抄録
【はじめに】
当院は亜急性期~維持期までのリハビリテーション(以下リハ)を担う総合病院で、通所リハ、訪問リハ、訪問看護、訪問介護等の在宅部門が併設されており、退院後も患者様に継続した医療の提供を行い、地域に貢献する病院を目指している。しかし、退院後の生活状況まで把握できていないのが現状である。そこで今回当院を退院後、現在通所リハを利用している方のADL能力の比較・検討を行なったので報告する。
【対象】
当院を退院後、通所リハ開始となった利用者47名(男性16名、女性31名、運動器疾患23名、脳血管疾患21名、その他3名、平均年齢79.72±8.94歳)とした。
【方法】
通所リハ利用者の退院時と現在の在宅生活でのADL能力をFunctional Independence Measure(以下FIM)を用い得点化し、総合点・運動項目・認知項目に分け比較検討した。またBarthel Index(以下BI)の総合点でも比較検討した。統計学的処理はWilcoxon符号付順位和検定を用い、有意水準は危険率5%未満とした。退院時と現在において要介護認定の変化の有無も比較した。尚、本研究は利用者に研究の意図を説明し了承を得て実施した。
【結果】
FIMの総合点は退院時99.60±21.78点、現在100.49±21.75点、運動項目点は退院時70.47±17.09点、現在71.60±16.52点、認知項目点は退院時29.26±6.73点、現在28.89±6.99点であった。B Iの総合点は退院時76.60±18.40点、現在76.06±18.76点であった。FIM、BI共に全ての項目において有意差は無かった。介護度については、重度となった例が7名、不変例が30名、軽度となった例が10名であった。
【考察】
結果より退院時と在宅生活でのADL能力に有意差は認められず、通所リハの目的である心身機能の維持回復、日常生活の自立の援助が退院後も保たれている事が示唆された。当院通所リハではセラピストによる個別リハに加え、自主訓練としてマシンを用いた四頭筋訓練や上肢機能訓練、エルゴメーター、セラバンドやボールを用いた筋力増強訓練、バランス訓練等が個人ノートを用いて実施されている。身体機能面では前述した訓練内容にて維持できていると考えられる。更に今後の課題として、身体機能面のみならず、認知機能面に対するアプローチの導入や、在宅部門・入院部門間でのより積極的な情報交換や連携が大切であると考える。