九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 96
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筋活動量からみた筋力調節課題におけるKR付与頻度の相違
*渡利 一生吉本 龍司山下 小百合後藤 剛中原 雅美村上 茂雄漆川 沙弥香甲斐 悟
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抄録

【目的】
Schmidtらによると、運動学習における結果の知識Knowledge of Result(以下KR)の付与頻度は、1試行ごとよりも数試行ごとのほうが効果的であると報告されている。
今回、筋力調節課題を用いてKR付与頻度を変えた場合に、筋活動量においても運動学習の効果に相違がみられるかを検証した。
【対象と方法】
健常男性10名(平均年齢21.6±4.0歳)を被験者とし、KRを5回付与する群(5回KR群5名)と毎回付与する群(毎回KR群5名)に分けた。
課題はアナログ背筋力計を用い、最大筋力の20%の力で筋力調節することとした。はじめに練習相としてKR付与を行わず5回試行し、運動学習前の基準値とした。その後、学習相としてKR付与を行いながら30回試行し、運動学習を実施した。5分後に想起相としてKR付与を行わず5回試行し、運動学習後の保持能力を示す値とした。KRは直前の背筋力計の測定値をkgで口頭にて伝えた。
筋電図の導出筋は左側の広背筋、傍脊柱起立筋、大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋、下腿三頭筋、前脛骨筋の7筋とした。筋活動電位測定には表面筋電計を用い、1試行ごとの最大筋活動電位peak electromyography(以下peak EMG)を算出し、5試行分の平均peak EMGを求めた。
【結果】
背筋力計の測定値と平均peak EMGの相関は、5回KR群が広背筋、傍脊柱起立筋、大殿筋、大腿二頭筋、腓腹筋にみられ、毎回KR群が広背筋、傍脊柱起立筋、大腿二頭筋、腓腹筋にみられた。
背筋力計の測定値は、5回KR群、毎回KR群とも、練習相と学習相および練習相と想起相に有意差がみられた。
平均peak EMGは、5回KR群では広背筋、傍脊柱起立筋、大殿筋、大腿二頭筋、腓腹筋が練習相と学習相、練習相と想起相に有意差がみられた。毎回KR群では広背筋、傍脊柱起立筋、大腿二頭筋、腓腹筋が練習相と学習相、練習相と想起相に有意差がみられた。
【まとめ】
背筋力計を用いた筋力調節課題での運動学習は、KR付与頻度にかかわらず短期間のうちに学習効果が現れ、5分後にも保持されていた。筋電計の結果から、5回KR群では運動学習に参加する筋が多かった。
また、背筋力の筋力調節課題時には、脊柱起立筋だけでなく、多くの共同筋が関わっていることが明らかになった。このことは、運動学習を行う上で各筋が協調した制御を行っていることを示し、各部の障害が運動のパフォーマンスに影響を与えることを示唆すると思われた。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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