九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 019
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車椅子座位時の減圧方法について
~手作りマットの作成~
*石見 美保子
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キーワード: 褥瘡, 減圧, 車椅子
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抄録

【目的】
 当施設で使われている車椅子は、折りたたみ車椅子がほとんどだが、この車椅子は折りたたみを可能にするため、座布と背布がパイプに張られた状態となっている。長時間にわたって、生活用具として使用する場合、座布と背布はしだいにハンモックのようにたるんでくる。このたるみは前後左右の身体傾斜を誘発し、また、たるんだ状態で連続座位を1時間以上とることは、1点に圧が集中するため、臀部に負担をかけることになる。そこで、当施設リハビリスタッフは、2年前より、たるみのある車椅子に座った時の減圧を考え、コスト負担をかけずに作成できる車椅子マットに取り組んだ。
【方法】
 施設近隣の工場から、廃材となったポリスチレンフォーム保温板という発砲スチロール状の板を利用して作成した。まず、車椅子座面の幅に合わせて板をカットし、さらに、臀部が接する部分を半円にカットする。これを車椅子座面上に乗せるが、座面たるみ部分をなくすため、半円にカットした残りの板を裏に貼り付ける。このように作成したマットを座面に敷くことで平坦な座面を作ることができた。材料の板は発砲スチロール様の素材で、カッターで簡単に切り取ることができ、廃材のためほとんどコストがかからない。
【結果】
 車椅子座面への重力負荷で考えると、たるんでいる車椅子に座った場合、臀部にかかる圧は臀部中心部へ集中し、圧は分散されない。しかし、作成したマットは平面となるため、マットと臀部が接触する部分に均等に圧がかかり、分散することができた。また、たるみのある車椅子は、大腿部と座面との間に隙間が生じやすい。しかし、作成したマットをつけて座ると大腿部と座面が接触でき、臀部から大腿部まで広い面積で座ることが可能となる。よって、より圧を分散することができた。実際にハイリスク者に使用してみたところ、尾骨部に1cm大のビランがあり約1年間、処置を繰り返していた方が、作成したマットを使用し、2ヵ月後には改善、その後再発はみられていない。
【考察】
 今回、作成したマットは、老朽化した車椅子に対する工夫として有効な方法であり、車椅子のたるみによる、骨突出部への圧集中を防ぐことにつながったと思われる。また、短期入所など一時的な使用として活用できると思われる。しかし、圧分散効果としては限界があり、さらに工夫することが求められる。褥瘡改善には減圧だけでなく、基本的なケアや予防をふまえ、日々関心をもって取り組んでいきたいと思う。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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