九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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  • 長田 悠路
    セッションID: 001
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     近年、大腰筋・腹横筋をはじめとした体幹深層筋による姿勢制御が重要視されている。これら筋群の選択的訓練により重心動揺が改善したという文献は散見されるが、各効果を比較検討したものは少ない。今回これら訓練の即時効果を重心動揺計にて比較したので報告する。
    【方法】
     対象は健常成人21(男4、女17)名、平均年齢23(21~35)歳とし、以下3群を無作為な順で行った。課題は、腹横筋訓練(以下T群):四つ這位で腹部引き込み運動(訓練10秒・休憩2秒×5)、大腰筋訓練(以下P群):坐位で踵挙上運動(訓練10秒・休憩2秒×5)、コントロール群(以下C群):坐位保持(60秒)である。測定は重振動揺計G⁻5500(アニマ社製)を用い、開脚立位からメトロノーム(3秒間隔)に合わせて右つま先25cm前方の印までのステッフ゜動作を5回反復した。なお測定期間は1ステッフ゜目後の足圧中心最大右方偏移から4ステッフ゜目後の足圧中心最大右方偏移の中間3ステッフ゜とした。また、計測は訓練前(以下Pre)、訓練直後(以下post1)、訓練10分後(以下post2)に行った。統計学的処理はPreの外周面積・総面積軌跡長・左右方向軌跡長・前後方向軌跡長を1としたpost1・2の変化率について一元配置分散分析(Fisher's PLSD法)を用い、有意水準は5%未満として検定した。
    【結果】
     外周面積はpost1:T・C群間に有意差(P<0.05)、post1:P・C群間、post2:P・C群間に有意差(P<0.01)、左右方向単位軌跡長はpost1:T・C群間、post2:T・C群間、P・C群間に有意差(P<0.01)、総面積軌跡長はpost1:T・C群間、post2:T・C群間、P・C群間に有意差(P<0.05)を認めた。
    【考察】
     今回、T・P群間に有意差は見られなかった。これは各筋単独に促通することが困難であったためと考える。しかし、C群との比較からT群は左右方向軌跡長・総面積軌跡長に、P群は外周面積に改善が見られる傾向があった。腹横筋は脊柱に付着する深層筋群の働きを促通するとされており、それが可動性を伴う安定性をもたらした結果、外周面積の収束は一定に留まり、左右方向・全体の軌跡長が減少したと考える。一方、大腰筋は腰椎~大腿骨頭を圧迫固定する作用がある。これが過度な安定性を与えた結果、外周面積は減少するも全体的な動揺を残したと考える。また、T群はpost1・2共に改善が見られたが、P群ではpost2に訓練効果が現れた。これは大腰筋賦活で既存の姿勢制御戦略が変化したために、姿勢制御パターンの統合に時間を要したと考える。今回の結果から、腹横筋・大腰筋訓練はステッフ゜動作時の重心動揺を改善し、腹横筋訓練は速効性の動揺軽減効果、大腰筋訓練は安定効果といった特徴を持つことが解った。
  • 堀江 淳, 藤井 宏匡, 石原 英樹, 堀川 悦夫
    セッションID: 002
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
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    【目的】
     呼吸リハビリテーション教育入院プログラムを実施し、1年6ヶ月間、外来フォローが可能であった呼吸不全患者の長期継続効果を検討する。
    【対象】
     対象は呼吸リハビリテーション教育入院を実施し、退院後月1回の外来フォローが可能で、かつ1年6ヵ月後に評価が継続できていた呼吸不全患者47(男性37、女性10)例とした。疾患の内訳はCOPD29例、肺結核後遺症6例、COPD+肺結核後遺症7例、気管支拡張症2例、間質性肺炎2例、気管支喘息1例であった。対象の呼吸機能は%FVC73.1±24.1%、FEV1.0%41.1±17.9%、血液ガスPaCO2 47.4±11.3torr、PaO2 72.8±10.9torr(以上、mean±SD)で、H-J呼吸困難分類はII度26例、III度19例、IV度2例であった。
    【方法】
     方法は教育入院終了時、6ヵ月後、1年後、1年6ヵ月後のデータを採用し、評価項目は呼吸筋力、6MWD、ADLテスト、COPD症例に関してはSGRQについて検討した。呼吸機能については終了時と1年後で比較した。呼吸リハビリテーションプログラムはリラクゼーション、呼吸訓練、呼吸筋訓練、胸郭可動域訓練、全身持久力訓練、ADL訓練、排痰訓練(適応症例のみ)の指導とし、平均教育期間は13.3±6.1(SD)日であった。また看護師、薬剤師、栄養士によるプログラムも合わせて実施した。
    【結果】
     呼吸機能は終了時と1年後において%FVCが74.1±23.3%から65.5±19.3%と有意に減少していた。FEV1.0%は41.3±18.6%から43.8±13.3%と有意差は認められなかった。終了時、6ヵ月後、1年後、1年6ヵ月後の呼吸筋力(単位:cmH2O)としてのMIPは59.8±25.4、55.4±25.5、56.3±22.1、57.0±23.2で、MEPは77.5±26.9、81.4±37.5、81.6±30.7、76.4±30.9であった。6MWD(単位:m)は379.3±96.8、403.7±79.8、398.6±86.6、386.4±107.8であった。ADLテスト(合計、単位:点)は76.4±16.3、81.0±15.0、78.6±17.2、77.1±20.1であった。SGRQ(合計、単位:点)は48.8±15.1、45.9±15.2、48.2±17.7、45.4±18.1であった(以上、mean±SD)。%FVCが減少傾向にあるにもかかわらず、各項目において1年6ヶ月間は有意な変化は認めず現状維持できていた。
    【考察】
     今回、多くの先行報告と同様、外来フォローにて改善は認めず現状維持にとどまっていた。しかし、今回の検討はあくまでも継続フォローが可能であった症例であり、呼吸リハビリテーション教育入院を受けた全ての呼吸不全症例ではなく、非継続症例の詳細な検討も必要であろう。
  • 中島 修作, 山下 導人, 岸本 浩(MD)
    セッションID: 003
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     可動関節における関節覚の定量的検査目的の為、膝関節を対象に変形性膝関節症(以下OA)群、人工膝関節全置換術(以下TKA)群、及び対照群として健常群(両膝関節に障害の既往のない者) を設け、各々における関節位置覚を比較し検討した。
    【対象と方法】
     OA群およびTKA群10例11膝(男性3例、女性8例、手術時平均年齢75.2歳、術後経過期間は平均2.2ヶ月。術前をOA群、術後をTKA群とした。)、健常群13例26膝(男性10例、女性3例、平均年齢26.5歳)を対象とした。膝関節位置覚の評価は木山らの行った方法に準じた。すなわち設定角を設け、腹臥位にて一肢を他動的に設定角まで屈曲させ、対側肢に視覚、接触皮膚覚等を利用させないで模倣させ、その角度を計測した。設定角は一肢に対して屈曲30,45,60,90度の4ヵ所とし、設定角と模倣角の誤差を統計学的に比較した。
    【結果】
     屈曲30度から順に誤差の平均値を記す。OA群8.2±7.2、7.7±7.5、5.9±4.9、7.7±5.6、TKA群5.5±3.5、6.4±5.1、8.6±4.5、11.8±12.1、健常群5.4±4.9、6.0±5.7、7.7±5.1、5.4±4.9(単位:度)。10度以上の誤差を示した者の割合は屈曲30度から順にOA群45.5、36.4、36.4、36.4、TKA群27.3、27.3、54.5、54.5、健常群34.6、38.5、46.2、26.9(単位:%)。OA群とTKA 群に有意差なし。健常群とOA群に有意差なし。健常群とTKA 群に有意差なし。各群における設定角度間の有意差なし。
    【考察】
     関節覚受容器障害レベルから関節位置覚障害の判定を試みた。
     健常者の膝関節位置覚において10度以上の誤差を示す健常者は少なくないと木山等は報告している。また、10度以上の誤差があっても異常とは言い難いと山田等は報告しており、同様の結果が得られた。
    拮抗筋の筋長の違いが関節固有感覚に影響すると言われている。健常群の設定角度30度、90度の誤差平均は45度、60度よりも少なかった。この傾向は、拮抗筋及び皮膚の固有受容器の感受性及び閾値の違いによると推察されるが証明には至らなかった。
     これに対し、OA群並びにTKA 群での設定角度の違いによる影響の背景は不明であり、今後の課題としたい。
     TKAでは固有受容器の点在する支持組織、軟骨、骨膜等の外科的侵襲、また膝OAでは関節軟骨の磨耗、関節包の肥厚または線維化、加齢による関節構成体並びに筋の変性などにより何らかの固有感覚障害を及ぼすであろうが今回の簡易な検査では証明されなかった。
     現在、臨床で行われる検査は判断基準が曖昧であり、異常の有無の客観性に乏しい。この障害の程度を数量的にかつ簡便な方法で評価できることは価値あるものと思われる。
  • 釜崎 敏彦, 坂本 健次, 水上 諭, 平良 雄司, 金ヶ江 光生, 斧田 俊彦, 松村 人志, 石垣 尚男
    セッションID: 004
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     転倒原因については、つまづいた、滑った、ふらついたが大半を占めており、その他に階段を踏み外した、障害物との衝突などが挙げられる。これまでに、筋力・バランス能力などと転倒の関連についての報告は多々あるが、視覚機能と転倒に関する研究は散見される程度である。しかし、視覚機能は聴力、筋力、バランス能力、歩行能力と同様に加齢に伴い低下すると報告されており、転倒に関連する一要因と考えられる。そこで身体活動の起点となる視覚機能に着目し、日常生活で外部環境の立体的把握を集約する静止視力、有効視野の視覚機能と転倒との関連を前期高齢者と後期高齢者に分類し検討することである。
    【対象及び方法】
     自立歩行可能な精神・知的障害を有しない外来通院患者で、研究調査の承諾が得られた男女76名(男性27名、女性49名、平均年齢76.8±6.5歳)を対象とした。調査項目は、質問紙にて性別、年齢、過去1年間における転倒経験の有無、既往歴、現病歴を質問した。視覚機能としては、静止視力、有効視野を測定した。静止視力はランドルト環を分単位で表した視角の逆数から算出したものを用いた。また有効視野は、Ishigakiらが考案した視覚機能測定ソフトを使用し、有効視野は認識率で算出した。過去1年間の転倒経験有無の結果より得られた転倒群27名を前期高齢者群(65歳以上75歳未満)と後期高齢者群(75歳以上)の2群に分類し比較検討した。また2群間比較についてはMann-WhitneyのU検定を用いた。統計解析には、SPSS ver11.5を用い、5%未満を有意水準とした。
    【結果】
    1)静止視力(日常状態での利き目の静止視力)を前期高齢者群と後期高齢者群の2群で比較した結果、両群間に有意差は認められなかった。
    2)有効視野を前期高齢者群と後期高齢者群の2群で比較した結果、転倒経験者において後期高齢者群は、有意に有効視野が狭かった(p<0.05)。
    【考察】
     本研究結果から、静止視力においては、前期高齢者群と後期高齢者群間で有意な差は認められなかった。視覚機能は、身体機能と同様に加齢に伴って低下するが、視力については眼鏡による矯正が可能であり、一般的に日常生活では必要に応じ視力を矯正していることから、前期と後期の高齢者群では差が認められなかったと考えられる。一方、有効視野については、後期高齢者群が有意に狭かった。石垣らによると、有効視野は20歳前後をピークに次第に狭くなり、高齢者では大学生時期(20歳前後)の10%程度であり、周辺での認識が極端に狭小化していると報告している。また視野については、視力と異なり矯正が不可能である。従って、65歳以上の高齢者では、前期高齢者より後期高齢者の有効視野が狭く、転倒の高リスクになると考えられる。
  • ~挙上動作時の圧中心軌跡に着目して~
    徳田 一貫, 阿南 雅也, 佐々木 誠人, 川嶌 眞人
    セッションID: 005
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     一般に、肩インピンジメント症候群は肩甲上腕関節のリズム破綻が問題とされているが、肩関節は胸郭上に浮遊し、体幹-下肢と機能的連結があり全身の影響を考慮してアプローチを行う必要があると考える。今回、肩関節機能のみでなく股関節-体幹運動方略改善を目的に、立位姿勢・肩挙上動作を臨床指標としアプローチした結果、下肢荷重・圧中心(以下COP)軌跡に変化が見られ症状改善が得られたので以下に報告する。
    【症例紹介】
     症例は30代の男性。身長176cm、体重80kg、BMI 26。現病歴は平成18年11月初め頃、ビニールハウスから転落し右肩受傷。翌朝右肩痛出現したが自宅で様子をみていた。その後右肩痛持続した為、1週間程外来通院したが症状軽快せず、手術目的にて平成19年2月1入院。翌日、右肩関節鏡視下肩峰下除圧術施行となる。既往歴は2年前に左肩腱板損傷あり。職業は工場勤務で物を持ち上げる作業が多い。
    【術前評価】
     疼痛は安静時・夜間時(-)、運動時(+:肩関節挙上時・作業時に疼痛あり)。ROMは右肩関節屈曲120°、外旋60°、内旋80°。日整会肩関節疾患治療成績判定基準(以下、JOA-Score)は61点。立位姿勢は上半身重心左側変位、肩甲骨挙上・外転位、上部体幹左側屈・左回旋し骨盤後傾・右回旋位の姿勢。挙上動作は肩甲骨挙上位で股関節・下部体幹機能低下により、骨盤・上部体幹の右側移動がみられず、肩甲‐上腕リズムが崩れた状態で行う。下肢荷重検査は右46.3%、左53.7%。COP軌跡は全体的に左側変位している。
    【アプローチに至る臨床推論】
     本症例は左肩腱板損傷による右上肢の補償と右肩関節外傷での疼痛回避の為、立位姿勢異常を呈したまま職場での代償動作の繰り返しにより肩インピンジメント症候群を招いたと推察した。挙上動作は股関節-体幹機能低下により重心右側移動困難となり肩甲骨挙上の代償動作が生じ、肩関節moment armの増大により肩甲上腕リズムの破綻に至ったと考えた。よって、臨床指標を立位姿勢・肩挙上動作とした。outcomeは、骨盤・上部体幹右側移動による下肢荷重・COP軌跡の右側移動獲得とし、挙上動作時の動作改善・疼痛軽減が図れると考えた。
    【理学療法アプローチ】
     1.肩関節機能の改善、2.胸椎制御による上半身重心移動の獲得、3.骨盤側方移動獲得。
    【結果】
     疼痛は肩関節挙上時の疼痛消失。ROMは右肩関節屈曲180°、外旋60°、内旋80°。肩JOA-Scoreは90点。立位姿勢は上半身重心の正中化がみられる。挙上動作は骨盤・上部体幹右側移動がみられ、肩甲骨挙上が軽減し疼痛なく可能。下肢荷重検査は右52.9%、左47.1%。COP軌跡は全体的に右側変位している。
    【まとめ】
     肩インピンジメント症候群による疼痛の原因を追求し、股関節-体幹運動方略改善を含めた適切な肩甲上腕リズム再獲得のためのアプローチを行う必要がある。
  • ~頚髄損傷患者のADL自立へ向けて~
    佐々木 裕子, 山鹿 眞紀夫, 岩永 友里, 北原 浩生, 吉川 桂代
    セッションID: 006
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、頚髄損傷に橈骨遠位端骨折を合併し手関節背屈角度に制限をきたした症例に、Ultraflex 3 Components(以下Ultraflex 3)を用いた。その結果、背屈角度改善が得られ、移乗動作自立・ADL拡大に至ったので治療・訓練経過を報告する。
    【症例紹介】
     40代、男性、診断名は頚髄損傷C7(完全麻痺)、左橈骨遠位端骨折、左鎖骨骨折、左肩甲骨骨折、左棘上筋不全断裂である。現病歴は平成17年9月上旬バイク通勤中に交差点で右折車と接触事故、同年9月下旬頸椎前方固定術、左手関節骨接合術施行、 同年10月下旬よりリハ目的にて当院入院、同日OT開始となる。
    【初期評価】
     ROMはPassiveにて左手関節掌背屈共に10°、左肩関節屈曲・外転110°、左肘関節伸展0°の制限がみられた。レベル判定は右上肢C8B3、左上肢上腕三頭筋3+よりC7A以上と予測された。ADLはBarthel Index10/100(食事:スプーン監視、整容:一部介助、その他全介助)、その他自律神経機能障害(起立性低血圧)、排尿・排便障害がみられた。
    【Ultraflex 3 導入の経緯】
