九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 205
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バランスWiiボードを用いた静止立位時の全足圧動揺計測の試み
*川井田 豊福留 清博(PhD)西 智洋松下 寿史上嶋 明(PhD)
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キーワード: Wii, 重心動揺, バランス
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抄録
【目的】
 重心動揺検査では足圧の中心位置座標(x, y)の動揺に着目して解析されるが,その時間変化(全足圧動揺)については,体重に相当するため,変わらない一定値とも思われてきた.ところが,稲村らにより,全足圧動揺には小さな振幅ながら周期的信号が重畳していることが報告された.興味深いことに,その周期はヒラメ筋の生理的振戦に相当する.現在のところ全足圧動揺について基本的メカニズムは未解明ではあるが,もしヒラメ筋に由来するのであれば,高齢者や片麻痺患者,パーキンソン病患者の転倒の予測評価に結び付く可能性がある.そこで,今回,当研究室で開発したプログラムを用いてバランスWiiボード(以下Wiiボード)により全足圧動揺を計測し探索的研究を行った.
【対象と方法】
 重心動揺計の代替品として,パーソナルコンピューター(以下PC)にBluetoothで接続したWiiボードを用い, Excelのシートに質量と足圧中心座標値の時間依存性を直接記録できるようにプログラミングした.被験者は若年健常人5名とし,サンプリング時間20msで約20sの静止立位状態のデータをWiiボードからPCに取り込んだ.その後,足圧時間変化から直流成分を差し引き,窓関数にHanning関数を使用して高速フーリエ変換(FFT)し全足圧動揺に振戦が含まれていないか検証した.なお,この研究は本大学医学部疫学・臨床研究等倫理委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】
 一例として被験者Aでは,20秒間の平均値と標準偏差は72.0±0.1kgwであった.この平均値が俗にいう体重である.そして,この僅かな分散についてFFTにより得たパワースペクトルに2つのピークを見出した.静止立位状態においても,被験者Aでは約5Hzと約7Hzの振戦を呈していることが判った.
【考察】
 今回の結果から,重心動揺検査と同時に測定される全足圧動揺には先行研究(筋電図,筋音図)で得られた値(8-10Hz)とほぼ同じ振動が含まれ,ヒラメ筋活動に伴う生理的振戦との関連性が疑われる。また2峰性のパワースペクトルが,普遍的であるかは多くの被験者についてデータを蓄積する必要がある。このように,今回得た全足圧動揺に含まれる振動が生理的振戦であるならば,若年者より大きいとされる高齢者の振戦をパワースペクトルの強度から算出でき,転倒リスク評価に利用できる可能性がある.しかしながら,全足圧の値を測定できるに過ぎず,そのため筋電図も併用して振戦箇所を特定する必要がある. 今回報告したように,当研究室が開発したWiiボードを用いたシステムでは,研究目的に限られるものの安価なWiiボードを重心動揺計として利用でき,しかも無線でデータを取得可能なため,場所を選ばずに検査できることから理学療法士・作業療法士にとって様々な応用が可能となるであろう.
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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