九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 161
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41度の前腕浴は自律神経機能において性差を認めるか
*上川 毅康田中 仁史鈴木 大介大重 匡
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キーワード: 前腕浴, 性差, 自律神経機能
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抄録
【目的】
全身浴、部分浴などの温熱療法の急性効果は一般的に心拍数の増加をもたらし、交感神経優位になるといわれている。男女においては、代謝量、皮下脂肪、汗腺機能において性差を認めることから、部分浴(以下前腕浴)による温熱効果に性差を認めるのではないかと考え、41℃の単純泉による前腕浴を施行することにより自律神経機能において、性差が認められるか検討を行った。
【対象】
健常若年男女10名(内訳 男性5名、女性5名)
男性年齢29.6±4.6歳(Mean±SD)〔24-36〕 女性年齢24.6±3.4歳(Mean±SD)〔22-29〕
【方法】
前腕浴の方法は、椅子坐位で十分な安静後に41℃の単純泉にて左前腕部の前腕浴を10分行った。浴槽内の水温は温浴療法用装置 BITHATIZER BT-5Nを使用し一定の温度に保たせた。浴前と浴後の測定は、日本コーリン 血圧脈波検査装置 from PWV・ABIを用いて心拍数、RR間隔平均、RR間隔変動係数を測定した。室内の気温は20.7±0.7℃、湿度は30~40%に保たれた。統計処理は、安静時と前腕浴10分経過時の2群間で、ノンパラメトリック検定(対応のあるwilcoxon検定)を行った。有意水準についてはP<0.05を有意と考えた。
【結果】
安静時を基準として10分後の数値を比較した結果、男性の心拍数は、安静時:69.3±8.9 10分後:74.0±10.4と増加し危険率5%にて有意差を認めるのに対し、女性は安静時:70.6±4.0 10分後:67.8±4.2と減少し危険率5%にて有意差を認めた。RR間隔平均値は、男性は安静時:881.3±105.8 10分後:824.4±111.3と減少し危険率5%にて有意差を認めるのに対し、女性は安静時:853.2±49.1 10分後:886.4±51.6と増加し危険率5%にて有意差認めた。RR間隔変動係数は、男性は安静時:5.5±3.1 10分後:3.8±2.9と低下し有意差を認めるが、女性においては安静時:5.4±2.1 10分後:4.8±1.4で有意差を認めなかった。
【考察】
温熱療法の急性効果として、体温上昇、心拍数増加もたらし交感神経優位になるといわれているが、今回の結果、男性は心拍数増加、RR間隔平均値低下、RR間隔変動係数低下で交感神経優位となったが、女性において心拍数は低下し、RR間隔平均値は増加するという温熱療法の急性効果とは逆の結果となった。この結果は女性が、男性と比較して皮下脂肪が多く、皮膚の断熱性に優れていることから前腕浴による温熱効果を得にくかったのではないかと考える。
【まとめ】
今回の研究の結果、心拍数、RR間隔平均値において性差を認める結果となった。しかし、本研究では10名という少ない対象人数で行ったこと、先行研究では反対の結果が報告されていることからも、データ数が少なく信頼性の高い結果は得られなかったと考えている。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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