     OT訓練開始から1ヶ月間、拘縮や疼痛が影響している左手関節背屈制限に対し重点的にROM訓練を行った。また、合わせてcock-up splintを作成し併用した。しかし、cock-up splintは一定角度のみでの固定であり最大域での固定や持続伸張が不可能である為に、顕著なROM改善が期待できず訓練において難渋していた。
    【方法】
     そこで、任意の角度で無段階調整にて固定でき、持続的矯正可能な「Ultraflex 3 Components」を用いた。症例は右手にて自己装着出来、背屈角度は目盛りを参考に疼痛の少ない範囲で自己調整可能であった為、自主訓練の一環として取り入れた。使用時間1回30分以上、使用頻度は1日2~3回、夜間帯は装着を行わなかった。
    【結果】
     Ultraflex 3 導入後約40日経過で背屈角度10°から60°に、またOT訓練開始から4ヵ月後Barthel Indexは65点へ改善し側方移乗が自立レベルとなった。その他、車椅子駆動時に手掌面の接地面が増え、スピードや操作性が向上し、さらに除圧も可能となり、マット上動作・更衣動作の時間短縮へ繋がった。最終的には埋め込み式トイレでの排泄動作・洗い場での洗体動作・自動車への移乗動作獲得まで至った。
    【考察】
     今回Ultraflex 3 を用い、本症例において1.自己装着出来た2.目盛りで背屈角度が分かり自己調整可能3.疼痛の少ない範囲での持続伸張が可能であったことから早期に手関節背屈角度を改善することができた。これらのことにより、移乗動作自立・その他ADL動作の拡大へと繋げることが出来たと考えられる。
     頸髄損傷(下位)の橈骨遠位端骨折による手関節背屈制限に対して、Ultraflex 3 を用いることは早期にROMを改善し移乗動作自立、ADL拡大へ繋げるには有効ではないかと考えられた。   
  • 窪 昌和, 山下  輝美, 福田 隆一, 藤園 健一
    セッションID: 007
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     手関節外傷後握力低下を呈する症例は多く存在し、伸筋群の弱化が原因であるという報告が多い。我々は、外来筋群のバランス及び手根骨アライメント変化の影響があるのではないかと考えた。そこで、手関節可動域とレントゲン所見から握力に及ぼす影響を検討したのでここに報告する。
    【対象】
     2006年9月から2007年3月までに当院にて加療を行った橈骨遠位端骨折14例、キーンベック病1例、男性6名、女性9名を対象とした。受傷側は右10手、左5手の計30手である。平均年齢は49±21歳、平均観察期間190±90日であった。なお、全症例利き手は右手であった。
    【方法】
     左右において握力と手関節の掌背屈可動域を測定した。握力測定にはデジタル握力計(酒井医療)を用いた。測定肢位は立位、肘伸展位、手関節中間位とし、Grip位置は「被測定者が握りやすい方法」に設定した。手関節掌背屈可動域測定では自動他動で手指伸展位と手指屈曲位でそれぞれ測定した。レントゲン所見はradialtilt、radialinclination、ulnervariance、scapholunateangle角(以下SL角)、radiolunateangle角(以下RL角)を受傷側のみ計測した。握力及び掌背屈可動域は健側比を算出し、それぞれ、手関節可動域健側比と握力健側比、握力健側比と受傷側レントゲン所見との相関関係をスピアマンの順位相関係数を用い危険率5%未満を有意水準とした。
    【結果】
     握力健側比と手指伸展位での他動背屈健側比に正の相関が見られ(rs=0.57、p<0.05)、握力健側比と手指伸展位での他動掌屈健側比に強い正の相関が認められた(rs=0.68、p<0.01)。 レントゲン所見では握力健側比とSL角に強い正の相関が認められた(rs=0.74、p<0.01)。また、握力健側比とRL角にも正の相関関係が認められた(rs=0.55、p<0.05)。
    【考察】
     掌背屈制限及び手根骨アライメントの逸脱は筋長、モーメントアームの変化を招く事が推測される。手関節外傷後の把握形態は、伸筋群の弱化から把握時に手関節が掌屈する症例が多く存在する。その原因として掌屈制限による手根伸筋群の柔軟性の低下が原因である事が示唆された。また、手根伸筋群の柔軟性の低下は、手関節外傷後、手指伸展時の掌屈角が減少している事からも推測出来る。しかし、今回の結果より、静止長の減少から伸展トルクは低下するが、SL角・RL角の増大(DISI様変形)が代償的に背屈位固定を行い、屈筋群の最大張力を発揮している症例が存在していることが考えられた。
  • ~重錘を利用した持続伸張法~
    大川 尊規, 吉原 愛, 穐本 聡子, 竹下 満
    セッションID: 008
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     肘関節内骨折はどの部位においても治療に難渋する骨折である。また、手術においては解剖学的整復と強固な内固定を行い、術後早期に運動療法を開始することが重要である。今回、我々は当院で治療した肘関節内骨折の術後成績と問題点について検討したので報告する。
    【対象および手術方法】
     症例は2005年以降に手術を施行した肘関節内骨折8症例である。性別は男性5例、女性3例。手術時年齢は15~75歳(平均50.0±21.1歳)。骨折は上腕骨通顆骨折4例、橈骨頭・頚部骨折3例、尺骨肘頭骨折1例で全例関節内粉砕骨折である。全例、観血的整復による骨接合を施行。ほとんどが顆部固定のscrewにK-wireおよびtension band wiring法を加えた方法で必要に応じてAcutrak screwや吸収ピンを追加した。術後調査期間は2~22ヶ月(平均9±6.7ヶ月)で、術後経過での問題点を検討し、術後成績は自動関節可動域(以下AROM)と日整会肘機能評価法-外傷-(以下JOA score)で評価した。
    【術後セラピィ】
     術後外固定は肘屈曲60°、前腕中間位にてシーネ固定した。術後当日より浮腫の除去を目的とした挙上・冷却・圧迫を病棟看護師とともに徹底し、皮膚の柔軟性を保つ為に可能な範囲で軽擦法を施行した。術後3~5日(平均3.5±0.76日)より十分なリラクセーションを獲得した上で、愛護的な他動運動と自動介助運動をセラピストのコントロール下で行った。術後2週から前腕の自重を利用したROM拡大と漸増的に重錘を利用したROM訓練を行った。また、治療終了後には重錘を利用した持続伸張肢位により局所冷却を15~20分行った。炎症の消退とともに物理療法を追加し、仮骨形成期には疼痛自制内での徒手的な伸張運動を追加した。原則として、セラピィは少量・頻回に行い、炎症の助長や異所性骨化の発生に注意した。
    【結果】
     肘AROMの平均獲得角度は屈曲136.3°±4.4°伸展-6.3°±4.4°。JOA scoreでは平均94.6±2.88点と比較的良好な結果であった。しかし、治療経過において2例で肘部管症候群が生じた。1例はK-wireのback out、1例は瘢痕組織による絞扼により尺骨神経症状を呈した。その後、抜釘とともに尺骨神経剥離術を施行し予後良好。全例において骨癒合しており、異所性骨化は見られなかった。
    【考察】
     肘関節内での骨折後は、高度な関節拘縮を来たすことが多く、日常生活において著しく障害されることとなる。そのため、解剖学的整復による強固な内固定と可及的早期からの運動療法が重要であることは周知のことである。しかし、関節面の高度粉砕例や軟部組織の損傷を合併している症例においては、二次的な合併症を予防するため、術者からの術中所見を十分に理解した上で、きめ細かなセラピィを行う必要があると考えられた。
  • 福村 俊之
    セッションID: 009
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回,腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)により開窓術を施行した後,脊柱の不安定性を呈したと考えられる症例を経験したので報告する.
    【症例紹介】
     LCSにより左下肢L5神経領域にしびれを呈した70歳代の男性.平成17年8月,L2~4の開窓術を施行.術後も左下肢のしびれ感の訴えがあり,平成18年8月開窓術を施行することとなった.
    【経過および結果】
     開窓術中,L4棘突起および右下関節突起に陳旧性の骨折を認め,その除去の際,右L5神経根硬膜剥離が起こった.術後右前脛骨筋・腓骨筋群の筋力低下を認めたが,疼痛・しびれ感の訴えはなく,歩行はT字杖使用下で自立していた.該当筋の促通・強化を中心に理学療法を施行していた.手術施行2ヵ月後,症例が自身で右下肢を伸張した際に右臀部周囲に激痛を感じ,以後,体幹回旋や右股関節内旋時,および夜間時に同様の激痛を呈するようになり,歩行できない状態になった.
     検査結果として,1.Spring test-L4/5椎間関節過剰運動性があり,同部位圧迫時右臀部に限局した疼痛を認めた. 2.梨状筋の圧迫による疼痛は認めなかった. 3.自動下肢伸展挙上は無条件下で行わせると,臀部に限局した疼痛を認めたが,腹横筋の収縮を行わせた後で行うと疼痛なく施行可能であった. 4.デルマトームに沿った感覚障害やしびれは認めなかった. 5.神経根ブロック施行による鎮痛は施行後2~3時間で,それ以降さらに激しい痛みを訴えた.また,生理食塩水注射で施行直後にプラセボ効果を認めた. 6.不定愁訴があり,「いつ痛みが起こるのだろう」との訴えが強い. 7.腹横筋・多裂筋の収縮を促すことで,疼痛の軽減を認めた.
     以上のことから,今回の疼痛の原因は次のようなものであると考えた.
    1.術後の脊柱の不安定性. 2.硬膜損傷による神経根の癒着および滑走障害. 3.疼痛に対する心理的不安,および薬物への依存傾向.
     そこで,腹横筋・多裂筋など,深層筋群の収縮練習を行った上で,殿筋群や背筋群の姿勢保持に関与する筋群の賦活と神経系モビライゼーションを中心に理学療法を行った.また,疼痛に対するメカニズムや疼痛に対する考え方・対処法について,注意深く本人・家族に説明し,理解を促した.
     結果,1ヵ月後には疼痛の強さ・発生頻度が減少し,屋外歩行も日常生活を十分に行える状態まで改善した.
    【おわりに】
     今回の症例のように,構築学的に不安定性がある場合でも,深層筋群の賦活による安定化を促す治療が有効である可能性が示唆されたものと考えられる.また,疼痛を有する患者に対して,心理的側面への配慮が必要な場合があるものと考えられる.
  • 右田 寛, 半田 一登, 濱田 哲郎, 今吉 彩
    セッションID: 010
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     現在、整形外科領域での診療場面において日本整形外科学会治療成績判定基準(以下JOA score)が評価法として多く用いられている。JOA scoreの中でも歩行能力の評価に関しては時間的・空間的に制限を受けやすく、また簡便で客観性の高い評価法が確立されていないため自己申告に頼るところが大きい。しかし、臨床場面においては往々に自己申告された歩行距離と実測値は大きく異なる場合がある。
     本研究ではJOA scoreの中で歩行の項目を有する腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)患者を対象とし、LCS特有の症状である間欠性跛行の主観的評価と客観的評価との間の誤差の程度を調査し、客観的評価の重要性を明らかにすることを目的とした。
     また、補助研究として健常者での距離感の調査を行い、一般的な距離感の信頼性の検討を行った。
    【対象】
     2006年4月から8月の期間に当院整形外科を受診し、LCSの診断を受けた患者18名(男性12名、女性6名、平均年齢71.9±10.2歳)を対象とした。
     また、健常者21名(男性13名、女性8名、平均年齢31.3±11.8歳)を対象とした。
    【方法】
     1)LCS患者には初回リハビリテーション時に自己申告による入院前の連続歩行可能距離と時間を聴取した。また、初回リハビリテーション時にトレッドミルを用いた連続歩行可能距離と時間を測定した。
     2)健常者には被験者に院内に設定したスタート地点より30mの歩行を指示し、歩行距離を測定した。
     3)統計学的にはピアソンの2変量検定と1標本t検定を行い、有意水準は5%未満とした。
    【結果】
     自己申告距離とトレッドミル実測距離との間に有意な相関は認められなかった。(r=0.38、P=0.09) 自己申告時間とトレッドミル実測時間との間に有意な相関は認められなかった。(r=0.06、P=0.78) 健常者における30m歩行測定では平均29.4mであり、誤差の絶対値平均は6.7mであった。
    【考察】
     本研究においてLCS患者の自己申告距離・時間とトレッドミル実測値との間には有意な相関は認められなかった。ゆえに、LCS患者自身が日常生活内にて経験した間欠性跛行の出現距離や時間は個人間で非常に曖昧であり、症状把握のための情報収集としては全く不十分なものであると言える。加えて、健常者21名を対象とした距離感の調査においても、最大で18m、平均6.7mの誤差があり、健常者においても距離感は非常に曖昧であった。
     今回、トレッドミルにおける評価法自体には改善の余地があるものの、本研究においてはLCS患者ならびに健常者の距離感・時間感覚の曖昧さが明瞭となったことで、現在の問診法主体の主観的評価ではなく客観的評価による症状把握が重要となってくるのではないかと考えられる。
     今後、本研究を活かしたトレッドミルでの評価法の改善ばかりではなく、より手軽で客観性の高い新たな評価法の模索が必要と考える。
  • 松田 友秋, 福田 秀文, 福田 隆一, 久松 憲明
    セッションID: 011
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     端座位での側方重心移動動作は立位や歩行との関連性を想定して、脳卒中片麻痺患者の運動プログラムに頻繁に取り入れられている。しかし、端座位での重心移動に伴う体幹の対応と実際の歩行や立位との運動学的検討が十分に行われているとは言えない。今回我々は、非麻痺側への側方重心移動動作に着目し、端座位・立位における体幹の運動学的対応に関して検討したので報告する。
    【対象】
     対象は、片手接地での片脚立位が可能な脳卒中片麻痺患者8名(平均年齢64.1±9.3歳。以下、片麻痺群)、健常者8名(平均年齢27.8±6.1歳。以下、健常群)で、片麻痺群は非麻痺側への動作のみの8側を、健常群は両側への動作の16側を計測した。
    【方法】
     端座位・立位の各肢位における側方重心移動動作を後方より撮影し、非移動側の骨盤挙上角(以下、PT)と体幹の立ち直り角(以下、TT)を計測した。PTは床面に対する両側上後腸骨棘を結ぶ線のなす角とし、TTは両側上後腸骨棘を結ぶ線と両側肩峰の結ぶ線のなす角とした。
     端座位での動作は、両腕を組んで足底接地した肢位から、両肩の平衡を保ったまま側方へ重心移動を行うよう指示した。立位での動作は、測定用に接地した台に20cm開脚した状態で移動側のウォーカーケインに手を置いた肢位より、非移動側の踵を挙上するように重心移動した両脚立位(以下、両脚立位)と、非移動側の台を除去した片脚立位(以下、片脚立位)の姿勢を保つよう指示した。
     統計学的処理は、2群間の比較は対応のないt検定を用いて行い、端座位と立位における関連性の検討はスピアマンの順位相関係数を用いて行った。
    【結果】
     1)2群間の比較に関しては、端座位におけるPTとTTにおいて、いずれも健常群に対し片麻痺群が低値を示した(P<0.01)。また、片脚立位のPTにおいては、健常群に対して片麻痺群が高値を示した(P<0.05)。
     2)端座位と立位の関連性に関しては、片麻痺群のPTにおいて、端座位と両脚立位との間に有意な相関関係を認めた(rs=0.90、P<0.01)。
    【考察】
     結果1)より端座位での動作では、「片麻痺群は麻痺側の骨盤挙上や体幹の立ち直りが困難である」といった吉尾らの報告と同様の結果を示した。これに対して立位での動作は、片脚立位における片麻痺群のPTのみが健常群より高値を示す結果となった。この要因として、片麻痺患者では片脚立位における麻痺側下肢の空間保持を骨盤の引き上げによって代償していることが推測された。
     結果2)より片麻痺群における端座位と両脚立位のPTに関連性が認められた。端座位での動作に関して、鈴木らは筋電図分析より非移動側体幹機能の重要性を述べている。また、両脚立位での動作は歩行時の荷重反応期と類似した動作であることから、非移動側体幹機能が荷重反応期の重心移動に伴う骨盤帯の対応に影響を与える要因であると推測された。
  • ~市販体重計を利用した荷重率の測定~
    鶴留 大樹, 今村 潤, 仮屋 賢, 酒匂 久光, 板敷 美紗, 中馬 洋輔, 内田 大介, 中村 聡, 新屋敷 朝美, 東垂水 明子, 牧 ...
