九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 081
会議情報

アイスホッケーにおけるスポーツ傷害と原因について
*浜浦 美智子重松 康志池田 博信島居 恵松尾 佐智夫橋口 浩治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
 近年、栄養や心理面など各分野からスポーツ現場への介入や支援が積極的に行われている。その中でスポーツ外傷や障害(以下、スポーツ傷害)などメディカル面に対する理学療法士の役割は大きいと考える。今回、長崎県では比較的珍しいアイスホッケーのチームに対しメディカルサポートを行った。その中で対応したスポーツ傷害とその原因について報告する。
【対象者および期間】
 対象者は過去2年間、アイスホッケー競技成年男子長崎県選抜チームに推薦された延べ50名、年齢は18才~35才(平均24.5才)である。経験年数は1~20年と広範囲にわたっている。練習形態は概ね週1~2回、週末深夜3時間程度の氷上および陸上練習である。サポート期間は平成17年5月から平成19年3月までの約2年間である。
【活動内容】
 週1回の練習や試合(延べ64回)において(1)急性外傷に対する応急処置(2)ストレッチングやテーピングなどのリコンディショニング(3)ウォーミングアップやクーリングダウンの指導(4)医療相談などのサポート活動を行なった。
【結果】
 全体の72%の選手がスポーツ傷害を経験していた。2年間のスポーツ傷害対応件数は162件であった。そのうち急性外傷として対応したのは49件であった。その内訳は、打撲が36%、関節捻挫が19%、擦過傷が14%であった。受傷機転としてはボディチェックとフェンスへの激突が併せて46%、スティックやパックによるものが17%であった。試合中の受傷は35件で1試合平均1.4件発生していた。慢性障害としては、腰背部痛、股関節痛などがみられた。全体の罹患部位としては足部、肩関節周辺、股関節周辺、腰背部の順に多かった。急性外傷の対応内容は、RICE処置が74%と最も多く、次いで創傷処置であった。救急搬送は1件にとどまった。慢性障害の対応内容はテーピングが39%、ストレッチングが37%であった。
【考察】
 経験したスポーツ傷害のうち急性外傷が6割以上を占め、特に試合中の受傷が多かった。その多くはボディチェックやフェンスなどへの激突によるもので「氷上の格闘技」とも呼ばれるアイスホッケーの競技特性が窺えた。一方、慢性障害は体幹や下肢に多くみられ、環境要因や身体動作的要因の関与が推測された。以上のことから適切な応急処置の技術向上とその後のリコンディショニング、選手自身に対しては自己管理能力を高めることが重要であり、またスポーツマナー遵守を啓発、指導することもスポーツ傷害を予防する上で必要であると考える。

著者関連情報
© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top