九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 189
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脳卒中片麻痺者の麻痺側下肢最大荷重動作と歩行能力の関係~第1報~
*清水 裕貴長田 悠路大田 瑞穂坂口 重樹田邊 紗織
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抄録

【はじめに】
 脳卒中片麻痺者の麻痺側下肢への荷重量が歩行速度や歩行自立度に関連することが知られている。一方、麻痺側下肢への荷重肢位でバランスを崩すことも多く、麻痺側下肢の支持能力だけでなく、姿勢保持能力も歩行に関係することが予想される。
 脳卒中片麻痺者の麻痺側下肢最大荷重動作を経時的に計測し、歩行速度と麻痺側下肢荷重量及び荷重姿勢の関係を検討した。
【対象】
 対象は、当院に入院中の脳卒中片麻痺患者4名(麻痺側:右2名, 左2名、平均年齢:62.0±8.2歳、下肢Brunnstrom stage:3;1名,_5;2名,_6;1名)。約1ヶ月毎に、それぞれ2~4回の計測を行った。対象者の条件は、立位保持可能かつ見守り下で10m裸足歩行可能レベル以上とした。また、高次脳機能障害や認知症等により指示理解が困難な者は除外した。尚、本研究は当院の倫理委員会より承認及び対象者からのインフォームドコンセントを得た後に実施した。
【方法】
 課題は、静止立位から麻痺側下肢への最大荷重動作、動作指示は「両肩を水平にしたまま、右(又は左)側の足に最大限体重をかけてください」とした。計測は、三次元動作解析装置(VICON MX12)と床反力計(AMTI社製)を使用し、重心位置、床反力垂直成分、体幹左右傾斜角度を解析パラーメータとした。歩行速度は10mを最大努力で歩行する速度とした。
 麻痺側下肢最大荷重量及び体幹左右傾斜角度は、支持脚方向への重心移動終了時点から1秒間の平均を採用した。麻痺側下肢最大荷重量は、比較のため体重で除して下肢荷重率(以下WBR)を算出した。歩行速度と麻痺側WBR及び体幹左右傾斜角度の相関関係をSpearmanの順位相関係数を用い、有意水準5%で検定を行った。
【結果】
 麻痺側下肢最大荷重時点で体幹左右傾斜は全て支持脚方向に傾斜しており、歩行速度と負の相関(r=-0.594, p<0.05)が認められた。歩行速度と麻痺側WBR(r=0.173)には有意な相関は認められなかった。麻痺側WBRの平均は79.6±4.8%であった。
【考察】
 麻痺側下肢最大荷重肢位で麻痺側方向への体幹傾斜が少ないほど、歩行速度が速くなることがわかった。また、麻痺側WBRと歩行速度に相関は認められず、これは対象者が見守り下で裸足歩行可能で麻痺側WBRの平均が約80%と高いことが一因と考えた。
 体幹を傾斜させた重さを優位に利用した荷重戦略では、反対方向への荷重切り替えが円滑に行えない。体幹左右傾斜角度の減少は、このような荷重戦略から体幹が重力に抗し筋活動による能動的な荷重戦略への変化と捉えると、麻痺側下肢の支持能力だけでなく体幹を正中位に保持できることが歩行速度に関係すると考えられた。
 今後は、歩行能力の低い対象者を含め、荷重姿勢と歩行速度や歩行自立度との関係について検討を行っていきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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