抄録
【目的】
最近空き地や公園でこども達が遊ぶ光景が少なくなってきている。そのためスポーツや運動の基本となる自然の中での遊びや包括的な遊びが減少する一方、こどもスポーツでは技術や勝敗が先行している傾向が強く、基本的なキャッチボールが出来てないように感じる。そこで投球動作に不安を感じているこども達の運動能力(体力)測定を行い、投球動作訓練等を週1回のペースで2ヶ月間行った。訓練前と訓練後で運動能力にどのような影響を与えるのかを目的とした。
【対象】
当院主催のこどもドリームコースを受講した小学生4~6年生7名。(平均年齢11歳・平均身長147.1±9.6cm・平均体重39.9±6.7kg)健康な両下肢を有する者のみ体力測定実施。
【測定項目・方法】
片脚立位(左右)/片脚ジャンプ(左右)/立ち幅跳び/垂直跳び/反復横跳び/3段跳び/全身反応時間を訓練前と訓練後のそれぞれ3回づつ測定し、その平均値をWilcoxonの符号順位和検定を用いて有意差(P<0.05)を求めた。
【訓練期間・内容】
期間・1回(60分)/週×2ヶ月間。内容・投球動作等を中心に様々のスポーツを遊び感覚で行った。
【結果】
右片脚立位/垂直跳び/反復横跳びにて有意差が認められた。投球動作において不安感を訴える者はいなかった。その他の項目では有意差は認められなかったが全ての数値に改善が見られた結果となった。
【考察】
今回は投球動作を通じて基本的な身体の使い方等の訓練を遊び感覚で行った。一番効果が得られたのは訓練(2ヶ月)後、投球動作時に不安感を訴える物がいなかったということである。筋力強化をしたわけでも、入念にストレッチを行ったわけでもない。野球以外の動作(スポーツ)を取り入れることでなんらかの影響が認められたのでないかと考えた。様々なスポーツを通じ勝敗を求めず遊び感覚で行うことに重要な意味があるのではないかと感じた。無理(ケガ)をしないためにも、こどもの成長に合わせ個人個人にあった投球動作・運動を行いながら、定期的に体力測定も行えれば障害予防にもつながるのではないかと考えた。今後も様々な視点からこどもスポーツ障害の予防を検討していく。