    セッションID: 012
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脳卒中片麻痺患者にとって階段昇降はADLの中で少なからず必要とする動作の一つである。しかし、階段昇降は前後への重心移動の繰り返しである平地歩行に比べ、下肢への負担が大きい上下への重心移動を伴うため、獲得に難渋することがある。一般的に階段昇降に必要な要素として非麻痺側伸展筋力や麻痺側の支持性、バランス能力などがいわれているが、その中でも麻痺側の支持性は重要な要素であると考える。更に市販の体重計で麻痺側の支持性を定量的に表すことができれば臨床においても有用な情報となる。本研究では静的立位での体重移動能力を麻痺側支持性の指標とし、階段昇降の関連について検討した。
    【対象】
     対象は当院にて入院中および通所リハを利用している脳卒中片麻痺患者で、上肢の支持なしで静的立位保持が可能であり、一本杖にて平地歩行が可能な13例とした。また運動麻痺の程度や感覚障害の有無、平衡機能障害などは制限せず、高次脳機能障害や認知症を呈している症例は本研究から除外した。
    【方法】
     階段昇降は高さ13cm、奥行き23cm、段差5段の階段を手すりを使用しない状態で行い、日常歩行補助具として使用している一本杖または四点杖のいずれかを用いた。麻痺側荷重率は、市販の体重計の上に立位をとらせた状態で麻痺側へ最大限体重をかけてもらうよう指示し、その際の麻痺側の荷重量を測定した数値を全体重で除した値とした。
    【結果】
     麻痺側への荷重率が60%以上であった8名中7名は階段昇降が可能であり、60%以下であった5名中3名は階段昇降が不可能であった。
    【考察】
     以上の結果から脳卒中片麻痺患者において、麻痺側荷重率が60%以上であれば階段昇降を獲得する割合が高く、麻痺側荷重率が階段昇降において有用な情報の一つであると考えられる。床反力計を用いた健常人における歩行と段差昇降の研究では通常歩行で垂直方向に90.8%であったのに対し、昇段時108.5%、降段時120.0%と階段昇降時では通常歩行に比べて下肢への負荷が大きいという報告がある。麻痺側への荷重率が低くても平地歩行は獲得できる患者は多いが、階段昇降では上下への移動を伴い麻痺側への荷重が増大するため、荷重率が高値な患者で階段昇降を獲得しやすいのではないかと考える。麻痺側荷重率は運動麻痺の程度や感覚障害、平衡機能障害などの因子により変化する。今後はこれらの因子によって麻痺側の荷重率がどのように変化していくか検討していく必要がある。市販の体重計を利用した検査は簡便な評価法であるため、症例数を増やし検証を重ねていく中で信憑性を高め、一般的な評価法として利用していきたい。
  • ~セラピストの関わり~
    岩下 正明, 中玉利 美香, 池田 悠一朗, 中村 愛美, 千手 圭一郎, 山下 真治, 櫛橋 弘喜
    セッションID: 013
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     重度痙縮はQOLを低下させ、介護負担を増大させる。治療にはリハ、薬物、手術などがあるが、重度痙縮ではそれらの治療効果が乏しい。近年バクロフェンを髄腔内に直接投与(ITB)する試みが行われ、効果が得られているとの報告がある。今回、当院でITB療法を多発性硬化症患者に対して施行し、その中でのリハの関わりについて若干の知見を得たので報告する。
    【症例】
     症例:40歳代 男性
     現病歴:20歳代に発病。数年前より下肢痙縮が強くなり、車椅子駆動が不可能となった。他院にて内服、ボツリヌス菌療法を受けるも改善なく、ITB目的にて入院。
     現症:GCS(4・4・3)で、重度四肢麻痺で屈筋痙縮が強く、僅かな刺激でスパズムが誘発される。ADL全介助で、車椅子や端座位では後方への反り返りが強く、ずり落ちる。両下肢開排・伸展困難で、排泄・保清などでは重度な労力を要していた。下肢8部位のAshworth評点(以下評点)の平均は3.25点。
    【経過】
    (1)治療目標
     排泄・保清での介護負担軽減と坐位姿勢の確保。
    (2)スクリーニング(腰椎穿刺で髄腔内に注入)
     注入4時間後の評点は両下肢平均にて評価。1回目(50μg)は平均2.0点、2回目(75μg)は1.75と改善を示す。
    (3)ポンプ・カテーテル植込み術
     第2/第3腰椎よりカテーテルを髄腔内に穿刺し、先端を第9胸椎に固定。ポンプは左下腹部皮下に留置。術後はバクロフェンを75μg/日にて投与開始。
    (4)術後~退院までの経過
     術後より1週間ごとの評点は下肢平均2.0~2.25点で推移。一度、術後9日目に投与量を75μg/日→86μg/日へ増量したが、評点に変化はなかった。
     日常生活場面では、普通型車椅子への乗車(術前はリクライニング)が可能となり、介護者からは排泄・保清などの管理が容易になったとの意見を聞く事が出来た。術後33日目に部分的な痙攣発作が出現したが、術後2ヶ月で退院し、現在に至るまで順調に経過している。
    【考察】
     ITBに於けるセラピストの役割は、1)治療目標を具体的にすること、2)治療方針を決定する為のデータを提示すること、3)過剰投与・離脱症状の早期発見に努めることなどにあると考える。
     本ケースの下肢の痙縮はITB療法後に改善が見られ、当初の治療目標は達成できた。他のITB療法の研究報告からも治療効果として期待できるものは大きいようである。
     本ケースが術後に普通型車椅子に乗車し涙を流しながらテレビを見ている光景は感慨深いものがあった。このことからITBという新たな治療法であっても、何が患者様の為かを常に考える姿勢が重要であり、セラピストの関わりについて原点回帰する事ができた。
     ITB療法は、痙縮の治療に新たなる展開を与える治療法であることを、本ケースを通して学んだ。
  • 関 一彦, 濱田 正貴, 稲津 明美, 鶴田 和仁
    セッションID: 014
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     嗅覚は、加齢によりその機能が低下することが知られている。当院では、これまでアルツハイマー(以下AD)などの早期診断の視点から嗅覚障害に注目しその調査を行ってきた。一方、パーキンソン病(以下PD)は、1975年に最初の嗅覚低下の報告がなされているが、PDやADなどの場合、Lewy小体出現を伴う病理変化と密接に関係していると言われている。また、Braakらは、Lewy小体はPD発症早期から黒質障害に先行し、迷走神経背側核と嗅球に最初に出現、その後他の部位に広がって行くと報告している。今回、PDに関する試行的調査の中から注目すべき点が確認されたため考察を加え報告する。
    【方法】
     評価器具には、T&Tオルファクトメーター(嗅覚測定用基準臭:第一薬品)を使用、A:β-フェニルエチルアルコール・B:メチルシクロペンテノロン・C:イソ吉草酸・D:γ-ウンデカラクトン・E:スカトールの5種39サンプルを使用した。検知閾値(ニオイの有無)と認知閾値(ニオイの特定)の両面から調査し、オルファクトグラムは、最も薄い濃度が-2、スケールアウトは、B以外6、Bのみ5となる。
    【結果】
     症例1、63歳男性レム睡眠行動障害、平均値5.8、嗅覚度5度(脱失)、健常者で特定しやすい基準臭Cは認知できなかった。ただし、検知閾値は保たれていた。症例2、57歳男性パーキンソニズム、平均値4.6、嗅覚度4度(高度障害)、基準臭Aが平均より良い結果となった以外、嗅覚障害者に特徴的なフラットなグラフ(高度から脱失の結果)となった。また、特定しやすい基準臭Cも認知できなかったが、検知閾値は保たれていた。症例3、79歳男性パーキンソニズム、平均値5.8、嗅覚度5度(脱失)、特定しやすい基準臭Cは認知できなかった。また、特徴的なフラットなグラフとなったが、検知閾値は保たれていた。症例4、71歳女性家族性PD、平均値1.2、嗅覚度2度(軽度障害)。基準臭Aで閾値が高いが、他はほぼ70代平均を下回った。グラフは、健常者のものに類似し、基準臭により閾値が変動する結果を示した。
    【考  察】
     今回、PDに対する嗅覚評価を行う中で、以下のことを確認した。嗅覚障害を伴う3名の認知閾値は、AD同様高く、基準臭毎に変化することのないほぼフラットなグラフとなった。家族性PDの場合、嗅覚は保たれており、PDでも嗅覚障害を伴うものとそうでないものがある。PDの場合、検知閾値は、保たれる傾向にあった。PDなどの嗅覚障害は、Lewy小体出現を伴う病理変化が密接に関係しているとされる。また、PDと診断された症例8割は嗅覚障害を伴い、その7割は自覚がないとの報告もある。一方、PDの嗅覚障害が、重症度や羅病期間に影響されず、確認されるという特徴を考慮する時、医師の診断材料の一つとして貢献できる可能性は高いと推測する。
  • ~できることをできる範囲で~
    福田 久徳
    セッションID: 015
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、脳卒中後にうつ病を合併した事例を担当させていただく機会を得た。うつ病の理論として絶望感理論を用い、介入方法の選択を行うために人間作業モデル(以下MOHO)を用いた。絶望感理論とMOHOから徒手的介入を選択し、作業を行うことで人間システムは再構成されるという見解を支持し、アプローチを行った結果、一部の家事動作が習慣化したので報告する。
    【事例紹介】
     74歳、女性、左利き。娘と2人暮らしで、昨年夫を亡くしている。平成1年に右脳出血発症。Br-stage左上肢4、手指5、下肢4。既往歴に高血圧性心疾患、狭心症、うつ病、不安症、変形性腰椎症、大腿骨頸部骨折などあり。起居動作は起き上がりから屋内歩行まで自立。ただし、床からの立ち上がり多介助。日常生活動作では入浴動作一部介助で、その他は自立。家事動作は介入当時は行っていない。
    【アプローチ】
     訓練期間は2006.6.12~2006.11.6(計18回)、家事動作訓練(6回/18回)。介入当時、事例から「頭、肩が痛くなりそうで何も出来ない」、「娘に全てしてもらって申し訳ない」という発言が頻繁に聞かれ、自身の身体への不安と娘に迷惑をかけているという想いからさらなるうつの悪循環を生んでいた。野藤は「フローを生み出すには、その人の技能である行為の能力と挑戦を生み出す行為への機会がつりあっていることが大切である」としており、事例の能力に合った作業機会を提供し、絶望感理論に定められている抑うつ的帰属スタイルとMOHOに定められている個人的原因帰属の改善を作業を通して図るために徒手的な誘導による家事動作訓練を行った。
    【結果・考察】
     家事動作の一つである食器の片付け及びカーテンの開け閉めが習慣化し、事例の役割となった。矢田部らが「誤った認知スタイルを持つことは発症や病状に影響する一方で、それを少しずつ矯正していくことが有効な治療法につながる」と述べているように、事例にとって作業を通した「帰属方法」の変換が家事動作の習慣化へ向けて有効な手段であったと考えられる。また、市橋らは「うつの人々の目標は決して内的価値に向けられるものではなく、役割であり、対象に尽くすことである」と述べており、事例にとって家庭内でできる範囲での役割を持つことがうつの軽減と新たな役割の獲得・定着へと繋がったと考えられる。
    【まとめ】
     作業療法士が作業を選択し、用いる際には明確な理論付けが必要であり、理論は作業療法の有効性を示す手段でもある。Kielhofnerは「人間システムの行為あるいは作業行動が、健康・幸福・発達・変化などの中心的源泉である」としているように、作業を行うことで人は新たな自分を発見し、自身の生活に積極的に関わっていけるのである。
  • 徳田 光広
    セッションID: 016
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     車いす利用者にとって、車いすのよりよい適合は各種活動の礎となると考えられる。年々、車いすの性能や機能、種類は増えており、適用の広いモジュラー型の車いすを病院や施設でみかける機会が多くなっている。また、主体となり導入を勧めることも増えている。しかし、各種ある中で何を基準に選択し導入すべきか判然としない場合がある。そこで今回、入院患者の身体寸法を測定し、その結果から適応の広いモジュラー型車いすについて考察し報告する。
    【対象】
     当院入院中の車いす使用者で端座位保持見守り以上の11名(全員女性、平均年齢83.0±2.8歳)とした。今回は車いす使用者の後期高齢女性に焦点を当てた。
    【方法】
     身体寸法の測定方法は財団法人テクノエイド協会より抜粋し、1座位臀幅(臀部最大横幅)2座底長(臀部後端~膝窩)3座位下腿長(足底~膝窩)4座位腋窩高(座面~腋窩)5座位肘頭高(座面~肘頭)とし測定した。さらに身体寸法から想定される車いす寸法を財団法人テクノエイド協会の方法より身体寸法平均値から加減して後期高齢女性の想定される車いす寸法範囲として算出。
    【結果と考察】
     身体寸法の測定結果(単位mm:平均値±標準偏差)は1座位臀幅343±25、2座底長395±14、3座位下腿長354±17、4座位腋窩高323±46、5座位肘頭高168±21。身体寸法から想定される車いす寸法(単位mm)は1シート幅343~373、2シート奥行345~325、3シート高(前座高)374~425、4バックレスト高253~223、5アームレスト高178~188であった。この車いす寸法と市販モジュール型車いす各種寸法を比較するとシート幅とシート高は合致する車いすが多かったが、その他寸法はよく合致しているとは言い難く、算出した寸法が小さい傾向であった。これは今回の対象者を後期高齢女性に限定し、さらに円背などで小柄な対象集団となった為と考える。しかし座位保持のみの機能とし、クッションや背あての併用とみればシート奥行・アームレスト高も多くのモジュラー型車いすと合致する。座位保持機能に駆動の機能も加えると今回の対象集団では下肢駆動や両上肢駆動で大きな動きは制限される方が出てくる。駆動機能を付加すると考えると、車軸位置変更やクッション厚み・形状変更で部分的に対応できると思われる。
     今回は後期高齢女性の車いす使用者を対象とした。今後は対象を広げながら、各ケースでの検討も踏まえよりよい機器の選定や導入に努めたい。
  • ~車いす判定状況調査結果から~
    浦川 純二, 岩永 弘人, 毎熊 美佳, 山口 孝人, 福田 優子, 廣岩 京子, 佐々木 多佳子
    セッションID: 017
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     長崎こども・女性・障害者支援センター 障害者支援部更生相談課(以下、当センター)では自立支援給付における補装具の判定や意見書交付を実施している。なかでも車いすにおいてはモジュラー化や機能の多様化とともに障害や生活環境などに応じた用具を選択することが可能になり、生活機能の向上が認められている。その反面、ミスマッチによる能力低下を余儀なくされている例も少なくない。当センターではこれら不適合を防止するため、シーティングなどの適合相談や環境調査、研修などを実施しており一定の成果をあげてきた。しかし、意見書、処方箋、見積もり書などの記載内容の不備や不整合などにより追加調査を実施する例が少なくない。今回、車いす交付に関する追加調査の状況を調査し、その結果から意見書、処方箋の見直しを行うことで福祉サービス向上を図ったので報告する。
    【対象と方法】
     平成18年4月1日から12月31日までの期間、当センターで車いすの判定を実施した121名のうち、平成19年2月末時点で適合判定が未実施のものを除く115名(文書判定58名 来所57名)を対象とした。年齢は43.8±19.9歳で、男性71名 女性44名。障害種別は肢体不自由111名、内部障害4名であった。調査は受理から判定までの日数について、文書判定と来所判定、調査の有無などに分けて算出した。また、文書判定における追加調査の内容について分類した。なお、差の検定には対応のあるt検定を、相関の検討はピアソンの積率相関係数を用いた。
    【結果】
     追加調査実施割合は、文書判定では56%、来所判定では21%であった。それぞれ受理から交付までの平均日数は、文書判定調査有り38.9日、調査無し7.3日、来所判定調査有り45.8日、調査無し13.7日でありそれぞれ有意に差が認められた(P<0.001)また、追加調査を実施した回数と受理から交付までの日数には高い相関が認められた。(P<0.001)追加調査の内容は、処方箋不備が全体の49%を占め、意見書不備27%、調査書不備9%、見積書不備6%と続いた。
    【考察】
     車いすの判定には身体、障害状況と車いす仕様の詳細や環境適応などの情報が必要不可欠で、市町からの環境調査書のみならず意見書、処方箋記載には確実性が求められる。車いすの文書判定件数の半数以上にわたり追加調査を実施している現状から、その頻度の高い意見書、処方箋では情報が不十分であると考えらた。今回の調査結果から追加調査回数が増えることで交付期間遅延が生じていることが明らかとなったため、期間短縮による福祉サービスの向上を目的とした様式の改訂を行った。内容は障害状況全般、車いす操作能力と使用環境、車いすの仕様、使用目的と効果などについて具体的記載を求め、判定に必要な情報を的確に得られるよう項目を作成した。また、改訂前後での調査状況の変化など経過も踏まえ報告する。
  • 本田 泰丈, 野見山 拓也
    セッションID: 018
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     車椅子坐位において頭部の保持が困難な患者に対し、当院では車椅子のバックレストにダンボール等を挿入して対応していた。しかし、使用感が悪く、外観も不良であった。今回、簡易に取り付け可能で、使用感も良好な車椅子用ヘッドレストを考案したので紹介する。
    【ヘッドレストの概要】
     当ヘッドレストは、車椅子のバックレストに取り付け、ベルトにて固定する。
     本体は、2本の支柱とヘッドレスト部分にイレクターパイプを使用。その他は支柱を固定するベルトのみで構成されており、非常にシンプルな構造になっている。また、車椅子の幅や利用者の体形に応じて無段階に調整でき、ほとんどの車椅子に装着可能である。
    【作成方法および制作費】
     作成方法は簡単で、フレームとなる2本の支柱とヘッドレスト部分の横バーを接続ジョイントにてアルファベットのH型に組み立てるだけである。ヘッドレストのクッションはウレタンチューブまたは梱包用のエアーキャップ等を利用者の状態に合わせ適当な厚さに巻き調整する。費用は1個約1200円であった。
    【考察】
     意識レベルや体幹バランスの低下した患者の坐位保持において頭部の保持は非常に重要であり、ヘッドレストが必要となることが多い。車椅子用のヘッドレストは各種存在するが、いずれも高価で取り付けには要領を要する。病院や施設で使用する機器は個人使用とは異なり、あらゆる体形や車椅子の大きさに対応しなければならないため、細かな調整機構が必要となる。また、看護師や介護士の機器の取り扱いの理解が必要不可欠である。多忙な業務の中で、看護師や介護士にとって機器の取り扱いはできるだけ簡易であることが望ましい。
     市販の車椅子用ヘッドレストはバックレストを延長したタイプと、ハンドルに取り付ける細かな調整機能付のタイプ等がある。前者のヘッドレストは比較的安価であるが頭部の安定性に乏しい。後者は細かな調整が可能で適切な位置に頭部を保持できるが高価である。
     今回考案した車椅子用ヘッドレストは非常に安価であり、また簡単に製作できる。調整方法も簡単で車椅子への装着はベルトで締めるだけである。また、使用しない時は簡単に分解でき保管も場所を取らないというのも利点として挙げられる。
     今回考案したヘッドレストは後頭隆起下部を保持する構造となっており、頭部の保持は安定している。当ヘッドレストは市販されているヘッドレストと同等な効果を期待でき、早期離床を促す契機になると考える。
  • ~手作りマットの作成~
    石見 美保子
    セッションID: 019
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     当施設で使われている車椅子は、折りたたみ車椅子がほとんどだが、この車椅子は折りたたみを可能にするため、座布と背布がパイプに張られた状態となっている。長時間にわたって、生活用具として使用する場合、座布と背布はしだいにハンモックのようにたるんでくる。このたるみは前後左右の身体傾斜を誘発し、また、たるんだ状態で連続座位を1時間以上とることは、1点に圧が集中するため、臀部に負担をかけることになる。そこで、当施設リハビリスタッフは、2年前より、たるみのある車椅子に座った時の減圧を考え、コスト負担をかけずに作成できる車椅子マットに取り組んだ。
