九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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重症者の胸郭の変形と呼吸機能の関係
*藤井 満由美久保田 珠美福屋 まゆ美末廣 淳廣瀬 賢明武智 あかね
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抄録

【はじめに】
自力での寝返りといった姿勢変換が困難な重症心身障害者(以下重症者)は、同一の姿勢で過ごさざるを得ないため、胸郭の変形を引き起こしやすい。
今回、姿勢ケアの1つの指針とする目的で、胸郭の形態及び呼吸機能の評価を行い、姿勢変換能力の差が与える影響について若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象・方法】
対象は、当センターに入所及び通園している座位保持が困難なGMFCSレベルVの30名(男性21名、女性9名、平均年齢32.0±14.8歳)とした。疾患名は、脳性麻痺24名、低酸素性虚血性脳症2名、その他4名である。背臥位にて、胸郭の幅と厚さを計測し、扁平化の評価として胸郭の厚さ/幅比率を出した。また呼吸機能はSpO2・心拍数・ETCO2・呼吸数・1回換気量を計測した。
対象を、姿勢変換が不可能な群(以下不能群)18名と側臥位または腹臥位までの姿勢変換が可能な群(以下可能群)12名の2群に分け検討した。
【結果】
不可能群の胸郭厚さ/幅比率は0.65±0.07、可能群は0.72±0.08で、有意差が認められた(P<0.05)。呼吸機能では、SpO2・ETCO2・1回換気量には有意差が認められなかった。心拍数においては不可能群が81.0±18.7回/分 、可能群は67.3±7.6回/分、呼吸数においては不可能群が24.5±8.3回/分、可能群は17.8±4.6回/分となり、いずれも有意差が認められた(P<0.01)。
【考察】
今回の結果では、不可能群は可能群に比較して胸郭が扁平化していることが明らかとなった。また不可能群は可能群に比較し、有意に心拍数と呼吸数が多くなっていた。今回、1回換気量には差がなかったことから、不可能群では胸郭が扁平化していることで呼吸に必要な胸郭の前後運動が乏しくなり、心拍数と呼吸数を増加させることで身体に必要なガス交換を補っているのではないかと考える。
また、可能群の胸郭の厚さ/幅比率は0.72で、山本らの報告による健常者での平均値と差はなかった。GMFCSレベルVのなかでも、姿勢変換ができるか否かが胸郭の変形や呼吸機能の悪化に影響を与えるのではないかと推測される。
今後、特に姿勢変換が困難な重症者に対しては、胸郭の形態や呼吸機能を定期的に評価し、胸郭の扁平化による呼吸状態の悪化が起こらないよう、姿勢ケアを実施していく必要があると考える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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