九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 028
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肺リンパ脈管筋腫症患者に対する呼吸リハビリテーションの意義は?
*竹村 仁増田 順城高橋 祐子竹中 隆一
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抄録
【はじめに】
 肺リンパ脈管筋腫症(肺LAM:pulmonary lymphangioleiomyomatosis)は若い女性に発症し、予後不良で呼吸不全が進行すれば肺移植の適応となる疾患である。今回、肺LAM患者に呼吸リハビリテーションを行った結果、肺機能・運動耐容能の改善は認めなったが、患者のQOL向上と運動耐容能が維持できたので報告する。
【症例紹介】
 34歳、女性。診断名#1 肺LAM、#2 慢性呼吸不全、#3 後腹膜リンパ腫、#4 腎血管筋脂肪腫
 現病歴:2004年3月、犬の散歩中に強い息切れを自覚、近医受診し胸部レントゲンで気胸を指摘されA病院に入院となる。経過と胸部CTにて#1と診断される。気胸が改善され3月末に退院。5月よりA病院の外来にてホルモン療法施行される。その後、自宅で過ごしていたが、呼吸リハ目的にて2006年4月に当院入院となる。既往歴・家族歴:特記事項なし、喫煙歴:なし、粉塵暴露歴:なし
【初期評価(2006年4月)】
 身長 159cm、体重 50kg、BP 123/93mmHg、HR 74回/分・整、SpO2 93%
 筋力:握力 19kg/21kg、大腿四頭筋4、ROM:FFD -18cm、胸郭拡張差5cm(剣状突起部)、呼吸機能:MRCグレード4、VC 3.05L(104.5%)、TV 0.62L、FEV1.0 1.15L、%FEV1.0 41.2、FRC 2.63L(116.4%)、RV/TLC 36.9%(151%)、DLco 6.4ml/min/mmhg
 6MD:280m (room air 休憩2回)、息切れ感修正Borg6、SpO2 85、HR 125
 CPX:PeakVO2 10.1ml/kg/min
 千住のADL:87点(移動・階段にて減点)、基本的ADLは自立しているが、歩行時の息切れ感が著明
【リハビリ内容】
 呼吸体操やストレッチポールによる柔軟性改善、上下肢筋力強化、修正Borg4レベルでの有酸素運動(エルゴメータ、トレッドミル)を施行した。また全8回の呼吸リハ教室に参加した。
【退院時評価(11日間の入院でリハは9回実施)】
 FFD 14cmに改善。6MD:245m (room air 休憩2回)Borg4、SpO2 89、HR 120
【考察】
 呼吸機能検査で閉塞性換気障害、GOLDの分類でStage III(重症)であった。短期入院による呼吸リハでは肺機能や運動耐容能に有意な改善は認めていない。しかし、退院時には「今回の入院で医療スタッフをはじめ、同病室の方、他の呼吸器疾患の方と触れあえた事で、自分が引きこもり、活動的でないことが良くわかった。私はまだまだいろいろなことが出来るし、積極的に生きていかねばいけないと感じた」と述べられており、うつや生活満足度などのポイントも改善されている。さらに、6ヶ月後のCPXにてPeakVO2 10.8ml/kg/minと運動耐容能は維持されている。呼吸リハにより必ずしも呼吸機能や運動耐容能を改善できなくても、ピアカウンセリングが行われ、教室や運動の体験にて自分の体力の把握、生きる意欲の向上などが図れている。このことは、呼吸リハの大切な一面ではないかと考える。よってLAM患者に対する呼吸リハは、より発症早期において有益であると考える。
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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