抄録
【はじめに】
今回、自動車事故により、左腓骨頭開放骨折を受傷し、重度の足関節拘縮を呈した症例を担当した。他の部位への手術によるリハビリの長期中断や、足関節内反尖足位での歩行の習慣化などのために、機能改善が十分にできず、さらに股関節の可動域低下、腰痛発生など他部位への2次的な障害を起こしてしまった。そのため、足関節の機能訓練を行うとともに、屋内外にて足底板を使用していくことで、日常生活内での歩容改善とそれに伴う2次的障害の改善・予防を図ることができたのでここに報告する。
【症例紹介】
50歳台男性、H18.9.9の早朝、トラック運転中に正面の車に衝突し、受傷。意識不明のまま、A病院に救急搬送され、左腓骨頭開放骨折に対しデブリードマン処置、右橈骨遠位端骨折に経皮的鋼線固定術、顔面開放骨折に神経縫合、骨接合術が施行された。同夜に左下腿コンパートメント疑いにて、筋膜切開術施行。翌日に腓骨神経麻痺を認めている。10日後に意識が戻るが、事故前数日の記憶がない状態であった。H19.9.22リハビリ開始。H18.10.11に下腿部の植皮術施行にてリハビリ中止。H18.11.2に足継手付の短下肢装具装着にて当院に外来転院し、リハビリ再開となる。
【理学療法アプローチ】
初期評価にて足関節に重度の拘縮を認め、足関節を中心にリハビリ行った。その後、足関節の機能は改善していったが、H18.12.31に事故後の硬膜下血腫の除去術のためB病院に入院、再びリハビリ中止となる。H19.1.22より当院にてリハビリ再開するが、足関節拘縮の重度化、股・肩の拘縮、腰痛が見られた。さらに短下肢装具を除去し裸足にて歩行していたため、足根中足関節にて荷重する内反尖足位の歩行が習慣化してしまい、さらなる足関節拘縮の重度化を招いてしまった。そのため、一端、以前の短下肢装具歩行に戻し、足関節を矯正位とし生活して頂いた。また、屋外用の補高靴と屋内用の足底板を作成し、装着を徹底した。それにより、足関節の背屈・外反誘導を行い、全身に悪影響を及ぼしていた歩容の改善が見られ、足関節の機能改善と、2次的障害への改善・予防を図ることができた。
【考察】
足関節が拘縮した場合、強い制動を持つ靱帯や狭い関節包、足部の密な構造のため、他の関節よりも可動域の改善は難しい。本症例でも、重度の拘縮を呈し、受傷後長期間を経過しており、さらに継続的なリハビリが困難であったため、拘縮のスムーズな改善は困難であった。そのため、屋外用の補高靴・室内用の足底板を作成し、終日の内反尖足位の矯正・足底への感覚を与えることで機能改善を認め、さらなる2次的障害に対しても改善・予防することができた。このように、その関節を使用しやすい環境を足底板などを用い、理学療法士が作ることで、関節の機能改善とともに、その症例の2次的障害の改善・予防が図れるのではないかと考えた。