九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 196
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慢性閉塞性肺疾患患者に、NPPVを導入しての理学療法の取り組み
*楠木 静香黒岩 喜代子山中 弘毅
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抄録

【はじめに】
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の管理、治療については、GOLDをはじめ各種ガイドラインが示されている。今回、既存のガイドラインに加え、非侵襲的陽圧換気(NPPV)を用いながら、呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)を行い、歩行能力と運動耐用能の改善が見られた最重症の2症例を経験したので、報告する。
【症例1】
A氏、85歳男性、身長150_cm_、体重37kg、COPD病期4、呼吸困難にて入退院を繰り返しており、二回目の入院。息苦しさの為離床せず。酸素3ℓにても喘鳴と呼吸困難あり。やや難聴だが、声掛けにはしっかり反応され、会話も問題なく理解良好。表情は、呼吸苦もあり活気みられず。ポータブルトイレ自立。食事自立。胸部CTでは、肺野の血管影減少。気管支壁肥厚あり。 動脈血ガスでは、室内気にてpH(7.303)、PCO2(84.1)、PO2(37.2)、1秒量の予測値(29%)
【症例2】
B氏、86歳男性、身長168_cm_、体重48kg、COPD病期4、既往歴としてむちうち症、交通事故による前脛骨筋麻痺、息苦しさのため離床できず。酸素4ℓ使用。発語は良好だが、難聴で家人に怒鳴ったり暴れたりする様子ある。頑固で、家人や病院職員の助言も聞かない。ポータブルトイレ自立。 胸部CTでは、肺過膨張、肺野の血管影減少。両側気管支壁肥厚あり。酸素3ℓにて動脈血ガスでは、pH(7.296)、PCO2(93.8)、PO2(76)、HCO3(44.7)、1秒量の予測値(15%)
【結果】
今回は、3分間歩行検査実施し、歩行後の酸素飽和度の変動、歩行後の脈拍数、歩行後の回復に要する時間を記録した。A氏は歩行距離延長と歩行後の酸素飽和度の低下からの復帰、脈拍数の回復時間の短縮が著明に認められた。B氏は歩行終了直後の酸素飽和度の低下がおさえられ、脈拍の増加がおさえられ、回復時間の短縮が認められた。
【考察】
2症例ともNPPV治療と呼吸リハを併用した結果、下肢筋力増強、心肺機能向上、運動耐用能向上が認められた。しかし、両者とも血液ガス、ADL等の著明な変化は得られなかった。COPDは定期的なリハビリの介入によりADLの低下を防ぐ必要がある。3分間の歩行でも代謝が増大し、筋の酸化ストレスが増加、筋耐久性の低下から、時に運動療法も過度な負荷となりうる。適切な運動負荷を考慮して、リハプログラムの作成をすべきである。
【おわりに】
今回、運動機能面に着目し評価を行った。一方COPDの合併症には抑うつもあるといわれている。ADLやQOLの低下を考えると心身両面からのサポートが必要と考える。

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