九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 147
会議情報

姿勢変化に伴う脊柱彎曲角の変化
*冨永 浩一村田 伸堀江 淳松本 武士吉浦 勇次北嶋 秀一甲斐 美穂田中 良和角 典洋
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
 脊柱の形状を測定した研究が報告されるようになった。その形状を計測する際には、座位で行われる場合と立位で行われる場合がある。ただし、その姿勢の違いが脊柱の形状に及ぼす影響について検討したものは少ない。そこで今回、地域在住女性高齢者を対象に座位、立位の脊柱彎曲角の特徴を検討した。
【対象】
 対象者は当院通院加療中で、重度の認知症が認められない65歳以上の女性高齢者44名(平均年齢80.8歳±8.0歳)である。対象者には、研究の内容と方法を十分に説明し、研究参加の同意を得た後、測定を開始した。
【方法】
 胸椎後彎角(第1胸椎から第12胸椎の上下位椎体間がなす角の総和)と腰椎前彎角(第1腰椎から第5腰椎の上下位椎体間がなす角の総和)は、インデックス社製のスパイナルマウスを用いて測定した。このスパイナルマウスは、脊柱の彎曲角度を対象者背部の体表から測定できる機器であり、得られた測定値の信頼性については既に確認されている。測定は、対象者に安楽立位と安楽座位をとらせ、第7頚椎から第3仙椎までをセンサー部を移動して測定し、それぞれ3回の測定から得られた平均値を胸椎後彎角および腰椎前彎角とした。統計処理は、座位と立位における各測定値の比較には対応のあるt検定、測定値の関連はピアソンの相関係数を用いて検討した。なお、統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
 胸椎の彎曲角は座位で平均43.3±12.8度、立位で平均40.5±12.9度、腰椎は座位で平均16.1±16.0度、立位で平均4.0±17.0度であり、ともに座位の方が立位より有意に大きい後彎角が認められた(ともにp<0.01)。ただし、姿勢の変化によるその差は胸椎で平均2.8±0.1度、腰椎では平均12.1 ±1.1度であり、腰椎で著明な差が認められた。また、座位と立位における彎曲角の測定値の関連は、胸椎後彎角(r=0.96, p<0.05)、腰椎前彎角(r=0.82, p<0.05)ともに有意な正の相関が認められた。
【考察】
 今回の結果から、胸椎および腰椎共に立位より座位の方が、後彎角が大きいことが示された。ただし、その差は胸椎より腰椎に著しく、姿勢の変化に伴う脊柱彎曲角の変化は、胸椎より腰椎が大きく関係していると推察された。
著者関連情報
© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top