九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 094
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健常成人の歩行における足関節サポーターの効果
*野島 丈史吉元 洋一
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抄録
【目的】
 高齢者の歩行中の転倒原因は様々だが、転倒経験を有した高齢者の多くは「つまずき」であったと報告されている。これは歩行時遊脚期での足部クリアランス不良により生じ、その素因として遊脚期における足関節底背屈角度、底背屈筋力低下、筋持久力低下などがあげられる。今回、健常成人において、足関節を軽度に固定、容易に装着でき、長時間装着可能な足関節サポーターを装着することで、歩行時遊脚期の足部クリアランスへの効果を検討したので報告する。
【対象と方法】
 対象は研究に同意を得た健常成人男性20名(22.5±1.1歳)。歩行時遊脚各期における床面と第5MP関節の最小距離(以下、第5MP高)、足関節背屈角度、背屈モーメント、筋電最大値及び立脚後期における床反力を測定し、測定機器として三次元動作解析装置、床反力計、表面筋電図を使用した。測定に使用する足関節サポーターは日本シグマックス社製エバーステップ1を使用し、装着は検者が行った。測定は、三次元動作解析室にて裸足で3回の自由歩行の後、サポーター装着下で同様に行った。データは裸足時、サポーター装着時のそれぞれ各3回の平均値を使用し、比較した。統計は、対応のあるt検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
 遊脚期の第5MP高は、裸足時4.4±0.5_cm_ サポーター装着時4.9±0.8cmと有意に増加した。また遊脚各期における足関節背屈角度では遊脚初期で裸足時35.48±4.72°、サポーター装着時28.91±3.78°、遊脚中期では裸足時 14.27±2.53°、サポーター装着時11.94±2.93°、遊脚後期では裸足時23.83±2.86° 、サポーター装着時 20.4±3.13°となり、いずれにおいても有意な増加がみられた。遊脚初期における背屈モーメントでは裸足時2.19±0.81Nm 、サポーター装着時2.15±0.49Nmと有意に増加した。立脚後期における床反力前後分力では有意な差はみられなかった。遊脚初期における筋電最大値では裸足時 38.15±21.17mV、サポーター装着時 31.37±16.13mVと有意に低下した。
【考察】
 足関節サポーター装着下での歩行時足関節背屈角度及び背屈モーメントや、第5MP高の増加は、最大背屈位にて装着したことから足関節サポーターの固定力によるものと考える。又、筋電最大値の低下は、サポーターが背屈方向への補助力として働いたためと考える。床反力に有意差が認められなかったのは、被験者が健常成人であり、十分な底屈筋力が得られたためだと考える。本研究によりサポーターの効果に遊脚期における足関節背屈角度及び背屈モーメント、第5MP高の増加が認められたことから、高齢者の「つまずき」予防に足関節サポーターの使用が有効となりえることが示唆される。
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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