    【方法】
     施設近隣の工場から、廃材となったポリスチレンフォーム保温板という発砲スチロール状の板を利用して作成した。まず、車椅子座面の幅に合わせて板をカットし、さらに、臀部が接する部分を半円にカットする。これを車椅子座面上に乗せるが、座面たるみ部分をなくすため、半円にカットした残りの板を裏に貼り付ける。このように作成したマットを座面に敷くことで平坦な座面を作ることができた。材料の板は発砲スチロール様の素材で、カッターで簡単に切り取ることができ、廃材のためほとんどコストがかからない。
    【結果】
     車椅子座面への重力負荷で考えると、たるんでいる車椅子に座った場合、臀部にかかる圧は臀部中心部へ集中し、圧は分散されない。しかし、作成したマットは平面となるため、マットと臀部が接触する部分に均等に圧がかかり、分散することができた。また、たるみのある車椅子は、大腿部と座面との間に隙間が生じやすい。しかし、作成したマットをつけて座ると大腿部と座面が接触でき、臀部から大腿部まで広い面積で座ることが可能となる。よって、より圧を分散することができた。実際にハイリスク者に使用してみたところ、尾骨部に1cm大のビランがあり約1年間、処置を繰り返していた方が、作成したマットを使用し、2ヵ月後には改善、その後再発はみられていない。
    【考察】
     今回、作成したマットは、老朽化した車椅子に対する工夫として有効な方法であり、車椅子のたるみによる、骨突出部への圧集中を防ぐことにつながったと思われる。また、短期入所など一時的な使用として活用できると思われる。しかし、圧分散効果としては限界があり、さらに工夫することが求められる。褥瘡改善には減圧だけでなく、基本的なケアや予防をふまえ、日々関心をもって取り組んでいきたいと思う。
  • 黒木 美妃, 帖佐 悦男, 鳥取部 光司
    セッションID: 020
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では2002年に作業療法が開設されたが、日頃から作業療法の認識の低さを感じる事が多々ある。今回、他者の認識状況を把握し、今後の啓発に繋げるため、看護学生にアンケートを実施し、作業療法の認識調査を行った。
    【対象と方法】
     当大学2年に属する看護学生(2003~2006年度)221名を対象に、独自のアンケートを実施した。質問内容は、作業療法という言葉を知っているか、作業療法のアルファベット2文字での略を知っているか、作業療法とリハビリの関連、作業療法の具体的内容の知識について調査した。なお、集計において回答方法が指示と異なるものは無効とした。(回答率92.5%)
    【結果】
     「作業療法という言葉を知っている・聞いた事があるか」の問いでは、はいが99%の結果を示した。
     「作業療法をアルファベット2文字で略すと何と言うか知っているか」の項目では、はいが77%であった。
     「作業療法とリハビリテーションは別物か」との問いでは、はいと回答した者が21%であった。この問いに誤って回答した者の、作業療法の具体的内容に関する自由記述では、主にADL訓練としているものが33%、作業・創作としている者が21%、身体機能維持・向上としている者が16%であった。一方、作業療法をリハビリテーションであると理解している者の記述では、主にADL訓練としているものが18%、作業・創作としている者が26%、身体機能維持・向上としている者が15%であった。
    【考察】
     作業療法という言葉の認識率は99%と高かったが、OTという略語の認識率は、77%とやや低かった。記述内容に関しては、ADL、作業・創作、身体機能維持・向上などのキーワードが多く見られたが、心理的支持・高次脳機能などの精神面に関するキーワードは認めなかった。さらに、作業療法の業務内容をリハビリテーションであると認識していない者が21%と、比較的多い傾向がみられた。作業療法がリハビリテーションであるという認識の有無に関わらず、作業療法は身体機能維持・向上、作業・創作を行うものであるという認識はされていた。しかし、作業療法をリハビリテーションとして認識していないにも関わらず、作業療法はADL訓練を行うものであると認識している者が多かったことから、リハビリテーションという概念の理解力が不足していると考える。現在の医療現場ではチームアプローチが必要とされ、より良いサービスを提供していくには、互いの業務内容の理解は必要不可欠である。臨床に出た際にスムーズなチームアプローチを実施するためには、教育を受ける段階でより正確なものを学ぶ事が必要と考えられ、今後、作業療法の理解を進めるために、学生時代から、より積極的で具体的な介入を行っていきたいと考える。
  • 渡辺 博, 釜崎 俊彦, 水上 諭, 北田 智則, 金ヶ江 光生
    セッションID: 021
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     高齢化社会が急速に進行している今日、高齢者が「健やかに老いる」にはどうすれば良いのかが社会的な課題となり、様々な地域で高齢者に対する健康増進事業や介護予防事業が進められている。現役を退いた高齢者は社会的役割が減り、社会的な関わりが少なくなりやすいことが想像できる。このような状況は高齢者の日常生活を非活動的にし、身体的生活機能のみならず、精神的及び社会的な生活機能を低下させる大きな要因になることが予想される。そこで、本研究では地域高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因の検討を行った。
    【方法】
     対象は介護を必要としない自立した日常生活を営んでいる65歳以上の高齢者を対象とした。予め本研究の目的、注意事項などについて十分な説明を行い、研究協力の承諾を書面で得た後、身体機能検査および自己記入式アンケートを行った108名(男性42名、女性66名)を調査対象とした。
     調査項目は日常の身体活動量と過去一年間の転倒経験、Falls Efficacy Scale、老研式活動能力指標を自己記入式アンケートで調査した。身体機能としてFunctional Reach Test、膝伸筋力、膝屈筋力、足関節底背屈筋力、足関節自動底背屈可動域を測定した。
    【結果】
     身体活動量の高活動群、低活動群を抽出しWilcoxon法にて検討を行った。高活動群と比較して低活動群は年齢が有意に高く、体重、老研式活動能力指標、体重比膝伸筋力、足関節自動底背屈角度は有意に低い値であった。有意差が確認された年齢、体重、老研式活動能力指標、体重比膝伸筋力、足関節自動底背屈角度の6項目のオッズ比を算出すると体重比膝伸筋力、足関節自動背屈角度のみが身体活動量に独立に影響していた。
    【考察】
     身体活動量の低活動群においては膝伸筋力、足関節自動背屈角度が有意に低く、足関節自動背屈角度と膝伸筋力の低下が歩行能力低下を引き起こし、歩行能力低下から身体活動量の低下が引き起こされたと予想される。
     平均歩数が高いものほど総合的な生活体力や歩行能力の加齢に伴う低下が少なく、日常生活において歩数を高く維持することが、高齢者の生活体力の低下を抑制するための有効な対策になり得ることを北畠ら(1999)は報告している。加齢に伴って体力低下は避けられないものの、本研究でも地域在住の一般高齢者において身体活動量を高めるために下肢機能の保持と歩行の習慣が重要であることが示唆された。
     本研究は横断的研究であるために、身体活動量の低下に対する因果関係を示すものではない点に限界がある。高齢者の身体活動量の増加に向け有効な対策を立てる意味からも、縦断的な研究により高齢者の身体活動量が低下する原因について更なる検討が必要と思われる。
  • 神谷 之美
    セッションID: 022
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     平成18年度の医療・介護保険診療報酬改正により「訪問看護ステーションからの看護師、保健師の訪問数より理学療法士の訪問数が上回ってはならない」という解釈がなされそのことにより多くの訪問リハビリテーション(以下訪問リハと略す)の現場では適切な訪問回数、内容が提供できないという声が聞かれる。今回当ステーションでは訪問依頼時に訪問リハの希望か否かにかかわらず、承諾を得た上で、理学療法士(以下PTと略す)が看護師に同伴し、PTの立場から評価することで訪問看護利用者の理学療法の潜在的ニーズを調査、検討したので報告する。
    【対象・方法】
     平成18年9月1日から平成19年3月31日までに当ステーションに訪問依頼のあった19件。事前に利用者、家族、ケアマネージャーの承諾を得て初回、或いは2回目訪問時にPTが同伴し利用者の身体能力評価、ADL評価,家屋環境、介護状況の評価を実施した。終了後同伴訪問への感想を自由意見で聞き取りした。
    【結果】
     19件全件においてPTの視点から助言、指導を行った。特に家屋環境、介護方法の指導は病院退院時にリハビリテーションスタッフから指導、助言を受けたケースが大半にもかかわらず、再度助言を必要とするケースが多く、継続したフォローの必要性を感じた。同伴訪問後の感想は全件が「来てもらってよかった」と好意的であり、当初訪問看護の依頼のみであった8件中4件が新たに訪問リハの計画が追加された。家族は「介護方法の指導」、ケアマネージャーは「環境整備」「リハビリのメニュー」への関心が高かった。
    【考察】
     従来、訪問は依頼のあったケースのみへ対応する事が多いが、今回の同伴訪問により未だPTの専門性を活かせる潜在的ニーズが多い事が実感できた。利用者の身体機能への直接関与にとどまらず、環境、介護を含めた生活評価においてもPTは専門職として積極的な技術、情報提供を行う事で、訪問分野でのPTの活躍の場を拡大できると期待できる。今後はチームである看護師、ケアマネジャーへの啓蒙活動も必要と考える。
    【まとめ】
     1.訪問看護利用者へ理学療法ニーズの調査のため同伴訪問を実施した。2.環境整備、介護指導へのニーズが高かった。3.看護師、ケアマネージャーへの啓蒙活動の必要性がある。
  • 鈴木 圭, 河添 竜志郎, 内田 正剛, 竹内 久美, 田尻 美穂
    セッションID: 023
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     H18年4月の介護保険制度改正により、地域支援事業(以下、事業)と新予防給付が創設された。今回我々は、地域包括支援センター(以下、支援センター)より委託で、特定高齢者に対する地域支援事業運動器の機能向上事業I(以下、運動器I)に取り組んだ。その活動内容及び経過、今後の課題について報告する。
    【対象・事業内容】
     対象は厚生労働省による特定高齢者選定に基づき、支援センターによる一次アセスメントの結果により抽出された5名(男性3名、女性2名)である。事業頻度は週2回開催で3ヶ月を1クールとした。1ヶ月毎にコンディショニング期間、集中運動期間、生活動作の機能向上期間と3期間に分割して、運動器Iを実施した。毎回開始時には運動内容を自宅で継続することを目的に「学習時間」を設けた。事業中期からこの学習時間に自主運動の有無だけではなくその週の生活内容を振返り記載する内容を導入した。事業後期からは個別プログラムの追加を行った。評価は運動器の機能向上マニュアルに沿って1ヶ月毎に握力、片足立ち(開眼)、TUG、通常歩行時間、最大歩行時間等を実施した。
    【結果・考察】
     運動器の機能向上マニュアルに沿った評価では、利用者全員に各項目での向上を認め、このことは運動意欲また事業参加意欲につなげることができた。しかし今回の事業では、日常生活活動面は概ね自立レベルであり、そのため生活面より個々の疾病や障害への治療や回復を求める傾向や、加齢に伴う身体機能減退は仕方がないという認識の利用者もいた。このことが事業を遂行する際に多くの利用者において自らの生活目標設定を困難にしていた。また事業開始まで準備期間が限られていたことや関係者が新しい事業運営に試行錯誤の対応となったことも関係者間において各利用者の生活目標の共通把握を困難とした要因と考えられた。そのような中でプログラムの中に「学習時間」に加え、その週の1日毎の「生活を振返る時間」を設けた。そのことで「庭への植木の出し入れができるようになった」「近くのスーパーまで買い物に歩いて行くことができるようになった」等といった声が聞かれるようになり、利用者が自己の生活を見つめ直し、日常活動の変化や家庭での役割に気付く機会となった。
    【おわりに】
     この事業は、利用者が主体的に活動を継続することが目的である。今回利用者の主体性向上のために「生活を振返る時間」は有効であった。しかし、より主体性の向上を図るためには利用者が事業の目的と内容を理解し生活目標設定が出来るように支援センターとの密なる連携を図ることが必要と考える。
  • 内田 大介, 今村 潤, 仮屋 賢, 酒匂 久光, 板敷 美紗, 中馬 洋輔, 鶴留 大樹, 中村 聡, 新屋敷 朝美, 東垂水 明子, 牧 ...
    セッションID: 024
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では介護予防事業の1つとして、8種類のマシンを用い、包括的高齢者運動トレーニング「Comprehensive Geriatric Training(以下:CGT)」を行っている。今回、マシントレーニングを実施した結果、体力の維持・向上、歩行距離の拡大が図れたのでCGTの有用性を若干の考察を加え報告する。
    【対象者】
     対象者は当院の通所リハビリテーション利用者17名(男性:9名、女性:8名、平均年齢76±8.4歳)疾患は脳血管障害8名、頚椎・腰椎疾患3名、その他4名を対象として行った。
    【評価と運動】
     評価項目は、開眼片脚立ち・ファンクショナルリーチ・Time Up & Go・5m歩行速度(補助具使用有り)の4項目を行い、マシントレーニング10回を1クールとし評価を実施した。マシンの選択は理学療法士が初期評価の段階で筋力・身体能力を考慮し選出した。また、レッグプレス・ニューステップの2つについては全員実施した。運動強度として、1回最大挙上筋力(1RM)にて行い、1RMの60~70%の負荷にて、レッグプレスは10回を1~2セット、ニューステップはBorg scaleを用いきつくない程度の負荷量で5分間行った。
    【結果】
     2機種のマシントレーニングを実施し、4項目の評価を行った結果、17人中13人に以下のこと(1)開眼片脚立ち平均2.65→3.64秒。(2)ファンクショナルリーチにおいて平均12.3→17.4cm。(3)Time Up & Goにおいて11.6→10.2秒。(4)5m歩行速度(補助具使用有り)において平均7.3→5.3秒の向上が見られた。また、歩行距離の拡大や歩行中のふらつきも軽減した。しかし、17人中4人に関しては向上が見られなかった。
    【考察及びまとめ】
     今回、高齢者の体力維持・向上を目的にCGTに基づいたトレーニングを実施した。今回行ったマシンの選択として(1)操作が容易である(2)下肢筋力の強化が図れる(3)全身運動を行うことができるという理由からレッグプレスとニューステップの2つを全ての利用者に実施した。評価に向上が見られた利用者に関しては歩行距離の拡大や転倒予防に繋がっていると考える。また、変化の現れなかった利用者に関しても、体力や歩行距離において維持は図れている。今回のマシントレーニングの実施により、CGTの目的である「虚弱高齢者の身体機能の向上を高め要介護に陥ることを防ぐ」ことを達成できたと考える。今後もCGTを行う利用者の数を増やし、体力の維持・向上、歩行距離を高めていくことで介護サービス量の軽減に努めていきたい。
  • 内田 正剛, 河添 竜志郎, 鈴木 圭, 竹内 久美, 田尻 美穂
    セッションID: 025
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当事業所は独立型の訪問看護ステーションであり、訪問を通して生活支援のための福祉用具の導入に関わることも多い。今回我々は、身体機能の変化等によりリフト移乗を中止していた症例に対し、吊り具の調整とリフト操作方法の再検討により再導入に至る経験ができた。経緯や吊り具の調整方法などについて若干の知見を得たので報告する。
    【症例紹介】
     N.O氏、33歳男性診断名:筋萎縮性側索硬化症(H16.6診断)。現病歴:H2歩行困難、筋力低下が徐々に進行、H12呼吸不全となり気管切開、H15人工呼吸器開始、同年呼吸停止し低酸素脳症発症し意識レベルJCS300の寝たきり状態。H17.10.14より全身状態の維持管理を目的に当ステーションの訪問看護・訪問リハビリテーションが開始となった。
    【経過】
     訪問開始時の家族の希望として、ベッドからのリフト移乗の再開と訪問入浴時の安全性の確保、介護者の負担軽減のためのリフト使用があった。しかし、リフト使用を中止するまでの吊り下げられた姿勢は座位姿勢に近く、著しい低血圧と頚部のコントロール不良によりそのままでは再開は困難であった。主治医や家族と共に現状でリフト移乗が可能な姿勢の確認をおこなった結果、仰臥位で水平に近く、頭頸部に無理な屈曲を強いらない姿勢であれば可能との結論となった。直接本人で試行ができなことから、事業所内スタッフ間で吊り具の調整方法や手順の確立を図った。結果として脚分離フルサイズ吊り具で水平位に近づくよう長さを調整し、ネックサポートの使用で頸部への負担軽減を図った。また、リフトで吊り上げた際の吊り具の張力が足側へ偏重することを防止するために、両膝窩部にクッションを入れ屈曲位保持させた。H18.1から母親とともに症例への試行を実施し良好な結果となった。その後、訪問時に母親への吊り具装着、操作方法の指導を継続し、H18.3には母親一人でも操作可能となり、ストレッチャーへの移乗や訪問入浴へのリフト使用など生活内へ導入となった。
    【考察】
     リフトや吊り具等の福祉用具は、対象者の身体機能や用途に合わせ選定、調整、適応する段階付けが必要である。これらは症例の状態変化においても検討調整が繰り返し求められる。生活支援とはその対象者と福祉用具と環境を組み合せてプランニングすることであり、訪問リハビリテーションにおいて我々セラピストは生活の可能性を見出し、実現する役割が求められると考える。
  • ~関連職種との連携により目標達成~
    竹内 久美, 河添 竜志郎, 内田 正剛, 鈴木 圭, 田尻 美穂
    セッションID: 026
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     呼吸器装着者等の重度者の入浴は本人、介護者双方に負担も大きく、かつ安全性が低い方法で実施されていることが多い。今回、家族よりリフトを使用した入浴の希望があったが、訪問入浴事業者のみでの実施が困難だった。そこで安全で負担を軽減した入浴を関連職種の連携により獲得できた症例を経験し、その過程や役割について若干の知見を得たので報告する。
    【症例紹介】
     N.O氏、33歳男性、診断名:筋萎縮性側索硬化症(H16.6診断)、現病歴:H2年歩行困難、筋力低下が徐々に進行、H12呼吸不全となり気管切開、H15年人工呼吸器開始、同年呼吸停止し低酸素脳症発症し意識レベルJCS300の寝たきり状態となっていた。
    【経過】
     家族はベッドサイドでのリフト移乗と、訪問入浴時の安全と介護者の負担軽減からリフト使用を希望していた。そこで訪問リハビリテーション時、状態悪化により使用しなくなった居室のリフトを使い、ベッドサイドでのリフト操作方法、手順を検討し方法を確立した。次に、入浴について主治医からリフト使用での入浴許可を受け、サービス担当者会議を開催。リフト使用での居室内での訪問入浴を目標に試行を重ねた。しかし、訪問入浴A事業者は「危険」「時間がかかる」等を理由に受け入れ困難であった。家族はリフト使用での入浴に協力してくれるB事業者を探しH18.7.28にサービス担当者会議を開催し我々の提案した入浴方法(手順表配布)を説明した。B事業者よりリフト使用経験がなく、リフト操作や手順に不安があるため協力依頼があり、毎週訪問入浴時に同行訪問し指導を行った。入浴を進めるに当たり(1)頚部の安定性確保(2)浴槽内での身体のズレ防止という課題が挙げられた。これらは試行を重ねる中で関連職種が意見交換を行い検討の結果課題解決が図れた。H18.8.29一連の入浴方法が確立し、B事業者のみで実施可能になったため同行訪問を終了した。
    【考察】
     今回、家族や実際に入浴を実施する訪問入浴事業者からの依頼に対し、関連職種が専門性を生かした技術を出し合った結果、リフト使用での入浴が獲得できた。このことから特に質の向上を図る上においては導入の段階から習得、再評価までの連携が重要性であることを再認識した。
  • 上川 浩樹, 寺田 和彦, 中川 浩, 上川 優子, 渡邉 真由美, 太田 裕香, 吉田 大輔, 林田 健, 川原 春香, 宮崎 麻衣子, ...
