九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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整形外科でRA患者が求めるもの
一症例を通して
*戸沢 美希石原 敬子木浦 扇佐々木 理恵根路銘 祥子松原 淳一
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キーワード: 関節リウマチ, 作業療法, QOL
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p. 7

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抄録

【はじめに】
 今回長期にわたり関節症状を保存的に加療し、外科的手術を施行した関節リウマチ(以下RA)患者を担当した。術後経過を追う中で、機能面及び外観が著明に改善したことにより、活動範囲の拡大、QOLの向上に繋がったので報告する。
【症例紹介】
 症例は50代女性。20歳頃にRAと診断され、他院にて内服加療をしていた。当院初診時には股関節以外の大関節に疼痛を認め、特に膝関節痛による歩行困難の為、ほとんど家庭内で生活していたが、可能な限り主婦業も行っていた。観血的治療としてH17.3月、右人工膝関節置換術(以下TKA)、同年5月、左TKA、同年7月両前足部形成術を施行した。入院時期、手指MPJ人工関節置換術を施行したRA患者が通院しており、交流の中でその機能的改善は元より、著しい外観上の変化に関心を示し、手指の手術に踏み切った。
【経過】
 右手指MPJは全指掌側脱臼し、完全な尺側偏位を伴う屈曲拘縮を呈していた。左手指も尺側に偏位しており、母指は長母指伸筋腱の断裂を認めた。また両肘関節、肩関節にも可動域制限、疼痛を認め、特に右肘関節に著明であった。術前上肢障害評価表 (以下DASH)は84.5点であり、重度変形を呈したながらも、日常生活を送っていた。H17.8右示指から小指はMPJ人工関節置換術(AVANTA)、母指関節固定術を施行した。作業療法(以下OT)では術後Static 及びDynamic splintを作製し、再偏位に注意した。また、可動域訓練と共に、段階的にsplintを作製し機能の改善を図った。またOT開始当初は手指の使用制限に対し、強い不満が挙げられた。手術に対する満足度は低く「しなければ良かった」等の声が聞かれた。
【結果】
 術後、脱臼及び尺側偏位が改善されたことで、外観の著明な変化が確認できた。また伸展制限が改善したことにより、手指の可動範囲が拡大され、コップの把持が可能となり、また手洗い動作を行いやすくなった。その為満足度も上がり、手術に対して余裕が見られるようになった。術後3ヶ月でのDASHは69.3点と改善した。それに伴い日常生活の活動範囲が著明に拡大された。特に手指変形に対し、機能的改善と共に外観の改善を認め、人前に出る場面が増え交際範囲も拡大することで、QOLの向上にも繋がった。
【考察】
 症例はRA発症後、長期にわたり関節症状を保存的に加療していた。しかし今回、積極的な観血的治療を施行したことで、良好な結果を得ることができた。
 本症例の場合、観血的治療により手指機能は改善された。しかし、それを充分に発揮するための上肢機能は、関節破壊による疼痛、可動域制限によって阻害されている。その為、今後も継続した治療が必要となる。その為にはOTとして、患者の関節症状は元より機能面、また社会的背景等の具体的な評価を実施し、それらに付随したアプローチが重要であると考える。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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