九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 052
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小児麻痺性尖足に対する保存療法の検討
~観血的治療を実施した一症例を通して~
*杉本 憲治吉田 勇一椋野 あけみ劉 斯允窪田 秀明
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キーワード: 尖足, 保存療法, 観血的治療
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抄録
【はじめに】
 当院では、小児麻痺性尖足に対する保存療法として理学療法(以下PT)と装具療法、ギプス療法を組み合わせたアプローチを試みている。ギプス療法の位置づけをPTの一助とし、装具療法と共に行うことで、尖足予防や改善が期待できると考えている。3年4ヶ月に渡ってギプス療法を組み合わせた保存療法を試み、観血的治療を実施した症例の治療経過に考察を加え報告する。
【症例】
 初診時年齢2歳7ヶ月、男児。身長92.5cm。診断名は脳性麻痺、左下肢麻痺性尖足。左足関節可動域は、膝伸展足関節背屈角度(DKE)-25°膝屈曲足関節背屈角度(DKF)-15°。独歩可能で、松尾の動的尖足度3度であった。
【治療経過】
 2歳7ヶ月よりPT開始。2歳9ヶ月から4歳2ヶ月に、4回のギプス療法を実施し、治療前後でDKE6°DKF8°の改善を得た。2歳9ヶ月で短下肢装具、4歳2ヶ月で夜間装具を作製。PTでは、ギプス療法で得た可動域の維持と、踵接地での荷重経験を考えたアプローチを行った。4歳4ヶ月から5歳5ヶ月に、5回のギプス療法を実施し、治療前後でDKE17°DKF12°の改善を得た。最大24週可動域改善は維持できたか、ギプス療法の回数を増すごとにPT場面で踵接地困難、足関節の外反方向へのくずれ、立位・歩行時の後足部外反、内側縦アーチ低下、装具内での踵の浮き、皮膚の発赤も観察され始めた。5歳11ヶ月、身長118cm、DKE-40°DKF-15°となり、観血的治療実施。術後はDKE5、DKF15°となった。
【考察】
 観血的治療が低年齢である場合、尖足再発は高率であるとされる。本症例は初診年齢が2歳7ヵ月で、高度の尖足を示し、観血的治療を見据え、ギプス療法を組み合わせた保存療法を開始した。ギプス療法後は、可動域改善を得たが、実施回数を増すと維持期間は短縮した。ストレッチを行っても、アキレス腱の弛みを得ることは難しく、治療効果が得られにくくなった。これは症例の、独歩可能で運動能力の高さと身体の成長が大きく関わっていると考えられた。活動性が高く、より底屈筋力が高められたと推察される。また観血的治療時は就学前であり、成長期を迎えて、初診時から身長は25.5cm伸びた。この時期では、骨の成長と筋の成長の差が著しくなったと考えられた。これらが治療効果に影響を及ぼしたものと考えられる。保存療法に固執し観血的治療の時期を逸すると、舟底足変形を伴う外反扁平足や反張膝の出現がみられるとの報告もあり、本症例でも観血的治療を5歳11ヶ月で行った。3年4ヶ月に渡り、観血的治療を遅らせる効果はあったと判断している。
【まとめ】
 観血的治療を見据え、ギプス療法を組み合わせた保存療法を3年4ヶ月に渡って行った。保存療法に固執することなく、治療効果の変化を捉え、適切な時期での観血的治療が必要である。
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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