    セッションID: 027
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     ホットパック(以下HP)は,伝導熱を利用した物理療法の中で最も利用頻度が多く,伝導法としては湿熱と乾熱の2つに分類される。湿熱は,生体への熱伝導率が乾熱より優れているため,当院でも治療の前処置などの目的で湿熱を用いている。しかし,湿熱は,水分の気化などの要因によりHP除去後の皮膚表面温度が乾熱よりも早く低下する。また,湿熱は使用するタオルの枚数も乾熱に比べ多いため,数量が多い場合,効率的な方法とはいいがたい。そこで,本研究は,簡易的な包装方法の湿熱HP(以下新HP)と従来のタオルのみで包装するHP(以下旧HP)の皮膚表面温度の変化を比較し,その有用性を検討することを目的とした。
    【対象】
     対象は,神経学的所見を有さない健常人21名(男性9名,女性12名)とし,平均年齢29.3±7.9歳,BMI22.7±2.3_kg_/_m2_であった。また,全対象者には,本研究の趣旨を説明し同意を得たうえで測定を実施した。
    【方法】
     旧HPのタオルは,7枚重ねとした。新HPは,ウレタン製の袋状カバー(鈴木医療器製ニューホットパックカバー)にHPを入れ,タオルを2枚重ねた。HPは,腹臥位の腰部の皮膚表面上に直接適用させた。測定時間は,5分安静後に20分間実施した。皮膚表面温度は,L2/3の最長筋上をThermometerと62MINI IR Thermometerを用いて測定した。測定値は,2分毎にHPを当てている状態で読み取った。また, HP除去後も2分毎に10分間継続して測定した。統計学的分析には,対応のあるt検定,対応のないt検定を用い,危険率5%未満をもって有意とした。
    【結果】
     HP除去後から10分後までの皮膚表面温度の低下は,新HP39.0±0.6℃,35.8±0.9℃に比べ旧HP38.8±1.0℃,35.5±1.0℃が有意に低下していた。新HPは,安静時34.8±0.7℃と除去10分後35.8±0.9℃の皮膚表面温度に有意な差を認めた。新HPと旧HPの適用時20分間の皮膚表面温度変化においては,有意な差は認められなかった。
    【考察】
     新HPと旧HPの適用時温度と皮膚表面温度の経時的変化を調査し,その有用性を検討した。その結果,新HPは,旧HPに比べ除去後から10分後の皮膚表面温度が有意に高く,温熱効果がより継続していることが考えられた。HP適用時は同等の温熱効果であったが,新HPは皮膚表面温度の観点から,除去後時間が経過した場合でも温熱効果を有していたと考えられた。しかし,今回は皮膚表面温度の変化のみの検討であったため,今後は末梢血流量などの変化も検討する必要がある。
  • 竹村 仁, 増田 順城, 高橋 祐子, 竹中 隆一
    セッションID: 028
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     肺リンパ脈管筋腫症(肺LAM:pulmonary lymphangioleiomyomatosis)は若い女性に発症し、予後不良で呼吸不全が進行すれば肺移植の適応となる疾患である。今回、肺LAM患者に呼吸リハビリテーションを行った結果、肺機能・運動耐容能の改善は認めなったが、患者のQOL向上と運動耐容能が維持できたので報告する。
    【症例紹介】
     34歳、女性。診断名#1 肺LAM、#2 慢性呼吸不全、#3 後腹膜リンパ腫、#4 腎血管筋脂肪腫
     現病歴:2004年3月、犬の散歩中に強い息切れを自覚、近医受診し胸部レントゲンで気胸を指摘されA病院に入院となる。経過と胸部CTにて#1と診断される。気胸が改善され3月末に退院。5月よりA病院の外来にてホルモン療法施行される。その後、自宅で過ごしていたが、呼吸リハ目的にて2006年4月に当院入院となる。既往歴・家族歴:特記事項なし、喫煙歴:なし、粉塵暴露歴:なし
    【初期評価(2006年4月)】
     身長 159cm、体重 50kg、BP 123/93mmHg、HR 74回/分・整、SpO2 93%
     筋力:握力 19kg/21kg、大腿四頭筋4、ROM:FFD -18cm、胸郭拡張差5cm(剣状突起部)、呼吸機能:MRCグレード4、VC 3.05L(104.5%)、TV 0.62L、FEV1.0 1.15L、%FEV1.0 41.2、FRC 2.63L(116.4%)、RV/TLC 36.9%(151%)、DLco 6.4ml/min/mmhg
     6MD:280m (room air 休憩2回)、息切れ感修正Borg6、SpO2 85、HR 125
     CPX:PeakVO2 10.1ml/kg/min
     千住のADL:87点(移動・階段にて減点)、基本的ADLは自立しているが、歩行時の息切れ感が著明
    【リハビリ内容】
     呼吸体操やストレッチポールによる柔軟性改善、上下肢筋力強化、修正Borg4レベルでの有酸素運動(エルゴメータ、トレッドミル)を施行した。また全8回の呼吸リハ教室に参加した。
    【退院時評価(11日間の入院でリハは9回実施)】
     FFD 14cmに改善。6MD:245m (room air 休憩2回)Borg4、SpO2 89、HR 120
    【考察】
     呼吸機能検査で閉塞性換気障害、GOLDの分類でStage III(重症)であった。短期入院による呼吸リハでは肺機能や運動耐容能に有意な改善は認めていない。しかし、退院時には「今回の入院で医療スタッフをはじめ、同病室の方、他の呼吸器疾患の方と触れあえた事で、自分が引きこもり、活動的でないことが良くわかった。私はまだまだいろいろなことが出来るし、積極的に生きていかねばいけないと感じた」と述べられており、うつや生活満足度などのポイントも改善されている。さらに、6ヶ月後のCPXにてPeakVO2 10.8ml/kg/minと運動耐容能は維持されている。呼吸リハにより必ずしも呼吸機能や運動耐容能を改善できなくても、ピアカウンセリングが行われ、教室や運動の体験にて自分の体力の把握、生きる意欲の向上などが図れている。このことは、呼吸リハの大切な一面ではないかと考える。よってLAM患者に対する呼吸リハは、より発症早期において有益であると考える。
  • 瀬戸山 雄介, 福田 隆一, 山下 真司, 中畑 敏秀, 宮崎 麻理子, 福田 秀文, 了徳寺 孝文, 工藤 貴裕, 永濱 智美
    セッションID: 029
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     大腿骨頚部骨折術後において、浮腫が関節拘縮、感覚障害など二次的に機能障害を起こす要因となり、理学療法を進める上で問題となることが多い。そのアプローチとしてパンピングを用いる事は多いが、良好な結果を得られないことも経験する。そこで今回大腿静脈に通過障害があることを仮定し、その阻害因子と成りうる筋に対してアプローチを行い、若干の知見を得たのでここに報告する。
    【対象】
     大腿骨頸部骨折術後3週以上経過しており明らかな心疾患、腎疾患がなく下腿に浮腫がみられるとした。大腿静脈通過障害にアプローチを行った群(以下アプローチ群)に関しては6名10脚、内訳は男性1名、女性5名、平均年齢85.6±7.8歳。 コントロール群は4名7脚、内訳は女性4名、平均年齢89.5±4.4歳であった。
    【方法】
     アプローチ内容に関して、アプローチ群は、腸腰筋、恥骨筋、内転筋を中心に内転筋管周囲筋及び鼠径部周囲筋に対してストレッチ、マッサージ、ストレッチ、筋収縮の順に行った後、足趾及び足部パンピングを実施した。コントロール群は足趾及び足部パンピングのみ実施した。浮腫の評価は下腿周径(最大、最小)、足部周径(第一中足骨骨底と舟状骨を結ぶ周径)を測定。測定時間はアプローチ前の午前9時とアプローチ後の翌日午前9時とし、アプローチ実施時間に関しては午後2時とした。データ処理に関しては、両群における改善脚数の割合及び周径の改善率を算出した。改善率に関しては、対応のないt検定を用いてデータ処理を行った。
    【結果】 
     前日と比較して改善がみられた脚数の割合は、下腿最大周径においてアプローチ群では70%(0.5センチ~1.5センチ改善)であり、コントロール群では14%(0.5センチ~0.8センチ改善)であった。下腿最小周径において、0.5センチ以上改善した脚数の割合はアプローチ群で50%、コントロール群で0%であった。足部周径において、0.5センチ以上改善した脚数の割合は、アプローチ群で30%、コントロール群で14%であった。また下腿最大部周径におけるアプローチ群とコントロール群の改善率の比較において、有意差が認められた。(P<0.05)
    【考察】
     アプローチを行った方が下腿浮腫は改善する傾向にあった。これは大腿静脈が内転筋管、大腿三角、血管裂孔を通過しており、周囲の筋(内転筋管周囲筋、鼠径部周囲筋)から圧迫を受け、循環障害を起こす可能性が示唆された。また内転筋管・鼠径部周囲筋に関しては、術後の外転筋不全による内転筋の代償や、長時間の臥床・座位による適応性短縮などにより機能不全を生じやすい。これに対して内転筋管・鼠径部周囲筋にアプローチを行うことで大腿静脈通過障害が改善したことが、下腿浮腫の改善につながったと考えられる。
  • 清水 友美子, 岡村 美穂子, 川俣 幹雄, 森下 志子, 前本 英樹, 平野 浩二
    セッションID: 030
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     臨床において、ギャッジアップ座位時の崩れた姿勢はよく見かける場面である。このような姿勢の継続は、脊柱の屈曲増加、肺活量や咳嗽力低下などさまざまな影響を及ぼすと報告されており、実際、崩れた姿勢のままムセた場合の喀出力低下を危惧される。そこで今回、崩れた姿勢による体幹屈曲姿勢を円背と仮定し、円背指数を用いて、円背角度の変化により肺機能にどのような影響を及ぼすのかフローボリューム曲線を用いて比較・検討を行った。
    【対象】
     本研究に同意した脊柱に著明な変形を有さず、呼吸器疾患の既往のない健常人17名。内訳は男性10名、女性7名。平均年齢は23.8±2.8歳。
    【方法】
     測定条件は、体幹固定装具を用い、安静位と3つの円背角度の4条件で比較した。円背指数は、軽度後彎(円背指数5)、中等度後彎(円背指数15)、重度後彎(円背指数25)を設定した。円背指数は、第7頚椎棘突起と第4腰椎棘突起を結んだ線をL、Lから彎曲の頂点までの距離をHとし、H/L×100として算出した。各条件下を立位にて実施し、安静位においては自然肢位とし、円背においては骨盤後傾位、股関節及び膝関節屈曲位で行い、全ての条件下において顎は引いた状態で行った。呼吸機能はスパイロメーターを使用し、FVC(努力性肺活量)、FEV1.0(1秒量)、FEV1.0%(1秒率)、PEFR(ピークフロー)を測定した。統計処理には多重比較検定を用い危険率5%未満を有意とした。
    【結果】
     FVC、PEFRにおいて、安静位に比べ円背角度を変化させた全ての条件下で有意に減少した(p<0.05)。FEV1.0、FEV1.0%において有意差はなかった。円背群間で比較したPEFRにおいて、軽度後彎と重度後彎のみ有意に減少した(p<0.05)。円背が重度になるにつれFVC、PEFRが低下傾向を示した。
    【考察】
     円背姿勢により呼気筋出力低下等の要因が起こり、円背群では全ての条件下においてPEFRが有意に減少した。また、円背が重度になるにつれFVC、PEFRが低下する傾向が示された。このことから、臨床で見られるギャッジアップ座位時の崩れた姿勢や円背を有する高齢者がムセなどを起こした場合、喀出力低下を招く恐れがあると考えられる。今後、高齢者の咳嗽力低下に対し円背姿勢予防・改善とともに呼吸機能向上を視野に入れ、どのようにアプローチするのか検討していきたい。
    【まとめ】
    1.姿勢変化が呼吸機能に与える影響について、円背角度の変化によりどの程度影響を及ぼすのか比較・検討した。
    2.安静位と比較した各条件下全てにおいてFVC、PEFRが有意に減少した。
    3.円背が重度になるにつれFVC、PEFRが低下傾向を示した。
    4.円背群では、姿勢改善、呼気筋出力向上に努めることが大切と思われた。
  • ~機能解剖学的視点からのアプローチ~
    山崎  博喜, 古田 幸一
    セッションID: 031
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     半月板損傷は一般的に損傷の部位、程度、形態などの違いにより保存療法、縫合術、切除術などが選択される。今回受傷機転が明確でない半月板損傷患者の保存的治療に対して、機能解剖学視点から疼痛の軽減、関節可動域改善を目的とした理学療法アプローチを行った。
    【症例紹介】
     54歳女性、身長158cm、体重62kg、BMI:24.0(普通) X線所見FTA 175° 診断名:右内側半月板(以下MM)損傷 MRI所見 MM後角損傷 平成11年の交通事故で右膝に違和感出現、その後昨年8月より疼痛増強の為、当院受診し理学療法開始となる。
    【経過及び考察】
     理学療法開始時はMM損傷により関節水腫がみられ、疼痛や膝関節可動域制限が出現した。関節水腫が貯留することで、関節包は柔軟性を失い、関節軟骨の二次的障害の原因となる。そこで、関節包の柔軟性向上や関節軟骨保護の目的で、関節水腫と滑液をシェイクするように大腿脛骨関節(以下FT関節)のmobilizationや膝蓋上包リリースを施行した。2週間後、関節水腫はほぼ吸収され、動作時痛の程度もVAS8/10からVAS5/10と軽減し、膝関節屈曲125°と改善した。しかし、膝屈曲最終域での疼痛が腓腹筋内側頭と膝窩部、また圧痛が大腿二頭筋短頭、ヒラメ筋に残存した。腓腹筋内側頭周辺には幾つかの滑液包が存在し、滑液包炎が起り易い。また内側頭は外側頭と比較して筋腹が厚く、筋長が長い。さらに膝屈曲時FT関節の内側関節面接点は外側関節面接点より前方にある為大腿骨内側後方に間隙ができ、腓腹筋内側頭や関節包は挟まれやすい。治療は、screw-home movementを誘導する為、足関節内反位でのquarter squatを行った。その後roll backを考慮して、膝窩部にタオルを挟み、ROM-exで最終可動域を目指した。しかし、膝窩部の痛みは残存したことから疼痛部位を再考し、膝窩筋に着目した。膝窩筋は半膜様筋、ヒラメ筋や大腿二頭筋短頭と筋連結がある。MMは、形態的に運動性が乏しく、筋に依存した運動が必要となり、筋スパズムの影響を受け易い。国中によれば、膝窩筋は筋走行から初期屈曲域と最大屈曲域で伸張されたとしていることからも、症例の疼痛は膝窩筋の伸張痛と推測した。その為膝窩筋が伸張される初期と最終屈曲域での低負荷等尺性下腿内旋運動を施行した。最終評価時、日常生活の痛みはVAS2/10、膝屈曲可動域140°と改善された。
    【まとめ】
     機能解剖学的視点で評価・治療を行い疼痛軽減、ROM改善が図れた。しかし、MM損傷起因と考えられる疼痛は残存しており、今後二次的障害を引き起こさない様、継続的に追跡し、理学療法の効果検証を試みたい。
  • ~姿勢制御に着目して~
    桑野 敬子, 豊田 彩, 古田 幸一
    セッションID: 032
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     人工股関節全置換術(以下THA)は、除痛・可動域改善を目的に施行される。今回術後に脱臼を合併し、疼痛、股関節機能不全、姿勢制御困難となった症例に対してのアプローチを行ったので以下に報告する。
    【症例紹介】
     83歳女性。右大腿骨頭壊死症(H18/11/21THA施行)、両膝OA 身長:140cm 体重:42kg BMI:21(普通)手術経過:術後3週目、明らかな転帰なく脱臼。麻酔下にて整復。Need:両手で家事をしたい。
    【理学療法評価】
