九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 145
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坐位重心動揺における徒手療法の影響
*廣瀬 泰之荒木 秀明
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抄録

【はじめに】
 慢性期脳卒中後遺症患者(以下、片麻痺患者)が、長期間の四肢体幹筋力不全による不良姿勢にて座位重心が後側方へ変位しているのを頻繁に目にする。このような症例では長期間動きのない患側骨盤に機能障害が生じ、不良姿勢を呈していることが推測される。我々は骨盤機能障害に対してモビライゼーション(以下、治療)を施行し、不良姿勢や機能が改善することを経験している。今回、骨盤帯の治療の効果について坐位姿勢を中心に評価・治療を行い、20代成人と比較、検討を加えたのでここに報告する。
【対象と方法】
 対象は発症から3ヶ月以上経過し、指示応答と理解が可能、自力端坐位が可能な患者15名。男性10名、女性5名。平均年齢81±8.12歳。障害側は右片麻痺8名、左片麻痺7名。下肢Br.stage別では、II 2名、III 1名、IV 3名、V 5名、VI 4名である。また、20代成人は骨盤非対称性を有する25名で、男性12名、女性13名。平均年齢23.8±2.05歳である。方法は、評価項目として骨盤アライメント、自動運動での疼痛、仙腸関節のJoint play、重心動揺を測定した。重心動揺はアニマ社製GS31用いて60秒間の静止坐位で計測した。過少運動性を確認後、仙腸関節の治療を施行し、治療にて骨盤対象性に復した後、再度坐位姿勢で骨盤アライメント、疼痛、重心動揺を評価・計測し、治療前後で比較した。統計処理には疼痛の効果判定をχ二乗検定、重心動揺の計測結果にはt検定を用いた。なお、対象者には今回の研究の主旨を説明し、同意を得ている。
【結果および考察】
  片麻痺患者において、骨盤の非対称性は全例で認められた。Joint playテストの結果は患側に過小運動性を有する者が15名中14名、腰痛を有する者は8名だった。治療で疼痛を改善できたのは7名。χ二乗検定で危険率5%にて有意差あり、治療での骨盤の対称性改善による疼痛緩和は有効であると判断する。成人25名中12名に腰痛が認められたが、治療にて11名は疼痛軽減・解消された。χ二乗検定にて危険率1%にて有意差あり、治療は有効であると考える。片麻痺患者の重心動揺では、総軌跡長、単位軌跡長、外周面積、XY軸方向への動揺平均中心には治療前後で有意差は認められなかったが、単位面積軌跡長においては危険率1%で有意に減少を認めた。しかし、20代成人では、骨盤非対称性あったにもかかわらず、重心動揺には、すべての計測値において、治療前後での有意差は認められなかった。治療は骨盤のアライメントを対称性に復させ、腰痛を軽減させる効果が認められた。片麻痺患者について、改善が予測された後側方重心変位は、改善傾向が認められるものの有意差はなかった。単位面積軌跡長に有意差が認められたことは固有受容器による反射性姿勢制御機能の改善が示唆され、骨盤が対称性に復したことが制御機能の改善につながったものと考えられる。今後は上部体幹も視野に入れ、片麻痺患者のADLへの影響も考慮していきたい。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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