抄録
【はじめに】
近年、三次元動作解析装置を用いた骨盤を含む体幹回旋運動を計測した報告が散見されるが、三次元動作解析装置のような高価な装置を持つ施設は限られており、簡易的に測定するのは難しい。今回、立位での骨盤を含めた体幹回旋可動域を簡易的に測定できる機器の作成を試み、まず水平面骨盤回旋角度測定器(測定器)を試作し、検者内、検者間再現性を評価したので報告する。
【対象および方法】
試作した測定器は腰椎硬性コルセットを基に作成し、大きさは横75cm、縦20cm、重量700gである。測定方法は両足部を揃えた立位で自動回旋させ、測定器が床に置いた分度器を指す角度を骨盤回旋角度とした。またゴニオメーターを用い、両上後腸骨棘を結ぶ線と前額面がなす角度を頭方より測定した。角度は5度単位で測定した。測定は数日空け2回行った。被験者は下肢、体幹に既往のない成人男性10名、平均年齢26.8±4.4歳、身長173.6±8.7cm、体重70.5±6.7kgであった。被験者に対し研究の主旨を説明し了承を得た。検者は理学療法士2名、経験年数は6年目(検者A)と1年目(検者B)である。測定結果から級内相関係数(ICC)を求め、検者内、検者間再現性を検討した。
【結果】
測定器の骨盤回旋角度は、検者Aの1回目右回旋は平均45.5±10.1度、左回旋は40.3±8.0度、2回目は47.2±10.9度、40.0±7.9度であった。ゴニオメーターでは、1回目右回旋43.8±4.4度、左回旋47.0±4.9度、2回目41.8±5.9度、45.8±7.5度であった。検者Bは測定器で1回目右回旋49.0±10.4度、左回旋46.0±8.1度、2回目46.7±10.7度、37.5±10.5度であった。ゴニオメーターは1回目右回旋51.1±5.5度、左回旋51.5±4.5度、2回目51.6±9.9度、48.8±8.9度であった。検者内ICCは検者Aで測定器右回旋0.75、左回旋0.65、ゴニオメーターは0.48、0.57であった。検者Bでは測定器0.94、0.65、ゴニオメーターは0.58、0.18であった。検者間ICCは測定器で右回旋0.53、左回旋0.44、ゴニオメーターは0.05、0.40であった。
【考察】
今回測定器を試作し検者内、検者間再現性を検討した結果、検者内再現性を認め、検者間再現性は低い結果となった。ROM測定の再現性は、同一検者内の再現性より、検者間の再現性の方が低くなると報告されており、本研究の結果も同様の傾向を示した。検者内再現性が得られたことで、同一検者による測定器の使用は可能であるといえるが、検者間再現性が低かったことから、臨床応用に耐えうるまでは至っていないと考えられる。検者間再現性が低値であった原因を考え、今後臨床応用できるように改良を加え、データの収集、検討を行いたい。