九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 065
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FABを使用しての高次脳機能評価
~脳卒中急性期病院での検査を通して~
*秀島 樹育脇田 美樹樫山 こずえ管田 和幸
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抄録
【はじめに】
 臨床場面において、くも膜下出血や低酸素脳症など責任病巣がみられなくても高次脳機能障害があり、特に記憶、注意低下など前頭葉機能障害を呈することが多い。文献でも「後頭葉や頭頂葉の損傷により、責任病巣だけでなく、前頭葉機能にも影響を与えることがある」と書かれている。これらのことから、前頭葉機能検査を使用して、他の高次脳機能障害が評価できるのではないかと思い、前頭葉機能検査Frontal assessment battery(以下FAB)を使用して検討した。その結果を以下に報告する。
【方法】
 対象は脳卒中急性期の患者で、平均年齢61.5±18.1歳(38歳から87歳)の男女20名(男性13名、女性7名)で、くも膜下出血3例、脳出血7例(左右の頭頂葉、側頭葉、後頭葉)、脳梗塞8例(左右の頭頂葉、側頭葉、後頭葉)、脳腫瘍2例を対象とし、意識レベルはJCS:1~2、上肢機能は検査上の動作が可能なレベル(Br-StageV以上を含む)、コミュニケーションでは日常会話可能なレベル(日常会話可能な軽度失語症を含む)とした。FAB検査後、損傷部位から疑われる高次脳機能障害とFABの結果を比較し、検証した。
【結果】
 検査の平均点数は18点満点中11±5.1点(くも膜下出血13.3±4.1点、脳出血11.7±6.5点、脳梗塞10.5±4.1点、脳腫瘍9±2.8点)となった。注意低下の疑いがある患者では、全検査にまばらに減点がみられたが、検査3の減点が共通にみられた。失行の疑いがある患者では、検査3~5に減点が共通してみられた。記憶低下の疑いがある患者では、検査4~5に減点が共通してみられ、他の検査では意識レベルにより点数の差がみられた。失語症の疑いがある患者では、検査1~2のみ減点がみられ、他の検査では満点の場合もあった。しかし、失認に関しては、他の高次脳機能障害と同じ様な減点の共通点はみられなかった。この結果から、責任病巣から疑われる高次脳機能障害とFABによる検査の結果に、一連の共通点がみられた。
【考察】
 今回の試みでは、前頭葉以外の損傷部位でも前頭葉機能に支障をきたしているのではないかと考え、FABを使用することで、減点となった内容から注意低下、失行、記憶低下、軽度失語症を検出できたと考えられる。高次脳機能を考える上で、橋本によると「脳機能はそれぞれ個別に存在しているわけではなく、相互に影響を及ぼし合っている」とあり、責任病巣がある場合では、責任病巣からの間違った情報が最終的に前頭葉から出力として出され、異常行動が起こっていると考えられる。今後も継続して高次脳機能障害のスクリーニング検査を検討し、急性期から高次脳機能障害へアプローチできる体制を作っていきたい。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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