九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 039
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仙腸関節痛を有する症例に対する理学療法の一考察
*羽田 清貴
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抄録

【はじめに】
 仙腸関節は、重力と床反力の相互の外力の分岐点であり、力の伝達として重要な部位である。そのため体幹機能や下肢機能低下により、仙腸関節に力学的ストレスが生じると考えられる。今回、腰椎椎間板ヘルニアの患者様を担当させていただき、体幹機能及び股関節機能低下による荷重伝達能力の低下により仙腸関節に力学的ストレスが生じ疼痛が生じていると考え、理学療法アプローチを行った結果、若干の改善が得られたためここに報告する。
【症例紹介】
 25歳、女性。診断名:腰椎椎間板ヘルニア、現病歴:H19年4月2日の夕方より、特に誘因なく腰痛増強し、起立、歩行困難となり当院に入院。画像所見:レントゲンは矢状面像で腰椎前彎減少、前額面像で腰椎は左凸、胸椎は右凸。MRIはL4、5間でヘルニア脱出。
【理学療法評価】
 疼痛:立位や歩行において、腰部から殿部にかけてVisual Analogue Scale(以下VAS)で10/10(左>右)で立位保持、歩行困難であった。圧痛は腰部から左仙腸関節付近にあった。自動的下肢伸展挙上運動(以下ASLR)では、左下肢挙上時に左側骨盤の後方回旋と疼痛が生じた。ヘルニアに起因した症状は認めなかった。左脊柱起立筋及び左大腿筋膜張筋にhypertonusを認めた。立位姿勢は、骨盤後傾位で腰椎前彎減少。右肩峰挙上位、右腸骨稜高位、脊柱は腰椎で左凸、胸椎で右凸のアライメントを呈し、上部体幹は右側変位。上半身重心は右前方変位。左片脚立位では、左寛骨の後方回旋、仙骨のうなずきが生じず、反対側の骨盤が下制した。歩行は骨盤側方移動が生じず左側への荷重困難。
【理学療法アプローチ】
 呼吸による下部体幹の安定化訓練、骨盤帯アライメント改善訓練、股関節単関節筋訓練、アウターユニット機能改善訓練、坐位における骨盤正中化訓練。
【結果】
 最終評価時、疼痛は歩行時痛が2/10となった。ASLRでは骨盤の後方回旋改善。立位姿勢は、骨盤前傾、腰椎の前彎改善傾向。上部体幹の右側変位は残存。左片脚立位において、左寛骨の後方回旋及び仙骨のうなずきが生じ、骨盤の水平化が可能となった。歩行において、荷重応答期の前額面上の骨盤の側方移動が生じ、左下肢の荷重が可能となった。
【考察】
 本症例は立位及び歩行時に腰部から左仙腸関節部の疼痛を訴えた。荷重時や歩行時に左仙腸関節の閉鎖位が困難であり、仙腸関節の安定化を過剰に受動的要素に依存することで疼痛が出現していると考えた。その原因が、体幹機能低下及び股関節機能低下による荷重伝達能力の低下と考えアプローチした。その結果、下部体幹の安定性が改善し、姿勢アライメントが改善した。左下肢荷重時の左寛骨の後方回旋と仙骨のうなずきが生じるようになったことから、筋性の安定化システム及び関節面の安定化が図られ効果的な荷重伝達が可能となり、疼痛の軽減に至ったと考える。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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