九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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四肢廃用定量評価の試み
インピーダンスを用いて
*今村 純平村山 美紀富松 順子松雪 孝広柴田 元
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p. 54

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抄録


【はじめに】
インピーダンス(以下、Z)とは、身体が持つ電気抵抗のことで、水分含有の高い筋肉が多いと値が下がる。これを利用したものが体脂肪測定である。今回、片麻痺者のZ値(単位:Ω)を測定することで、四肢の廃用を定量的に評価できるのではないかと考えた。麻痺が重度なほどZ値が大きいという仮説をたて、本研究を行った。
【対象】
40歳以上の健常者105名(男性23名、女性72名。平均年齢62.9±11.9歳。以下、健常群)、当院の入院または外来患者のうち脳血管障害の既往のある者59名(男性36名、女性23名。平均年齢65.7±8.6歳。以下、CVA群)とした。CVA群は下肢Br.StageによりII群(8名)、III群(25名)、IV群(15名)、V群(11名)とした。
【方法】
測定は、激しい運動を行っていない状態で、常温の室内においてベッド上背臥位で行った。電極は同側上下肢(上肢:茎状突起間、下肢:内外果間)に置いた。健常群は右側を利き側、左側を非利き側とした。
【結果】
Z値は、健常群:利き側491.6±73.4、非利き側503.6±77.1、II群:麻痺側640.1±90.4、非麻痺側677.9±101.7、III群:麻痺側507.9±65.1、非麻痺側606.4±85.4、IV群:麻痺側492.4±84.7、非麻痺側539.1±113.7、V群:麻痺側438.7±68.7、非麻痺側482.8±68.7であった。健常群、IIからV群のすべてにおいて、Z値は有意な左右差を認めた(p<0.01)。また、非麻痺側Z値は、II群とIII、IV及びV群との間に有意差を認め(p<0.01)、麻痺側Z値は、II群とIV及びV群との間に、III群とV群との間に有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】
Z値の健常群での左右差は、日常生活場面における使用頻度の違いが影響したものと考えられるが、CVA各群での左右差はより顕著であり、麻痺により使用頻度が極端に低下し、廃用が進行したことが原因と推察される。非麻痺側Z値の有意差は、一般的に下肢の支持性が期待できるstageIII以上に比べ、stageIIでは起立訓練や歩行訓練などの訓練量および日常生活での起居・移乗をはじめとする活動量が少ないことに起因するのではないかと推察される。麻痺側Z値の有意差は、前述の訓練量、活動量とともに、麻痺側の分離に起因する実用的な使用頻度に影響を受けたものと推察される。
今回の結果は、概ね仮説と一致し、Z値による四肢廃用の定量評価の可能性が示唆された。しかし、今回の研究では発症からの期間や測定時のADL能力は考慮していない。特に発症からの期間については、麻痺の程度が同じであっても、廃用の進行度に影響を与えると思われる。これらの条件の統一は今後の課題といえる。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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