九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 201
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Timed up and go testと重心動揺計を用いた転倒予測について
*松田 健志小松原 佳苗島澤 真一尾形 かおり
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キーワード: 転倒, TUG, 重心動揺計
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抄録
【はじめに】
介護保険における通所系サービスや入所系サービスでは、要介護高齢者の重度化防止のため、また利用者の尊厳のために、サービス利用中の移動手段は安易に安全な手段を選択するべきではない。これらのサービスにおける最も多い事故は転倒・転落であり、未然に防ぐための一つの手段として判断基準が必要であると考える。当事業所では、運動機能テストを定期的に実施しており、転倒リスク判断の一助として用いることが出来うると思われる。中でも移動及び姿勢制御に関連が深いと思われるtimed up and go test(以下TUG-T)、重心動揺計による測定値と施設内転倒の関係を検討したので報告する。
【対象】
当事業所の利用者88名(性別:男性26名、女性62名、平均年齢81.3±7.2歳)。介助なしに歩行出来ない利用者、30秒以上の立位が困難な利用者は除外した。
【方法】
測定値1.TUG-T 東京都老人総合研究所発行介護予防運動指導員養成講座テキストに記載された方法に準じて実施した。測定値2.重心動揺計(アニマ社製グラビコーダG-620)を用い開眼開脚立位(両側拇指MP内側間17cm)にて前方を注視し、総軌跡長、外周面積、実効値を測定した。*測定値1、2の測定期間は2008年の1月
調査 運動機能テスト実施後2年間(2008年1月~2009年12月)で、施設内での転倒数を調査する。なお、転倒とは対象者の意思に反して足底以外の身体の部位を床面に着いた場合とする。
解析方法:調査結果より対象者を転倒群と非転倒群に分け、TUG-T、総軌跡長、外周面積、実効値(測定値1、2)でそれぞれMann-WhitneyのU検定を用いて群間比較をした。また、Spearmanの順位相関係数を用いて測定値間の相関について検討した。なお、本研究は当院の倫理委員会にて承認を受けている。
【結果】
2年間の調査で、対象者88名のうち14名が施設内にて転倒した。TUG-T:転倒群28.8s±20.9(中心値20.5s) 非転倒群18.1s±9.5(15.5s)、総軌跡長:転倒群77.8cm±20.0(80.0cm) 非転倒群81.4cm±41.2(67.7cm)、外周面積:転倒群5.3cm2±5.5(5.5 cm2)非転倒群6.5±7.6 cm2 (4.4cm2)、実効値:転倒群3.5±1.6 cm2 (3.8cm2) 非転倒群4.4±6.7 cm2 (2.8cm2)であった。TUG-Tの転倒群と非転倒群の群間比較において有意差が認められた(p=0.027)。また、転倒群のTUG-Tと総軌跡長で有意な相関関係が認められた(p=0.017)。
【考察】
上記の結果より、TUG-Tは転倒を予測するために有用であることが示唆された。一方、重心動揺計による測定値は、視力や錐体外路症状、アライメントの異常の影響、上肢の補助がないことによる日常生活とのずれがあるため、単独では転倒リスクの指標にはなりにくいが、TUG-Tの値と考えあわせることによって移動手段を検討する際に有用であると考えられる。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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