九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 212
会議情報

訪問リハビリテーションにおけるパーキンソン病患者とその家族のADL動作能力に対する認識の違いについて
在宅での適切な介助を行うための意識調査
*百田 昌史石田 治久生駒 英長早川 武志高木 桂子水田 聡美橋口 鮎美田尻 香織本江 篤規毛利 誠
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抄録
【はじめに】
 当院では、神経内科を開設しており、訪問看護ステーションでは神経難病患者の訪問リハビリテーションを行う機会が多い。その中でも、特にパーキンソン病患者への訪問リハビリテーションに力を入れている。その際に患者や家族から介助量についての相談を受けることも多く、患者及び家族にそれぞれの介助状況についての調査を行うと、患者自身と家族との間に起居移動動作に対する認識に相違がみられることも少なくない。在宅生活では活動量が低下しやすくなるため、起居動作などを通して動作に必要な筋力等を維持していくことが重要となる。しかし、患者と家族の認識の違いによって「過介助」や「過少介助」を引き起こす弊害が生じる可能性が考えられる。そのため今回、適切な介助量のもと介助を行えるよう、患者及びその家族に対し起居移動動作能力に関する意識調査を行ったため、その結果をここに報告する。
【対象】
 在宅生活を送られているパーキンソン病患者11名(ヤールのステージII~V)及びその家族(または介護者)
【方法】
 患者とその家族それぞれに対して、寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行の4項目についてVisual Analogue Scale(以下VAS)にて評価を行った。「全く出来ない」を0ポイント、「簡単に出来る」を10ポイントとして評価を行い、家族が患者の動作能力を過小評価(家族のVAS+2以上)している割合と、過大評価(患者のVAS+2以上)している割合を調査した。
【結果】
 寝返りは11組中3組(27%)に過小評価、2組(18%)に過大評価がみられた。起き上がりは11組中4組(36%)に過小評価、2組(18%)に過大評価がみられた。立ち上がりは11組中3組(27%)に過小評価、1組(9%)に過大評価がみられた。歩行は11組中2組(18%)に過小評価、2組(18%)に過大評価がみられた。
【考察】
 今回、患者と家族の間で動作能力の認識に差がみられたのは、パーキンソン病の特徴である、日内変動やwearing‐off、すくみや無動(寡動)の影響により一日の中でも動作能力に差が生じるためと考えられる。脳血管疾患や整形疾患等は疼痛の有無や体調の変動により動作能力に差がみられることもあるが、ある一定のレベルでの介助量を定めることが出来る。しかし、パーキンソン病は上記の症状により一日の中でも状況に合わせて介助方法を変更する必要があり、その対応はとても難しい。そのため、一定の介助方法になりやすく、患者と家族の動作能力の認識に相違が生じてしまうと考えられる。
【今後の課題】
 在宅で適切な介助を行えるよう、訪問理学療法士として求められることは、正確な患者の身体能力の評価や、日内変動の把握を行い、それを家族に理解してもらうこと、状況に合わせた家族への介助方法の指導を行うことであると考える。今回の調査を参考に、今後は、家族にも簡単に行える日内変動の把握方法を確立し、また、その時の介助量を数値化していけるよう検討を続けていく。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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