     1.ROM(R/L):股関節屈曲70/100・外転20/20・内転0/10・外旋0/10 2.筋力:腸腰筋2・中殿筋3・外旋筋2 3.頚体角:135°/125°4.疼痛:運動時PSIS~大腿前面、大腿内外側面 5. 姿勢:坐位―仙骨支持 立位―円背を呈し、体幹右回旋右側屈に対し骨盤左後方回旋・股関節内旋位。下半身重心は正中線より左前方、上半身重心は右後方偏位。上肢支持なしでの静的立位保持困難。
    【経過及び考察】
     本症例において、上肢支持なしでの静的立位保持困難な原因として、股関節機能不全、支持基底面内での姿勢制御困難と推察した。福井らは身体平衡のコントロールには身体重心の制御が必要であり、身体重心が存在する骨盤をコントロールすることは最も重要であると報告している。前述した原因を改善する為、骨盤に着目しアプローチを展開した。今回、臥位―坐位―立位と、支持基底面を順に狭くし、重心の位置を順に高く変化させることで、より複雑な姿勢制御機構の獲得を図った。臥位では、不良姿勢アライメントから身体接触面積が非対称であるため、全身が緊張し、定位出来ていない状況であった。よってエアスタビライザーを非支持面に置くことで、固有感覚受容を促し身体のリラクゼーションを図った。これにより股関節周囲の筋緊張が緩和し、ROM改善に繋がった。次に支持基底面を狭くした坐位での骨盤前後傾・側方運動を行った。仙骨支持となっていることから坐骨部にエアスタビライザーを置くことで股関節での代償を制御し、腰椎―骨盤の連動した動きを促した。これにより右後方に偏位した上半身重心の左前方への移動の獲得を図った。さらに身体重心位置が高くなる立位にて、骨盤後傾位から前傾運動を行い、支持基底面内での上半身重心のコントロールを促した。骨盤に着目しアプローチを展開していく中で上肢の支持なしでの立位保持は可能となった。
    【まとめ】
     現段階では動的立位獲得には至っておらず、ADL動作に繋げることが出来ていない。今後、本症例の動的立位において下半身重心コントロールによる姿勢制御機構の獲得も必要であると考えられる。
  • 那須 千鶴, 津田 拓郎, 吉村 和代, 曽田 武史, 高畑 哲郎, 中川 浩, 大石 賢, 矢倉 千昭
    セッションID: 033
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     筋硬度計は筋の弾性や筋緊張の評価として、針治療やストレッチングの効果判定などに用いられているが、測定者の知識や経験,筋の走行および形状などによって測定値がばらつく可能性がある。しかし、筋硬度計における信頼性を検討した研究は少ない。そこで本研究では、筋硬度計における筋硬度測定の測定者内および測定者間の測定値の信頼性について検討した。
    【方法】
     対象者は、腰部および下肢に整形外科的疾患、しびれや感覚障害などの神経症状のない健常成人男性8名16脚(年齢23.4±5.0歳)であった。筋硬度計はNEUTONE (TRY-ALL製)を用いた。測定者は、臨床経験1年目の理学療法士(測定者A)、臨床経験3年目の理学療法士(測定者B)とし、測定者Aは測定者Bから筋硬度計の使用方法を習い、1日30分間練習を1週間行った。測定筋は両側の大腿直筋(RF)と大腿二頭筋長頭(BF)とし、それぞれ起始部から停止部までの50%の部位で測定した。測定姿勢は、大腿直筋を背臥位、大腿二頭筋を腹臥位で測定し、大腿二頭筋測定時は足部をベッドから出し、下肢が中間位となるようにタオルで調節を行った。また、測定値は記録者が読み取って記録し、測定者には知らせないようにした。測定は,同日に同一環境で行い,各部位を3回測定した。再測定は、対象者に過剰な運動や多量のアルコール摂取を禁止して、翌日に実施し、極力前日と同じ時間帯に行った。統計解析はSPSS 10.0 Jを使用し、筋硬度の3回の測定値(連続測定)と再測定の信頼性は級内相関係数(1, 1)、大腿直筋と大腿二頭筋における筋硬度測定の信頼性は級内相関係数(3, 1)を用いた。
    【結果】
     連続測定では、RFは測定者A、Bともに良好な信頼性があり、BFは測定者A、Bともに中等度の信頼性があった。再測定では、RFは測定者A、Bともに良好な信頼性があったが、BFは測定者A、Bともに信頼性が低かった。測定者A、B間においては、RFは良好な信頼性があったが、BFは信頼性がほとんどなかった。
    【考察】
     臨床経験年数、筋硬度測定の経験に関わらず、RFは良好な信頼性があったが、BFの信頼性は低かった。RFは深部に大腿骨があり、筋硬度計を垂直に押して測定するので、安定した値が得られやすい。しかし、BFは内斜方向に大腿骨があり、筋硬度計を押す方向が垂直方向にずれると外側広筋が受けになるため、安定した値が得られにくいと推測される。筋硬度計の測定には、正確な筋骨格の触診技術とともに十分な筋硬度の測定練習が必要であると考えられる。
  • ~区画仮説に関連して~
    久保 喜照, 林田 真一郎, 加藤 克知
    セッションID: 034
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     中枢神経系には、単一骨格筋内の複数の区画において、それぞれ独立に運動単位の活動の強さを制御する能力がある。この現象は、筋の「機能分化」と呼ばれ、ひとつの筋がその区画内で運動単位の選択的な活動を通して、色々な力とベクトルを生み出すことを意味している。この現象の研究に基づいて、神経と筋の間の対応関係を説明するPartitioning Hypothesis(区画仮説)が提唱されている。本研究では、区画仮説を解剖学的側面から検討するために、三角筋とその支配神経である腋窩神経を対象として、神経の走行および筋内分布を詳細に調査した。
    【方法】
     長崎大学歯学部解剖実習に供されたホルマリン固定解剖体12体の三角筋14側を用いた。なお、三角筋は、腕神経叢後神経束から分岐直後で切断した腋窩神経とともに一括して摘出した。腋窩神経の走行とその筋内分布についてスケッチと写真による観察を行った。また三角筋各区画の筋枝に含まれる神経線維を、オスミウム法による髄鞘染色を用いて検索した。
    【結果】
     腋窩神経の走行については、腋窩神経の本幹は、まず後枝と前枝に分かれ、後枝は小円筋、三角筋後部への筋枝および上外側上腕皮神経に分かれる。前枝は三角筋内面のほぼ中央を前方に向かって横走し、その途中で中部への筋枝を分岐し、残りの枝は前部への枝を扇状に出している。三角筋の前・中・後部(区画)に入る筋枝は、複数の筋区画にまたがって分布することはなく、筋枝と筋区画の間に特定の対応関係が認められた。さらに各区画内の神経は、それぞれ筋頭部(起始側)と尾部方向(停止側)へ向かう独立した枝を出して分布しており、上下方向の新たな区画の存在が示唆された。
    【考察】
     今回の研究では、腋窩神経の三角筋内分布を解剖学的に調査し、三角筋の前・中・後部各部分(区画)における神経と筋の対応関係を検討した。神経の筋内分布パターンの結果より、前部・中部・後部の前後方向の区画に加えて、各区画の筋頭部および尾部方向に新たな上下方向の区画が存在する可能性が示唆された。また、理学療法における治療的電気刺激や表面筋電図学的な分析において、神経筋区画に対応した最良のポイントを導き出すことの重要性が示唆された。今後、区画仮説で述べられている、「中枢における神経細胞の局在および末梢における神経線維の分布と、被支配筋の局部(区画)との一定した対応関係」が、さらに詳細に分かってくれば、体表面からの詳細な運動点の位置の決定が容易になる。今後、三角筋各区画における運動終板の数や分布、さらには他の形状をもつ筋においても同様の調査・検討が必要である。
  • ~超音波診断装置を用いて~
    大城 有騎, 並里 留美子, 仲西 孝之
    セッションID: 035
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     腰痛疾患に対する運動療法として腹筋運動が多く採り上げられているが、その方法は様々で、指導する際に目的とする効果が得られているのかと疑問に思うことが多い。腰痛などの体幹の痛みは、体幹の深層筋である多裂筋や腹横筋、横隔膜、骨盤底筋群の機能低下により引き起こされると言われている。その中でも腹横筋は、動作に先行して予測的に姿勢を制御するなど体幹の安定性に重要な筋肉である。また、腹部内臓を圧迫し、腹腔内圧を高め、横隔膜を押し上げることで強制呼気に作用している。本研究の目的は、腹筋運動時の呼吸方法の違いにより腹横筋の活動に変化があるのかを、非侵襲的に評価が可能な超音波診断装置を用いて検証することである。また、その結果から、腹横筋の活動に効果的な腹筋運動が示唆されたので報告する。
    【方法】
     対象は、疾患を有しない健常者10名(男性5名、女性5名、平均年齢は25.3±3.3歳)とし、検査肢位は、ベッド上背臥位、胸上にて手を組んでもらい、両膝は屈曲位で本人が最も楽な角度とした。計測部位は、腋下線上の肋骨下端から2_cm_下方・臍方向へ2_cm_の部位にプローブ端を設置し、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の3層構造を超音波診断装置(TOSHIBA製 LOGIQ TM400 739Lプローブ)にてイメージングした。計測方法としては、モニタリングされた腹横筋筋厚を3箇所計測し、その最大値を採用した。そして、安静吸気時の腹横筋筋厚を基準とし、呼吸方法の異なる1)胸式呼吸最大吸気にて息を止め腹筋運動、2)腹式呼吸最大吸気にて息を止め腹筋運動、3)腹式呼吸最大呼気を行いながらの腹筋運動の3種類の腹筋運動課題を行い、腹横筋筋厚の変化率を算出した。また、それぞれの課題間に有意差があるかをWilcoxon signed-ranks testを用いて検定を行い、有意水準1%未満とした。
    【結果】
     安静吸気時の腹横筋筋厚に対する、各課題の腹横筋筋厚の変化率平均は、1)104.4±13.9%、2)102.5±8.6%、3)170±25.9%で、3種類の課題の変化率群を比較すると1)と2)には有意差が認められず、1)と3)・2)と3)の課題間に有意差が認められた(P<0.01)。
    【考察】
     今回、超音波診断装置を用いて、腹筋運動時の呼吸方法の違いにより腹横筋の活動に変化があるのかを比較・検討した。その結果、安静吸気時の腹横筋筋厚に比べ、1)・2)の変化率は乏しく、3)の変化率が著明に増加し、1)と3)・2)と3)の課題間に有意差が認められた。そのため、最大吸気にて呼吸を停止しての腹筋運動に比べ、最大呼気を行いながら腹筋運動を実施したほうがより腹横筋の活動を促進できることが示唆された。
  • ~筋力・ROMの回復過程を中心に~
    時枝 美貴, 田代 泰隆, 三浦 裕正, 河野 一郎, 藤吉 大輔, 砂川 みちる, 上島 隆秀, 藤野 英次郎, 松田 秀一, 岡崎 賢, ...
    セッションID: 036
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     最小侵襲手術(MIS)は組織損傷、術後疼痛を軽減するだけでなく術後の機能回復、小切開による整容面での改善をもたらすと言われている。当院でも2004年11月よりMIS-TKAが導入された。今回MIS-TKAとstandard TKAの術後経過の比較検討を行ったので報告する。
    【対象】
     2004年11月~2007年1月の間に当院で施行されたTKAのうち、術前から術後3週にかけての定期評価が可能であったMIS-TKA(以下MIS群)20例23膝とstandard TKA(以下standard群)24例30膝を対象とした。疾患はすべて変形性膝関節症で全例女性であった。平均年齢MIS群76.6歳、standard群74.8歳、術前JOAスコアMIS群51、standard群52.3、術前ROMの平均はMIS群屈曲123°伸展-6.5°、standard群屈曲122°伸展-8.8°で両群に有意差はなかった。平均の皮切長はMIS群8.8cm、standard群13.8cmであった。
    【方法】
     術前と、術後1週目、2週目、3週目に膝関節伸展および屈曲の等尺性筋力を測定し、体重比(%)を算出した。同様に疼痛の評価を術前から術後1週毎にVisual analog scale(VAS)にて行った。ROMは術前と退院時の可動域をそれぞれ測定し、手術から膝関節屈曲90°及び120°獲得に要した日数を記録した。歩行能力は一本杖歩行獲得に要した術後日数を記録した。以上の項目を、対応のないt検定を用いて両群を比較した。
    【結果】
     筋力は伸展、屈曲ともに平均値でMIS群がstandard群を上回り、特に術後1週目(P<0.01)及び2週目(P<0.05)の伸展および屈曲筋力で有意差が認められた。VASではMIS群の術後平均値はいずれもstandard群よりも下回り、術後1週目(P<0.05)で有意差が認められた。一本杖歩行獲得(P<0.005)もMIS群で有意に早かった。ROMは退院時ROMの平均はMIS群屈曲123°伸展-3°、standard群屈曲119°伸展-3.2°で両群間に有意差はなかったが、90°屈曲獲得(P<0.01)、120°屈曲獲得(P<0.01)日数ではMIS群が有意に早かった。退院時に120°を獲得した割合はMIS群で69.6%、standard群で66.7%であった。
    【考察】
     MIS-TKAではstandard TKAに比して術後早期からの筋力回復と可動域の改善が得られた。さらに、疼痛が軽度であったため早期に一本杖歩行を獲得したと考える。MIS-TKAは皮切長の短縮による組織損傷の軽減と膝伸展機構の温存により、疼痛の軽減、術後早期からの機能回復を可能にしたと推察される。今回、術後早期からの比較検討を行ったが、今後は退院後も含めた調査と長期的機能予後の検証を行いたい。
  • 山浦 誠也, 田中 創, 矢野 雅直, 本村 優季, 森澤 佳三(MD), 副島 義久(MD)
    セッションID: 037
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     臨床において股関節術後に下肢機能軸の偏位を認める症例が多々見受けられる。この状態で荷重・歩行訓練を進行していくと様々な部位に二次的な障害を招いてしまう恐れがある。今回、股関節術後に術側下肢のアライメント不良を呈する症例を経験し、その原因追求と不良アライメントの改善に重点をおき理学療法を試みたので以下に報告する。
    【症例呈示】
     84歳、女性。
    診断名:左大腿骨頚部外側骨折(γネイル施行)
     安静臥位における術後左下肢アライメントは股関節軽度屈曲‐過内旋、膝関節軽度屈曲‐外反、大腿骨に対する相対的な下腿の外旋を認め、距骨下関節は過度の回外位を呈していた。
    【訓練内容】
     a腹筋群、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、外側広筋、内転筋群、腓骨筋群のバランス調整b股関節外旋可動域の拡大と外旋筋収縮訓練c距骨下関節回内可動域の拡大
     上記a~cを荷重・歩行訓練を施行する前に実施。また、b,cにおいては自主訓練の指導を行った。
    【結果】
     安静臥位における左下肢アライメントは股関節の過度な内旋、膝関節の屈曲・外反、大腿骨に対する相対的な外旋、距骨下関節の過度な回外が改善された。
    【考察】
     当院におけるγネイル施行の際、術中肢位はベッド上仰臥位であり整復位を確保する為股関節内旋位、足部は固定され距骨下関節は回外位を強いられる。本症例が呈する下肢の不良アライメントは上記した術中の下肢アライメントと類似する事から術中肢位の関与が示唆された。また、徒手的に大腿骨を外旋方向、距骨下関節を回内方向へ操作することにより下肢アライメントの改善が観察されることから股関節外旋・距骨下関節回内を促すような訓練を重点的に行った。
     距骨下関節回内、股関節外旋は歩行時の踵接地において重要な役割を担っており両者の運動制限はロッカー機構、膝関節中心靭帯安定化機構の破綻をきたしてしまい様々な部位へ二次的な障害を惹起する事が考えられる。
