九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 226
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急性期患者の臥位姿勢による半側空間無視検査の検討
検査用紙のサイズ変更による比較を踏まえて
*橋口 大毅村田 明俊白澤 奈津紀
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抄録

【目的】
発症早期において、意識レベルや認知面に問題はないが行動観察上、半側空間無視(以下USNとする)が疑われる場合、坐位がとれない等の制限があり、BITの線分二等分線テストが困難である。そこで今回、_丸1_坐位と臥位にて結果に差がでるのか_丸2_検査用紙の大きさの違いで差がでるのかさらに、_丸3_左右半球障害の違いによって、差が出るのかという3点に着目し、研究を行った。
【方法】
_丸1_健常人17名をベッドサイドで取り付け可能な簡易キットを作成し、臥位と坐位で比較した。
_丸2_H21年10月からH22年3月までに、当院に脳血管疾患を初発として入院し、USNを呈していると疑われた患者10名(左USN患者5名、右USN患者5名)を対象として臥位にてA4、B4、A3と用紙の大きさを変えて実施した。
【結果】
結果の判定はBITに従い行った。
_丸1_健常人での臥位と坐位では、有意差は認められなかった。検査用紙の大きさが変化しても、通常のA4サイズでのBITの採点基準を満たしており、A4とB4、A4とA3を比較した結果、有意差は認められなかった。
_丸2_右USN患者は検査用紙を変えても、いずれも9点となりカットオフ点にはかからず、有意差は認められなかった。左USN患者では、全員がカットオフ点を下回り、A4とB4では有意差は認められなかったが、A4とA3では有意差が認められた。
_丸3_左USN患者と右USN患者との比較では、A4,B4,A3全てにおいて有意差が認められた。
【考察】脳血管疾患で発症初日にリハビリのオーダーが出されることが多いが、高血圧等全身状態の問題で、早期に離床ができない患者も多くみられる。全身状態の改善を待ち、車いす坐位が安定してからUSNの検査等を行っていたが、今回ベッドサイドでも容易に実施できる検査方法として臥位での検査も有用であると示唆された。また右USN患者に関しては、A4,B4,A3で差は認められなかったが、左USN患者に関しては、A4とA3において有意差が認められた。これは、A4、B4、A3の順に行ったことで注意の持続性低下に伴う意欲の低下が原因の一つと考えられる。また、右半球の機能として注意の方向付けや空間把握、眼球運動などの視覚的優位性があるため、把握する空間が広いことや、線分二等分線特有の両端への注意の転換を行うことがより困難になったためだと考えられる。しかし、この検査は意識レベルが清明で、理解力の低下等が認められない患者に限定されるという問題点も残されている。
【まとめ】
今回の研究において、発症早期からUSNの評価が可能であるという一つの可能性を示せた。今後は、発症早期と回復期及び維持期のデータと比較検討を行い、予後予測へ繋げ、また他の高次脳機能障害、麻痺のレベルやADL能力との関係を比較検討していきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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