九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 123
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TKAにおける、当院待ち時間で行う1ヶ月間のDYJOC・筋力増強トレーニングがバランス・疼痛・ADLに与える影響について
*轟原 与織小城 琢朗(MD)西村 謙一(MD)
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抄録

【はじめに】
 本研究は、当院待ち時間に行うDYJOC・筋力増強トレーニング(以下、トレーニング)が、バランス・疼痛・ADLに与える効果を検討することを目的とし、日常生活及び屋外歩行の自立しているTKA患者を対象に、トレーニングを指導し1ヶ月間実施した。
【対象】
 研究の目的を説明し、1ヶ月間の通院リハ時、PTに加えトレーニングの実施に同意した者をトレーニング群(以下、T群)。トレーニングを行わずPTのみ実施し、測定に同意した者をコントロール群(以下、C群)とした。
T群:女性7名、平均年齢76.1歳、平均通院リハ回数10回、平均術後経過期間17.5ヶ月。
C群:女性7名、平均年齢70.1歳、平均通院リハ回数8.2回、平均術後経過期間23.5ヶ月。
 両群とも他部位に整形外科的・神経学的疾患のないものを対象とした。
【方法】
 トレーニング前と1ヶ月トレーニング後との比較・検討を以下の評価法を用いて行った。
a)Functional Balance Scale(以下、FBS)
b)Visual Analogue Scale(以下、VAS)
c)Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis index(以下、WOMAC)
 それぞれの値をトレーニング前後の比較はt検定、相関関係はpeasonの相関係数を用いて有意水準5%にて検討を行った。
【訓練内容】
I.足趾把握訓練  
II.視覚誘導型不安定板訓練  
III.等張性大腿四頭筋訓練(重錘2kg)
(各5分 椅子坐位)
【結果】
1.トレーニング前後での比較
1)FBS:T群有意差あり・C群有意差なし。
2)VAS:T群・C群有意差なし。
3)WOMAC:T群・C群有意差なし。
2.各項目の相関関係
1)術後経過期間とFBS:T群相関なし(r=0.31)・C群相関なし(r=-0.02)
2)術後経過期間とVAS:T群相関あり(r=-0.89)・C群相関なし(r=-0.34)
3)術後経過期間とWOMAC:T群相関あり(r=-0.88)・C群相関なし(r=-0.6)
【考察】
 本研究結果で、トレーニング前後の比較は、FBSがT群に有意差を認めたが、VAS・WOMACは両群に有意差を認めなかった。各項目の相関関係は、T群で術後経過期間とFBSに有意な相関はないが、VAS・WOMACに負の有意な相関があった。これらの結果より、本研究のトレーニングの実施でFBSが改善されたと考えられる。また、術後経過期間が経つほどVAS・WOMACは改善されると考えられる。
 当院でのリハビリは、可動域訓練・筋力訓練を中心に行っているが、バランスに対する訓練は不十分である。在宅での転倒に対する予防として、バランスに対する考慮が必要と考えられる。今後、バランスを高める訓練を加えることや、家庭での自主トレーニングより、転倒への配慮につながると考えられる。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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