     今回の症例より股関節術後の術側下肢のアライメント不良はその要因の一つに術中肢位が挙げられ治療を行った結果改善することができた。股関節術後二次的な障害の発現を防ぐためにも術側下肢の不良アライメントの改善は重要視すべき点ではないかと考えられる。
  • ~重心と骨盤帯の動きの変化に注目して~
    小松原 佳苗, 尾形 かおり, 松田 健志
    セッションID: 038
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、ROM制限や疼痛が強く効率の良い動作が困難な症例を経験し、重心の位置や、骨盤帯に着目した理学療法を行った。以下に報告する。
    【症例紹介】
     年齢:80歳代 性別:男性 介護度:経過的要介護診断名:両変形性膝関節症(以下膝OA) 既往歴:左大腿骨転子部骨折 ニード:歩行時の両膝関節疼痛軽減レントゲン所見:両膝OA進行度(Grade):Grade 4
    【理学療法評価】
     疼痛:歩行時、両膝膝蓋骨下部に鈍痛あり。VAS(R/L):(5/3)ROM(R/L):膝関節伸展(‐5/-10)、屈曲(105/110)、股関節屈曲(110/110)・内旋(15/5)・伸展(0/0) 筋力(R/L):腸腰筋(3/3)、大殿筋(3/3) 荷重バランス(R/L):55.1%/44.9%FTA(R/L):175°/165° CS30:17回、Time up &Go(以下TUG):12.48秒、片脚立位(R/L):20.95秒/6.2秒 歩行:左右への体幹動揺がみられる。(右>左)また、右立脚時に比べて左立脚時、荷重側への骨盤の動きが少なくなっており、右立脚期に比べ左立脚期が短くなっている。 立ち上がり:体幹右回旋・右側屈位。Push upした後、膝関節伸展させている。体幹は前傾し、立ち上がる際、股関節と膝関節の角度増加が不均等。静止肢位:頭部・肩甲帯・骨盤帯は正中より右偏位
    【問題点】
     #1. 運動時の両膝痛(右>左)、#2.動作時重心右偏位、#3. 腸腰筋・殿筋群筋力低下、#4.立ち上がり動作能力低下
    【理学療法プログラム】
     #1.ROM訓練、#2.消炎鎮痛、#3.骨盤前後傾運動、#4.パワーリハ・スリング・徒手を用いての筋機能改善運動、#5.運動重心正中化運動
    【経過】
     右側優位のアライメントに対して、骨盤帯へのアプローチと、左殿筋群と左下肢への荷重アプローチを実施。歩行時の両膝痛VAS(R/L:3/2)。ROM膝関節伸展(0/‐5°)、股間節屈曲(120°/120°)と改善。立ち上がり時では、骨盤前傾が認められた。静的、動的アライメントにおいても座位・立位において、正中化が認められた。腸腰筋・大殿筋は(4/4)と改善した。
    【考察】
     本症例は、長期にわたり膝OAが進んでいる為、膝自体の改善は難しいが、骨盤帯の動きや股関節の機能を改善する事で重心が正中化され、歩容改善へつながるのではないかと考え、アプローチを行なった。
     経過の中で、左股関節周囲筋筋力が向上した。また、動作時の右偏位も重心が正中化され、右膝関節痛も軽減している。立位時の荷重バランスにおいても、右が46.7%、左が53.3%と左側への荷重が初期時より改善した。以上のことから、骨盤や股関節に対するアプローチは有効であったと考えられた。
  • 羽田 清貴
    セッションID: 039
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     仙腸関節は、重力と床反力の相互の外力の分岐点であり、力の伝達として重要な部位である。そのため体幹機能や下肢機能低下により、仙腸関節に力学的ストレスが生じると考えられる。今回、腰椎椎間板ヘルニアの患者様を担当させていただき、体幹機能及び股関節機能低下による荷重伝達能力の低下により仙腸関節に力学的ストレスが生じ疼痛が生じていると考え、理学療法アプローチを行った結果、若干の改善が得られたためここに報告する。
    【症例紹介】
     25歳、女性。診断名:腰椎椎間板ヘルニア、現病歴:H19年4月2日の夕方より、特に誘因なく腰痛増強し、起立、歩行困難となり当院に入院。画像所見:レントゲンは矢状面像で腰椎前彎減少、前額面像で腰椎は左凸、胸椎は右凸。MRIはL4、5間でヘルニア脱出。
    【理学療法評価】
     疼痛:立位や歩行において、腰部から殿部にかけてVisual Analogue Scale(以下VAS)で10/10(左>右)で立位保持、歩行困難であった。圧痛は腰部から左仙腸関節付近にあった。自動的下肢伸展挙上運動(以下ASLR)では、左下肢挙上時に左側骨盤の後方回旋と疼痛が生じた。ヘルニアに起因した症状は認めなかった。左脊柱起立筋及び左大腿筋膜張筋にhypertonusを認めた。立位姿勢は、骨盤後傾位で腰椎前彎減少。右肩峰挙上位、右腸骨稜高位、脊柱は腰椎で左凸、胸椎で右凸のアライメントを呈し、上部体幹は右側変位。上半身重心は右前方変位。左片脚立位では、左寛骨の後方回旋、仙骨のうなずきが生じず、反対側の骨盤が下制した。歩行は骨盤側方移動が生じず左側への荷重困難。
    【理学療法アプローチ】
     呼吸による下部体幹の安定化訓練、骨盤帯アライメント改善訓練、股関節単関節筋訓練、アウターユニット機能改善訓練、坐位における骨盤正中化訓練。
    【結果】
     最終評価時、疼痛は歩行時痛が2/10となった。ASLRでは骨盤の後方回旋改善。立位姿勢は、骨盤前傾、腰椎の前彎改善傾向。上部体幹の右側変位は残存。左片脚立位において、左寛骨の後方回旋及び仙骨のうなずきが生じ、骨盤の水平化が可能となった。歩行において、荷重応答期の前額面上の骨盤の側方移動が生じ、左下肢の荷重が可能となった。
    【考察】
     本症例は立位及び歩行時に腰部から左仙腸関節部の疼痛を訴えた。荷重時や歩行時に左仙腸関節の閉鎖位が困難であり、仙腸関節の安定化を過剰に受動的要素に依存することで疼痛が出現していると考えた。その原因が、体幹機能低下及び股関節機能低下による荷重伝達能力の低下と考えアプローチした。その結果、下部体幹の安定性が改善し、姿勢アライメントが改善した。左下肢荷重時の左寛骨の後方回旋と仙骨のうなずきが生じるようになったことから、筋性の安定化システム及び関節面の安定化が図られ効果的な荷重伝達が可能となり、疼痛の軽減に至ったと考える。
  • 本田 晴彦
    セッションID: 040
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、急性腰痛を反復して引き起こす日常的に異常姿勢を呈した症例を担当した。石井は静止時での不良姿勢から日常の習慣的な運動ハ゜ターンを反映することは少なくなく、動的状態を推測するヒントになると述べている。本症例の姿勢・歩行動作分析において、疼痛回避での異常姿勢ハ゜ターン・骨盤傾斜に問題点を挙げた。そこで症例自身に姿勢フィート゛ハ゛ックと動作指導を行ったことで動作上での疼痛の軽減が得られたので報告する。
    【症例紹介】
     年齢:30歳代、女性
     診断名:腰部脊柱管狭窄症、筋・筋膜性腰痛症
     レントケ゛ン所見:L4-5間狭窄(+)
     職業:テ゛スクワーク(事務作業)
     腰痛の既往:平成18年6月に急性腰痛発症(起床時)。その後4回程度急性腰痛あり(起床時・立ち上がり時)。今回が5回目の発症。
    【姿勢・歩行動作分析】
     1.頚椎:伸展(前方突出)
     2.肩甲骨:内転・下方回旋、肩甲帯の伸展
     3.胸椎:後弯減少、腰椎:前彎減少
     4.骨盤:前傾、股関節:内旋・屈曲、膝関節:屈曲
     5.Heel Contactの不良と歩幅の減少、Heel Offの減少
    【問題点】
     1.異常姿勢ハ゜ターンを症例自身が正常ハ゜ターンと学習していること(疼痛への恐怖感)
     2.過剰な体幹後面のglobal muscleの筋緊張亢進
     3.腹筋筋力低下
    【フ゜ロク゛ラム】
     1.姿勢鏡・画像を用いての異常姿勢ハ゜ターンの認識
     2.姿勢鏡・画像を用いての正常坐位・立位姿勢の再教育
     3.動的セルフストレッチの指導(在宅・仕事中での自主練習も含む)
    【結果】
     1.坐位・立位姿勢の再認識の獲得
     2.不安の減少した動作の獲得(坐位からの立ち上がり)
     3.姿勢の改善に伴う歩行時の歩幅の増大と骨盤の側方動揺と回旋の出現
     4.FFDの拡大とリス゛ムの正常化
    【考察】
     福井は日常生活やスホ゜ーツ動作で、固有の運動ハ゜ターンを繰り返し続けていると、その運動の影響は構築学的変化をもたらす。また、関節間の関連動作を筋力検査などの個別検査と動作分析を結ぶ新たな位置付けのもとで評価しなければならないと報告している。外来リハヒ゛リテーションにおいて理学療法の評価・治療を行うにあたり、入院患者とは異なり、通院に関して時間的・頻度的問題を考慮する必要がある。その上、対費用効果をも得るためには、最良の満足した結果をだすためのスヒ゜ート゛が当然必要である。そのためには、疼痛に対する手技的治療も有効であるだろうが、姿勢や運動ハ゜ターンなどの関連動作を分析・把握し、その人の動作上での痛みの原因追求していくことが重要であり、このことが姿勢・動作上での腰痛再発の予防にも有効であると考える。
  • ~High Stiffness Areaに着目して~
    高木 庸平
    セッションID: 041
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脊柱不安定性は,日常生活動作における不良姿勢の繰り返し,或いは過度な負荷の蓄積に伴い出現すると述べられている.そこで今回,脊柱不安定性を有する症例を担当させて頂き,中枢部である上・下部体幹のForm-Force Closureに伴う運動連鎖に着目し,院内での早期アプローチによる二次的障害予防を検討した症例を報告する.
    【症例紹介】
     年齢:70歳代,身長:171cm,体重:70kg,診断名:頚椎症性脊髄症(保存療法),Needs:在宅復帰,X-P所見:(頚部)C4-6狭窄,不安定性有り,(腰部)L4-5狭窄疑い,社会的情報:要支援1,キーパーソン:息子・嫁
    【理学療法評価】 H19.2~H19.3
     1.ADL-T:BI90/100⇒100/100,2.立位アライメント:前額面(右肩甲帯前傾,肩下制,骨盤左回旋,左下肢支持),矢状面(頸椎前方,肩内旋,骨盤後傾,左前方重心),3.荷重:(右32kg,左38kg⇒右34kg,左36kg),4.移動:独歩(視野下方,右肩甲帯前傾,体幹回旋不良) ,10m歩行13秒⇒10秒,起立(右寛骨前傾),跨ぎ(上半身重心の側方偏位),5.筋緊張:右上部体幹・左下部体幹亢進,6.平衡機能:FBS(40点⇒46点),片脚立位(右2秒,左5秒⇒右6秒,左8秒) ,7.感覚:表在感覚軽度鈍磨(右足部),8.反射:右上下肢減弱,9.MMT:(握力)右18kg,左22kg⇒右20kg,左23kg,体幹・中臀筋3⇒4,10.ROM-T:体幹右回旋・側屈20°C⇒40°
    【問題点】
    (Form Closure)
     上部頚胸椎・右肩甲胸郭・肩関節可動性低下に伴う体幹右回旋制限,右寛骨前傾不良
    (Force Closure)
     頸部ローカル筋群,肩甲後面筋,腹横筋,多裂筋機能不全,右大胸筋,左腸腰筋,大腿筋膜張筋短縮
    (Motor Control)
     右片脚時の上半身重心右側方偏位,跨ぎ動作時の下部体幹制動困難,歩行時の体幹右回旋制限
    【アプローチ】
     モヒ゛ライセ゛ーション,ストレッチンク゛,Sling Execise Therapy,Coupling Motion Training,起居動作,実用歩行練習,ADL- ANL指導
    【考察】
     今回,脊柱不安定性を有する症例を担当させて頂き,上・下部体幹の運動連鎖に着目した.Parisらは,不良姿勢を改善し,安定性運動を実施していくことは重要であると述べている.このことから,不安定性に伴う特定関節への負担軽減並びに二次的障害予防を目指した.その為,可及的早期に運動-動作-行為障害を抽出し,上・下部体幹における形状力学的閉鎖をコントロールし,High Stiffness Areaを改善することに努めた.結果,下部体幹の安定性向上,右片脚立位時間拡大に伴う跨ぎ動作能力向上並びにPre-Swing~Terminal Stanceの流動性改善を認めた.これは,上半身重心の位置を誘導し,適正化することに伴い身体重心・下半身重心が影響され,感覚-運動フィート゛ハ゛ックの再教育,誤用障害が改善されたことが主な要因であったことが考えられる.よって,院内から在宅復帰を果たすに当たり,運動を質的に捉え,二次的障害予防を目指した建設的なアフ゜ローチを早期に展開することは重要であると考える.
  • ~事例が提供された楽しみから、主体的に「今」を楽しむまでの変化を通して~
    松尾 佳美, 山田 麻和, 松尾 理恵, 中島 音衣麻, 園田 利恵, 武田 芳子, 平岩 幸代
    セッションID: 042
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)と告知を受け2日後に人工呼吸器(以下、呼吸器)を装着した事例を担当した。呼吸器を装着し後悔する事例に対し「楽しく生きて欲しい」と考え関わったので、経過を踏まえて報告する。
    【事例紹介】
     76歳女性、娘と二人暮らし。元々洋裁の仕事をしており手作業が好き。何事も最後までやり通す性格である。現病歴として平成14年から歩行障害出現。平成17年2月呼吸困難出現。同4月ALS疑いにて当院入院、5月初旬呼吸器装着。
    【評価】
     上下肢体幹の粗大筋力3~4、lateral pinchは可能。厚生省の重症度分類2度で基本動作自立、伝い歩きが可能だが呼吸苦強く連続した動作は困難。呼吸器装着後、重症度5度となりADL・基本動作は全介助。HDS-R30点と認知面は問題なし。
    【経過】
    <ラポールの形成:1ヶ月目>
     呼吸器装着により不安が強く依存的な事例に対し、呼吸器の位置調整を覚え安心感を得てもらうと共に、身の回りの事を出来るだけ行うよう働きかけた。また「動けないのに生きる意味がない」と涙する事例の話を傾聴しつつ事例が好んでいたActivityを導入した。
    <楽しみの提供~活動範囲の拡大:2~4ヶ月目>
     Activityに対し事例の受け入れが良かったため、楽しみとして提供することとした。事例がActivityを楽しむ中、出来ない動作に直面する場面もあり、OTは手伝うタイミングや事例の能力に合わせて提供出来ているかという思いを常に抱いていた。また、3ヶ月間事例の活動は自室内に限定されており、OTは色々な人や環境に触れてもらうため病院の庭など自室外へ連れ出していった。
    <事例の意思に沿った関わり:5~7ヶ月目>
     今まで受け身だった事例が「外出したい」など意思を示すようになったため、OTからの提供は行わず事例の希望に沿って散歩やActivityを行った。事例は入院から7ヶ月目自宅退院となった。
    <現在>
     1年4ヶ月を経て、事例は「Activityをするのがすごく楽しみで、作品を作れる内にたくさん作りたい」と言われている。現在、外出は行っていないが、一日に2時間意欲的にActivityを行いながら生活を送っている。
    【考察】
     今回、OTの関わりが事例の能力に合っているか自信が持てず本当の楽しみが提供出来ているのか悩むことがあった。しかし、事例が提供された楽しみではなく、事例自身で楽しみを持とうとしている現在の姿を見て、Activityを行い楽しみを持つことが生活に定着していると感じることが出来た。また、事例が考えなどを意思表示するのは当然のことであり、今後事例の中に芽生えた思いを自由に表すことにより、事例の選択範囲がもっと拡がってもらえればと考え関わった。これらの関わりが、事例が自分を受け止めつつ主体的に「今」を楽しめていることへの一助となったのではないかと考えられた。
  • 平山 直子, 稲富 宏之, 大久保 篤史, 松尾 理恵, 上野 尚子, 前川 順子, 加藤 雅一, 西村 洋子, 山崎 雅枝, 芦塚 紘一, ...
