九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 67
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「心」を看る
~外来リハビリテーション患者の心理的側面~
*岩本  英介吉田  康雄遠藤   由紀黒瀬  未来佐溝   良美長田  逸子
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抄録

【はじめに】
 当院では外来リハビリ(以下、外来リハと略す)を実施しているが、通院患者の中には発症から長期の者も少なくなく、維持的なリハビリテーションの対象者も多い。外来リハにおいては、身体機能面に対応することがほとんどであるが、日々患者と接する中で、患者の抱える心理的問題への対応は十分とは言えないのではないかと感じる。そこで今回、患者の抱える心理面に着目し、うつの有無、生活満足度から患者の抱える心理的問題を分析したのでここに報告する。
【対象と方法】
 平成19年8月31日時点で当院外来リハに通院しており、協力可能であった患者50名にZUNG、QOL26を実施(男性21名 女性29名、脳リハ14名 整形36名、平均年齢66.6±12.7歳、平均外来継続期間1450±1110日、日常生活自立度Jランク45名 Aランク5名、Barthel Index平均96.5点)
【結果】
 ZUNGの結果、うつの者は全体では28名(56%)、男性10名(35.7%)、女性18名(64.3%)であった。疾患別では脳リハ8名(28.6%)、整形20名(71.4%)であった。
 QOL26の結果、QOL平均値は標準偏差(以下S.Dと略す)範囲以上2名(4%)、S.D範囲内34名(68%)、S.D範囲以下14名(28%)であり、男女別・疾患別においての有意差は認めなかった。項目別にみると、身体機能面ではS.D範囲以下21名(42%)、心理面ではS.D範囲以下18名(36%)と高い割合を示すが、社会面、環境面においては、社会面3名(6%)、環境面7名(14%)とS.D範囲以下の割合は低かった。また、身体機能面のS.D範囲以下は男性6名(28.6%)に対し、女性15名(71.4%)であり、女性の満足度が低く、疾患別にみると脳リハ7名(33.3%)に対し整形14名(66.7%)と、整形疾患の満足度が低い結果となった。心理面のS.D範囲以下は男性7名(38.9%)に対し、女性11名(61.1%)であり、女性の満足度が低く、疾患別にみると脳リハ7名(38.9%)、整形11名(61.1%)と、整形疾患の満足度が低い結果となった。
 ZUNGとQOL26の関係については、うつの者は社会・環境面に比べ、身体機能・心理面で満足度が低いという結果であった。
【考察】
 ZUNGとQOL26の結果から、日常生活は自立レベルであっても、身体機能面と心理面において各個人の価値観からQOLに不満を持ち、その大半はうつ傾向にあるとわかった。これらの要因には、身体の不自由や痛み、疲労からくる日常生活動作への支障、仕事などの活動制限による不満があるのではないかと考える。また、障害からくる自分の容姿の受け入れができないこと、病気・障害の治癒や今後の生活・人生の不安、絶望、落ち込みなどの否定的感情も要因のひとつではないかと考える。外来リハには、日常生活のリズム作り、地域との繋がり、心理面の共有を図る場としての役割がある。そしてセラピストには患者のニードに応えた身体機能・能力面に対してのアプローチだけでなく、患者と共にできることや役割を模索し、前向きな考え方ができるように支持的にサポートすることが、心理的問題の軽減に繋がるのではないかと考える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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