態での体幹側屈を左右行い、両肩峰の中点と両後上腸骨棘(以下、PSIS)の中点を結ぶ線と両PSIS を結ぶ線からの垂直線の成す角度(以下、T角)を計測.
2.側臥位での下肢内転
側臥位にて上方下肢は股関節膝関節伸展位での自然下垂、骨盤の固定は行わない側臥位(両下肢揃えた屈曲位)について、両PSISを結ぶ線が床からの垂直線となす角度をそれぞれの肢位で計測し、両肢位での角度の合計を骨盤傾斜角(以下、S角)とする.
Ober testを用いて評価した大腿筋膜張筋(以下、TFL)のtightnessとの関連性について比較、検討を行なった.なお、統計学的処理に関してはT検定およびピアソンの相関係数を用い、危険率5%未満を有意水準とした.
【結果】
1)男女20例における、TFL非tight側での骨盤傾斜(側臥位での下肢内転)が有意に大きい(P<0,05).
2)女性10例における、TFL非tight側への体幹側屈角が有意に大きい(P<0,05).
3)男性10例における、左体幹側屈角と左下肢内転角間に強い負の相関を認めた(相関係数-0,74.P<0,05).
【考察・まとめ】
側臥位での下肢内転と端座位での体幹側屈との比較を行ない下肢・体幹側方構成体が骨盤傾斜に及ぼす影響について検証した.
今回の結果ではTFLNt側のS角が有意に大きくなる傾向にあった.通常、腰椎側屈は柔軟性に乏しく、平均で20°、L5/S1ではほぼ0°とされるが、側臥位での下肢内転時の脊椎カーブの対応には個人差が大きく、側屈・回旋の体幹代償を考慮しその関連性について更に検討の余地があると考える.
また、結果2)、3)より、男性では同側のTFL・体側筋群にtightnessが生じ(同側型)、女性では逆に対側のそれらにtightnessが生じる(対側型)傾向がみられた.つまり、男性はデュシャンヌ肢位をとりやすく、上半身での代償が多いことが示唆された.一方、女性ではトレンデレンブルグ肢位をとりやすく、骨盤を側方にswayした下半身での代償が多いことが示唆された.
今回の調査結果より、前額面における骨盤傾斜に影響を与える因子として下肢・体幹側方構成体の関与が示唆された.そのため、これらの関連性を考慮し評価を行う必要性があると考える.

著者関連情報
© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top