    セッションID: 043
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、OTRは人工呼吸器装着目的で入院し、意志伝達装置の導入時期にある筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)のA氏を担当した。OTRは、発声不能となり思いを能動的に語ることが少ないA氏が、現在・今後の生活についてどのように考えているのかがわからなかった。作業遂行歴面接(以下,OPHI-II)は半構成的面接の一技法で、対象者の生活史をまとめ客観視させるのに役立つとされている。今回この面接法を用いることで、A氏の思いを理解でき、作業療法を展開していく上で役立ったので考察を加えてその結果を報告する。
    【症例紹介】
     A氏50歳代女性。平成13年ALSと診断される。一人娘が遠方に在住。平成18年8月人工呼吸器装着目的で入院。人工呼吸器装着後は、終始ベッド上で過ごし意志伝達手段としては口唇の動きを読む、または文字盤を使用していたが、読み取りには時間を要した。ADLは全介助レベル。
    【方法】
     OPHI-IIの手引き書をもとにベッドサイドにて約30分(計6回)の面接を実施。意志伝達手段は「伝の心」を使用し口唇でタッチセンサーに触れることで入力した。質問に対しA氏が回答を入力し、随時追加質問しながら内容を深めていった。
    【結果】
     1.A氏はこれまでの生活史のなかで人生を自分で決定し実行してきたことや、娘を育て上げたことに誇りを持っている。2.これまでテニスサークルや絵てがみ等の楽しみ活動に積極的に参加してきた。3.現在の生活には満足していないが、具体的に実現可能な「起きたい、食べたい」という希望がある。4.今の心の持ちようを「思っていることを素直に出すことが大切」と本音を交えて語った。以上の結果より、A氏はこれまでの人生において望みを実現する行動力があること、また現在の生活に対する希望があり、それを叶えようとする気持ちを持ち続けていることがわかった。また、こうした自身の思いの語りは、「車椅子へ座り、散歩に行く」「色々な味を楽しむ」という具体的な行動変化を実現するきっかけともなった。
    【考察】
     A氏は障害により量的にも質的にも自身の思いを語る機会が減少していたが、OTRはOPHI-IIを通してA氏の希望を知ることができた。面接がA氏の生活史についてであり、その人を理解しようとする姿勢はA氏にも受け入れやすかったと考える。またA氏の自尊感情を話題にした語り合いはA氏の自信を強め、生活に介助を要し負い目を感じやすい状況にあると思われるA氏の、本来持っている強さを認識する機会となり、このことが目標を掲げ実現していくことにつながったのかもしれない。さらに、OPHI-IIは半構成的な面接であり、ふんだんに語ることのできないA氏にとっても意味のある情報を効率よく交わすことができ、情緒的に豊かな時間を共有できたと考える。ALS患者にOPHI-IIを用いたことは作業療法を進めていく上で役立ったと考える。
  • 大木 誠竜, 永井 良治, 吉住 浩平, 松田 憲亮
    セッションID: 044
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     協調運動障害を有する患者の理学療法を通して体幹・下肢などの多関節の協調的運動が不十分なため、足関節戦略に依存し、早期のステップ反応が出現し、転倒されるような場面に遭遇した。そこで、体幹・股関節での姿勢制御を強いられるリフティング課題を取り入れ、その効果判定として重心動揺計上にて前方リーチ動作を行い、その際のリーチ距離と足圧中心の移動距離を測定した。また継ぎ足歩行中のステップ反応回数を方略の変化を捉える指標とし、介入の有用性について検討した。
    【症例紹介】
     48歳男性。遺伝性脊髄小脳変性症、H14年発症。測定期間は投薬なし。躯幹協調機能ステージ1。踵膝試験左右共に陽性。著明な可動域制限、筋力低下なし。
    【方法】
     計測は重心動揺計(アニマ製CS-10)上にて立位で両上肢90°挙上位にて棒を持った姿勢(以下開始姿勢)で前方へリーチした際の棒の移動距離(以下リーチ距離)と、その際の足圧中心(以下COP)の移動距離を測定した。30秒間のサンプリング中、リーチを5回行った。なお測定前には十分に練習を行なった。COPの移動距離は開始肢位での平均値からY軸成分の最大値の差を指標とした。継ぎ足歩行は5m中のステップ反応回数を計測した。
    【介入】
     治療はA、10日間は四つ這いでの四肢を挙上する練習,座位での重心移動練習をそれぞれ左右10回ずつ行う体幹・股関節の協調性改善を目的とした練習と、B、その後10日間で足底に柔らかいマットを敷き、足関節戦略を抑制しリフティング課題を10回行なった。AB後の測定は共に10日目の治療後に行なった。
    【結果】
     リーチ距離、COPの移動距離、ステップ回数の順に記載する。初期評価時29cm、9,3cm、23回以上、A施行後40cm、11,5cm、16回、B施行後46cm、9,3cm、7回となった。
    【考察】
     矢状面の姿勢制御は、足・股関節戦略でのバランス回復が困難な場合、踏み出し戦略が用いられる。初期評価とA施行後では、体幹・股関節での姿勢制御能力が向上し、それに伴ってリーチ距離、COPともに向上したと考え、足関節と股関節の戦略の変化率は少なかったと考える。B施行後はリーチ距離が17cm増加した。Wernick-Robinsonらは比較的大きなリーチ距離は重心移動の小さい股関節戦略で達成できると報告している。立位で足関節戦略を抑制した介入で、体幹・股関節を優位に用いた姿勢制御に変化し、リーチ距離がしたと考えられる。また継ぎ足歩行は、支持面が狭くなり、より股関節戦略が必要となることは伺える。ステップ反応回数も、足関節戦略→踏み出し戦略であったものが、足関節戦略→股関節戦略→踏み出し戦略となり、減少したと考える。以上より、この足関節戦略を抑制した状態でのリフティング課題は有用であることが伺えた。
  • ~麻痺改善の認識を数値的変化にて促す~
    片岡 健一
    セッションID: 045
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     独居にて長期間住んでいた地域から娘の居住地にある当院に転院し、自宅復帰のためのリハビリをおこなった症例を担当した。作業療法実施による訓練効果を、簡易上肢機能検査(以下STEF)を使用することで得点として数値的な認識に導いた。回復状況の客観的な理解が、症例と家族の外出に対する取り組みに変化をもたらし、自宅退院への要因となったので報告する。
    【症例】
     67歳女性。左視床出血により右片麻痺を呈す。住居地近辺での急性期治療終了後、リハビリ継続のため転院。Br.stage上肢4~5、手指4~5、下肢5。右肩関節・手関節運動時に痛みを伴う可動域制限。麻痺側中等度感覚鈍麻。退院後は病前と同様に前住居地にて独居希望。
    【治療経過】
     入院当初食事は左手にてスプーン使用。排泄は洋式トイレでは下衣脱着介助。右上肢の使用なくADL全般に介助を要する。作業療法では手摺り把持や物品の固定といった右上肢の補助手としての使用を誘導するも受け入れ不十分。この時期の一時外泊では常に介助を必要とした。初回外泊直後のSTEF右21/100左89/100。症例は自宅退院の困難さを痛感し、消極的であった自主練習の再指導を希望。机上での両手動作訓練を積極的に開始する。同時に作業療法では食事・排泄訓練を行う。1ヵ月後STEF右55左96。このころの外出時には毎回課題を設定し、娘にも注目すべき点を明確に指導することで問題点の共通認識を促す。家庭内ADL自立に伴い、OT訓練を家事動作主体に変更。2ヵ月後のSTEF右68左99。この時期の外出時では行う家事動作を決め、その遂行状況を症例と娘よりの報告を受け作業療法訓練に反映させた。退院時Br-stage4~5‐5‐5。STEF右75左100。右肩・手関節の運動制限は残存。ADL全自立。
    【結果】
     退院直前のSTEFにおいて、右肩と手関節の痛み増悪による所要時間の延長が見られる項目もあったが、概ね差の指標が得られる時間短縮を図ることが出来た。退院時には食事は右手にて箸可能。炊事・洗濯自立となった。退院後は娘宅にて1ヵ月間の生活後、浴室改修後独居での生活を再開する。
    【考察】
     症例は麻痺による機能低下を漠然と気にするあまり、ADLでの積極的な右上肢の活動はみられなかった。そこでSTEFによる機能を点数化し、症例に回復過程を数的に提示することで冷静に障害と向き合うことができた。独居に対し不安視する娘にも機能回復を客観的に説明することで、不安を取り除く要因となった。作業療法では外出時の問題点の抽出や退院後の生活イメージをOT・症例・家族間の共有し、身体機能の適切な能力発揮できるように心がけた。このことが、退院後の独居生活へつながったと考える。
  • 富永 誠二, 金城 咲, 安村 勝也, 又吉 達
    セッションID: 046
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     近年の上肢機能に対して、維持期で非麻痺側拘束療法(CI療法)の効果が発表されているがその他、維持期の手技による報告例は少ない。今回、我々は反復促通療法(以下川平法)を用いた訓練を通所リハビリテーション(以下通所リハ)利用者に行い、上肢機能への効果が見られたので以下に報告する。
    【対象】
     通所リハを週3回利用されている脳卒中患者で、発症から4年以上が経過した麻痺やADLに変化がない患者3名とした。身体機能は、Brunnstrom stage上肢3~5で指示理解がよい方とした。
    【方法】
     期間は3週間で、通常のリハビリテーション(以下リハビリ)に加え20分の上肢機能訓練として川平法を導入した。評価は、12段階片麻痺回復グレード法(以下上田式)・STEF・肩関節ROM(座位)・片麻痺上肢機能テスト(以下実用度テスト)にて前後評価を行い、その促通効果を判定した。
    【結果】
     全例に機能あるいは能力改善が見られた。症例(1)(グレード・STEF・肩関節ROM・実用度テストの順にて) グレード3→グレード5、0点→2点、30°→45°補助手A→補助手A、症例(2)グレード9→グレード11、52点→69点、90°→170°実用手A→実用手A、症例(3)グレード8→グレード10、55→53点、130°→130°実用手A→実用手Aと向上した。
    【考察】
     改善に至った経緯としては、1)ADLで麻痺側上肢の使用頻度が少ない事、2)反復して運動性下行路の強化がそれまでの通所リハの中であまり行われていなかった事、3)リハビリの内容として比較的下肢機能へのリハビリが多く行われている事が挙がる。症例(1)は、痙性が強くそのパターンから逸脱しにくい状況にあったが、ADLで服の裾を捲り上げるやすくなっていた。症例(2)は、皿洗いで食器を落とさなくなった、ボタン動作がスムーズに出来るようになっていた。症例(3)は若干STEFは下がるが、元々ADLで上肢の使用頻度と麻痺レベルも高くADLに支障をきたしていないが機能面での改善が図られていた。維持期の脳卒中患者に対しリハビリが行われている目標は、機能維持がほとんどであるが今回は、回数が少ない中でも、川平法を用いて運動性下行路の強化を行うことでの改善が得られた。以上の事から、維持期の患者に対しても積極的に上肢へのアプローチを行う事が重要であると考える。症例3名に対して承諾は得ている。
  • 城戸 栄一郎
    セッションID: 047
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     現在、診療報酬の改定による発症早期の算定単位数上限緩和、回復期リハビリテーション算定日数の上限見直し等により急性期リハビリテーションの重要性が注目されている。当院では平成18年7月1日よりベッドサイド専属のPTを配属し早期からの介入を積極的に行っている。その活動内容について一症例を通して現状を報告する。
    【症例紹介】
     氏名:I,H氏 年齢:70歳代 性別:男性 診断名:右脳幹梗塞(橋)既往歴:平成5年クモ膜下出血 現病歴:2006年6月14日午前4時頃トイレに起きた時倒れ起きあがれなくなった。意識状態も悪いため救急車を呼び当院受診した。≪初期評価≫JCS:3~10、コンタクト:意識障害のため成立せず。 Br-stage:(Rt/Lt)II/I II/I II/II~III ADL:全介助 ≪最終評価≫JCS:2~3 コンタクト:YES反応のみアイコンタクト可能(不明確)Br-stage(Rt/Lt)II/I II/I II~III/II~III ADL:全介助
    【画像所見】
     頭部MRI・CTにて、右橋前外側に梗塞像がみられた。脳底動脈は拡張し脳動脈硬化が原因と思われる。
    【経過】
     PT開始時酸素吸入(以下O2)5リットルにてSpo299%、閉塞性で努力性の呼吸、眼球運動(追視)ある。6/30日中、無呼吸になることあり。7/3肺炎、肺うっ血、心肥大。注視あり。7/5入眠時無呼吸あり。7/15MRSA検出される。 O2カット。7/19レベルダウンO28リットル開始。7/20呼吸器装着。追視あり。7/22声掛けによる開眼、追視あり。7/26セラピストの視線の先を見る。周囲を見回す。7/28MRSA消失。8/10頚部回旋運動出現。眼球運動多くなっている。8/17口頭指示で持続性閉眼や閉眼連続2回要求。動作に応じる。8/19声掛けに涙を流す。8/21呼吸器離脱。挿管装着。8/24アイコンタクト、タイミングよくできる。8/31声掛けに対しアイコンタクトで返答する。9/1挿管チューブ抜管。9/13セラピストをみるとアイコンタクトとる。9/15出棟リハ開始。
    【考察】
     私は今まで、両片麻痺を呈し高齢者であれば予後不良となるケースが多い為、身体機能の維持・合併症の予防を目的とした訓練を選択していた。本症例も発症後より寝たきり状態であり、一日にPT・OT合わせて2回の訓練を維持目的で行っていた。7月からPTの訓練回数が増加し、起居時間を多く取ることで外部環境の変化が得られた。これにより視覚などの感覚情報の変化に対して注意が向きやすくなったと思われる。このことをきっかけに意識レベル改善、精神活動が賦活され、結果として全身状態の改善、出棟リハが行えたと考える。
  • 田中 文代, 吉田 勇一, 前田 伸也, 窪田 秀明, 桶谷 寛
    セッションID: 048
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
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    【はじめに】
     近年、創外固定器による脚延長術が行われており、当センターでも1998年より脚長不等や四肢短縮症を呈する骨系統疾患に対し実施している。今回、当センターで実施した低身長に対する下腿脚延長術とその後の理学療法を紹介する。
    【対象】
     1998年~2006年までに現在延長中を含む下腿延長術を10名20肢実施した。手術時年齢9歳7ヶ月~19歳10ヶ月(平均14歳2ヶ月)、男性4名、女性6名で、疾患名は軟骨無形性症7名、思春期早発症1名、化膿性関節炎後1名、脊椎骨端異形成症1名であった。
    【下腿延長術の紹介】
     脛骨、腓骨を骨切りし、orthofix創外固定器で固定。7日~10日経た後に、脛骨を0.5~1mm/日延長していく仮骨延長法を実施している。目標延長量の目安は、術前延長骨の30~40%である。可動域制限の程度により延長量を変更し、延長終了後は、延長期間の約2倍待機し、抜釘を行う。固定器抜去後は、再骨折防止の観点から、治療開始から退院までの期間は約1~1年半である。
    【下腿延長術後の理学療法の紹介】
     川端らによると、最大延長量を決定するのは軟部組織であると言われており、軟部組織をいかに柔軟に保つかが理学療法の焦点と言っても過言ではない。当センターでは、術後4日目より理学療法を開始しており、その経過を4つの期間に分けて紹介する。
    1.術後4日目~延長開始:この期間は痛みのチェック及び早期歩行に向けた立位・歩行訓練の準備を行う。
    2.延長開始~延長終了:30%近くの延長になると、足関節背屈制限が出現し始め、延長終了前にはさらに背屈制限が著明となり、内反尖足が出現する。そのため歩行時に重心が後方に残り、足部への体重支持が減少してくる。この場合には補高を用いて踵接地を促し、足部への体重負荷を行い、骨形成促進、更には軟部組織の柔軟性維持を目標とする。また、必要に応じて斜面台でのストレッチを行う。
    3.延長終了~抜釘時期:可動域、筋力、移動能力ともに回復していく期間。足関節の可動域制限がなくなるまで可動域訓練を実施していく。また筋力トレーニングやバランス訓練を行い、より術前に近い機能を再獲得するようにアプローチする。
    4.抜釘術後~退院:延長量や骨密度に応じ、脛骨保護のため下腿装具と杖を使用した歩行を指導する。
    【まとめおよび考察】
     当センターで実施した低身長に対する下腿脚延長術とその後の理学療法を紹介した。この治療は学童期に行う例が多く、当センターは養護学校が隣接していることから、通学しながらの長期治療に適している。脚延長では、軟部組織をいかに柔軟に保つかが重要であり、各時期の特徴を捉えた上で早期の可動域訓練や歩行訓練を実施していく必要があると思われる。また、可動域維持だけでなく、今後は延長前・後の筋力、運動能力、ADL等のより詳細な評価を実施していくことが当センターでの検討課題である。
  • 前田 伸也, 吉田 勇一, 窪田 秀明, 桶谷 寛
    セッションID: 049
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脚延長術後の理学療法は、相対的に短縮する軟部組織の柔軟性維持を目的とした可動域訓練を行なうが、下腿延長例の足関節背屈よりも大腿延長例の膝関節屈曲の可動域改善が乏しい様に思われる。そこで下腿延長と大腿延長の下肢可動域と骨延長量を調査し、これらを比較したので報告する。
    【対象】
     軟骨無形成症で低身長を呈し、脚延長術を実施した下腿延長例7名14肢、大腿延長例5名10肢のうち、調査可能であったそれぞれ6名12肢、4名8肢を対象とした。手術時平均年齢は下腿延長例で14歳3ヶ月、大腿延長例で17歳3ヶ月であった。なお、全例でorthofix創外固定器を使用した。
    【方法】
     下腿延長例では膝伸展位での足関節背屈角度(DKE)、大腿延長例では膝関節屈曲角度(KF)をそれぞれ術前と延長後1ヶ月、その後1ヶ月毎に延長後7ヶ月まで調査し、各調査時の左右平均角度を求め、それぞれで術前との比較を実施した。骨延長量は、それぞれの平均延長量を求め比較した。
    【結果】
     DKE、KFそれぞれにおいて分散分析を実施し、DKEは、術前と延長後1ヶ月、術前と延長後7ヶ月は有意差がなかったが、延長後2~6ヶ月までの5ヶ月間は術前と比較して可動域が減少した。(P<0.05)。KFでは延長後1~7ヶ月までの7ヶ月間は、術前と比較して可動域が減少した(P<0.05)。骨延長量は、下腿で平均74.7mm、大腿で平均66.9mmであり下腿が大きい結果となった。
    【考察】
     結果より、DKEよりもKFの可動域改善が低いことが示唆された。理由として、下腿延長例は、斜面台での起立訓練や歩行時において、下腿三頭筋の持続したストレッチ効果が得られやすく、早期の可動域改善が可能ではないかと推察された。一方大腿延長例では、下腿よりも歩行時のストレッチ効果が得られず、また大腿部の筋自体も筋張力が大きいため、可動域改善が得られにくい。その他として、平岡らは、大腿延長はピン刺入により腸脛靭帯のスライドが不十分なために膝関節屈曲制限が起きると述べている。以上により大腿延長例では、軟部組織の柔軟性を獲得しにくいことが推察された。また骨延長量も大腿延長例が小さく、延長量を決定する因子として軟部組織の柔軟性が必要であるということが確認できた。これらを踏まえ、大腿延長例の理学療法は、術前に大腿四頭筋のストレッチを実施し、可動域制限を最小限に留めることが必要ではないかと考える。今後も症例数を増やしていき、更に検討したい。
    【結語】
     下腿延長と大腿延長において、骨延長量と下肢可動域を比較した。結果、大腿延長例ではKFの改善が低く、骨延長量も小さい。大腿延長例に関して、術前に大腿四頭筋のストレッチを実施する必要があると考える。
  • 倉重 智恵美, 岩下 大志
    セッションID: 050
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     重症心身障害児の食事において,姿勢は重要視されるもののひとつである.今回取り上げた症例は,母親が抱っこにて介助していたが,姿勢の崩れにより摂食が困難であった.抱っこによる摂食の問題点を改善するため,座位保持装置を作製したところ,食事が安定して摂取可能になった.そこで,安定した食事を行えるようになった理由について,抱っこと座位保持装置姿勢の比較により,考察した.
    【症例紹介】
     12歳男児.生後7ヶ月時,脳出血.
     臥位レベル,定頸困難,重度の四肢・体幹の変形.
     ミキサー食,水分はとろみをつけて摂取可能.
    【経過】
     母親は本児の右側に座り,左脚を立て,背面を支持し,左手で下顎を支え,右手で介助する.そのため,本児は重心が右側に偏り,右肩に右頬を強くこすりつけるような動きがみられる.また,上体を起こしすぎてしまう傾向にあり,頭部は後屈してしまう.
     このことから,座位保持装置作製にあたり,重心の偏りが小さくなるよう右胸部を支え,体幹の床に対する角度は45°傾斜し,正常に近い頭頚部と脊柱のアライメントに整えた.
     座位保持装置の導入後,食事中のむせや喘鳴は減少し,食事時間が短縮した(60分→40分).食事量が増加し,体重が維持され,導入後は肺炎等で入院しなくなった(以前は年7~10日).
    【考察】
     座位保持装置により,重心の偏りを小さくし,非対称な姿勢を修正することで,抱っこでみられていた右頬をこすりつける動きはみられなくなった.また,抱っこでは頭部は後屈し,前頸筋が伸張され,嚥下時の喉頭挙上を阻害していたが,座位保持装置により頭頚部と脊柱のアライメントを修正できた.その結果,本児は口腔機能を発揮しやすくなり,食事時間の短縮や食事量の増加につながった.頚部が動いていたり,頭部が後屈した無理な状態で摂取することは,誤嚥の危険性も否めない.十分な栄養を摂取できるようになったことと,誤嚥の危険性が減ったことが,肺炎を引き起こさなくなったことに関係していると推察できる.
    【まとめ】
     本児は成長とともに変形が進行し,抱っこで食事姿勢を保持するのは困難になっていた.それは,食事の所要時間や摂取量にも影響していた.しかしながら,座位保持装置の導入により,抱っこでは困難な支持面や体幹の床に対する角度をつくることができ,安定した食生活を送ることができるようになった.重症児が経口摂取するにあたって,姿勢の重要性と,そのために座位保持装置の使用を保護者と検討していくことの必要性を再認した.
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