九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 85
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血栓予防法と静脈血流速度の変化
*小森 博人福島 慎吾内田 学
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抄録

【目的】
2004年4月より肺血栓塞栓症予防管理料が保険適応となり、理学療法分野においても早期離床や積極的な運動、弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法による深部静脈血栓症の予防が推奨されている。しかし、過去の先行研究においては血栓塞栓予防の効果について見解がまちまちである。当院においても各診療科間での予防法が様々であり、統一的な方法が確立していないのが現状である。本研究は、当院にて実施されている血栓予防法の中で最も効果的な手法について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常男性16名、平均年齢27±6.4歳(平均身長168.6±4.0、平均体重62.8±7.4)であり過去に血管病変などの既往のない者を対象とした。測定機器は超音波診断装置(PHILIPS社HD11)を用い、安静時、弾性ストッキング(TORAY社FineSupport)着用時、間欠的空気圧迫装置(TERUMO社VenoStream)装着時、自動運動時、深呼吸時の右大腿静脈の血流速度をパルスドプラにて測定した。自動運動は背臥位にて膝関節を伸展位とした状態での足関節底背屈で運動速度は40回/分(以下自動運動40)、80回/分(以下自動運動80)とした。対象には本研究の主旨を説明し同意を得た後に測定を行った。統計解析は一元配置分散分析を行い、得られた主効果について多重比較(Bonferroni)を用いて検討を行った。なお有意水準は5%とした。
【結果】
大腿静脈の血流速度は、安静時30.7±5.2cm/s、弾性ストッキング着用時29.1±6.6 cm/s、間欠的空気圧迫式装置装着時50.4±19.3 cm/s、自動運動40で 50.7±21.7 cm/s、自動運動80で 59.3±38.4 cm/s、深呼吸時45.3±15.3 cm/sであった。安静時-自動運動80(p=0.03)、及び弾性ストッキング-自動運動80(p=0.01)間において有意差を認めた。他の測定条件間には有意差は認められなかった。
【考察】
本研究の結果から、受動的方法おいては有意差が認められなかった。静脈系は容量血管といわれているように含有血液量が大きい。また下腿の静脈血貯留の大部分は筋の深部静脈であり、周辺の筋組織からの圧力により制御されている。このことから受動的方法では深部静脈に対する圧迫力が不十分であったのではないかと考えられた。また自動運動40においては他の条件と比較して高い傾向を示したものの有意差を認めなかった。一方、自動運動80においては有意差を認めた。これは筋収縮回数が血管の収縮に影響したものと考えられた。これらの事から血栓予防の為の血流速度の上昇にはなるべく速い筋収縮の必要性が示唆された。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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