九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 042
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効果的なADLへの取り組みを目指して
~自宅訪問の結果より~
*金城 有香
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キーワード: ADL, 自宅訪問, 住宅改修
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抄録
【目的】
 退院後の在宅生活を考える上で住宅環境を知ることは大切である。今回、自宅訪問で行われた改修箇所を調査することで、ADLへの取り組みの参考になる要素がないか探ってみた。自宅訪問における重要な視点を把握し経験による違いがないようチェックリストの作成に繋げていくことを目的に取り組みの経過を報告する。
【対象】
 平成19年4月から平成20年3月にOTが関わった内の自宅訪問を実施し自宅復帰した134例(男性49名、女性85名、平均年齢75.39±13.39歳)。疾患別内訳は脳血管疾患53名、整形疾患55名、廃用症候群24名、その他2名である。
【方法】
 自宅訪問調査表より改修を必要とした箇所の件数を集計し、半数以上に改修を要した箇所(トイレ、浴室、玄関、寝室)を年齢、性別、疾患別、入院時から訪問までの日数、在院日数、入院時FIMの比較検討を行った。尚、改修としては手すりの設置、福祉用具・福祉機器の利用、段差解消(底上げ、スロープ、踏み台設置)、ドアをカーテンへ変更、家具の配置変え、不整地の整備、敷物の配置変え・撤去、出入口の変更(玄関から勝手口)とし介助指導に関しては除外した。
【結果】
 134例中、トイレ100例、浴室97例、玄関87例、寝室74例、屋外51例、廊下28例、台所7例が改修を必要とした。(※大半は手摺り設置や段差解消)年齢、訪問までの日数、入院時FIMの比較では、訪問までの日数が短いほど在院日数が短く入院時FIMが高い結果となった。また、年齢が若いほど訪問までの期間が長く入院時のFIMの得点も低い。疾患による改修箇所の比較では特に変化は見られなかった。
【考察】
 直接ADL能力を発揮するための改修に比べ底上げやスロープ、踏み台の設置、立ち上がりや立位保持、段差昇降用の手すりの設置や玄関での椅子の設置、浴室でのシャワーチェアの利用も多く見られた。そのことより、座位から立位、立位から座位など姿勢の変化が必要な場所や段差がある箇所が殆どであり基本動作や応用動作の取り組みの強化が必要とされることが考えられる。
 入浴動作ではサービス利用もある中、在宅における入浴の必要性も多く入院時からの入浴動作に対する取り組みも必要であると思われる。
 今後、自宅訪問を行うにあたって経験による環境調整の視点のずれが生じないようチェックリスト作成も試みていく必要がある。
【まとめ】
 年齢、性別、疾患に関わらず、トイレ・浴室・玄関・寝室の環境を考慮し、バランス能力や直接的なADLへの働きかけを増やした治療計画を進めていく。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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