抄録
【はじめに】
国民健康・栄養調査によると,糖尿病が強く疑われる人約890万人,糖尿病の可能性が否定できない人は約1320万人で合わせて約2210万人と推定された.これに対して生活習慣病の予防を目的とした「健康日本21」が策定され糖尿病に対して,予防を目的とした健康施策がなされている.当院では外来患者様を中心に二次予防目的で糖尿病教室を開催している.この度,福岡県糖尿病療養指導士(以下CDE)を取得し,院外での糖尿病イベントに参加する機会を得ることにより,ハイリスクアプローチを目的とした糖尿病教室だけではなく,ポピュレーションアプローチによる社会全体的な啓蒙の必要性と共に,理学療法士が果たす糖尿病療養指導の重要性を感じた.そこでCDEの活動について紹介する.
【CDEの活動】
有資格者を中心とした県内病院勤務のスタッフ中心に市民糖尿病教室,健康フェア,ウォークラリーなど地域の活動を幅広く行っている.「運動」をテーマにしたウォークラリーでは福岡市内運動公園にて多数の参加をいただいている.スタッフは約80名で医師,看護師,薬剤師,栄養士,検査技師,理学療法士,作業療法士,健康運動指導士と多岐にわたる.
【介入内容】
対象者は糖尿病の患者様,御家族,友人とし糖尿病罹患者以外の参加も募っている。メディカルチェック,運動についての説明,準備体操後,設定されたコース(1.6km,3.2km,4.8km)をグループごとに順次スタートする.ラリー途中に糖尿病のクイズ・エアロビクスがあり糖尿病の知識を深め,ウォーキング以外の有酸素運動を体験していただく.ゴール後,メディカルチェックを行い,クイズの解説,運動についての講義が行われる.理学療法士は主にエアロビクスなどの運動と解説に携わる.
【まとめ】
毎年100名近い参加者にてウォークラリーを開催し糖尿病の運動の実際と正しい知識を得る場を提供している.今年度は更に参加者が増加しており糖尿病への関心の高さが窺える.ウォークラリーは血糖コントロールのみに留まらず,一般市民も含めた糖尿病についての知識・理解を深め,仲間作りやウォーキングの達成によりセルフエフィカシーを高める.患者様にとって運動療法実践は生活習慣の大きな修正で受身的な指導では不十分で,自己管理能力を高めていくにはエンパワーメントに基づいた係わりが重要である.糖尿病予防・治療の実践・啓蒙イベントに対する理学療法士が果たす役割は非常に重要で今後更なる参加ならびに活動が求められる.
次回ウォークラリーでは新しい試みとして体験型体力測定コーナーを設置し現在の運動能力を認識して今後の運動の参考になればと考える.今後は,院内においても一次予防を考慮した介入を展開したい.