九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 110
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当院における脳血管疾患の退院時の現状調査と課題
*長岡 美帆大湾 翔太大津留 知佳柴尾 幸
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抄録

【はじめに】
 当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)では、在宅復帰を目標に日々リハビリテーションに取り組んでいる。そのうち、脳血管疾患患者においてはFIMの点数が低いと在宅復帰が困難な方もみられ、先の研究でも報告されている。しかし、その中でも在宅復帰となったケースもいる事から、今回当院回復期リハ病棟での脳血管疾患患者の退院時の調査を行い、在宅退院と非在宅退院について比較・検討し今後の課題を見出していく。
【対象】
 平成21年4月から平成22年3月までに当院回復期リハ病棟を退院した、脳血管疾患患者141名を対象とした。内訳は男性86名、女性55名、平均年齢69.1歳であった。ただし、胃瘻造設や急変などによる退院は除外した。
【方法】
 対象者を自宅退院された患者を在宅群、自宅以外に退院された患者を非在宅群に分類した。年齢、在院日数、入院時・退院時のFIMの総得点・各項目、意識障害・高次脳機能障害・認知症の有無について調査し比較・検討を行った。統計はt検定を使用した。また、在宅群は純粋な自宅退院とした。
【結果】
 在宅群は89名、平均年齢66.4歳、平均在院日数117日、高次機能障害・認知症を呈した患者は45名で在宅群全体の50%であった。FIMの入院時平均総得点76.5点、退院時平均総得点103点であり、総得点・各項目共に有意差を認めた。非在宅群は52名、平均年齢75.2歳、平均在院日数144日、意識障害・高次脳機能障害・認知症を呈した患者は48名で非在宅群全体の92%であった。FIMの入院時平均総得点38.6点、退院時平均総得点54.3点であり、総得点・各項目共に有意差を認めた。また、在宅群・非在宅群の2群間での年齢、在院日数、入院時・退院時のFIM総得点においても有意差を認めた。
【考察】
 今回の結果、当院においても在宅群に比べ非在宅群において入院時・退院時のFIM総得点が低く、年齢・在院日数に高い値がみられた。また、意識障害・高次脳機能障害・認知症を呈している患者も非在宅群全体の92%と高く、介助者の負担や家族の受け入れ等、在宅復帰困難の因子になると示唆される。しかし、FIMの点数も低く、高次機能障害・認知症を呈していても、家族の受け入れが良好な事や介護サービスの利用、患者の最大能力を下げる事で安全面や介護者側の負担を考慮した事によって在宅退院となったケースもあった。このことから、身体機能・能力面以外にも意識障害・高次脳機能障害・認知症に対してのアプローチや家族指導、介助者の負担にならない様な環境設定や介護サービスの提供が重要であると考える。そのためにも、今後の課題として在宅または非在宅に至った理由を詳細に調査・分析を行い、更なる在宅復帰向上に繋げていきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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