九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 230
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トイレ動作自立が他のADL動作に与える影響について
FIMとの比較より
*榎 直行河野 裕也
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抄録
【はじめに】
 当院に処方された廃用症候群患者は多く早期よりADL訓練、離床や作業活動等の働きがけを行っている。その中で、OTアプローチでは家族要望が最も多く聞かれ、在宅生活を目指す上でも受け入れ条件となるトイレ動作に対して積極的な訓練を実施している。そこで今回、トイレ動作への介入をすることで、リハビリ評価の初期時と最終時のFIM(Functional lndependent Measure)の数値の変化とトイレ動作と他のADL動作との関連性について検討・考察をしたので報告する。
【対象と方法】
 対象は、2009年9月11日から2010年2月24日までに内科疾患により入院した26名中、廃用症候群と診断されADL訓練を強化した群(強化群)14名、うち平均年齢84.7±6.8、在院日数38.6±19.7。維持目的にてリハビリ開始した群(維持群)12名、うち平均年齢80.3±9.7、在院日数27.5±19.2を強化群と維持郡の2群に分けた。次に初期時と最終時の点数を比較した。統計学的処理にウィルコクソン符号順位検定を用いて、危険率1%を統計学的有無とし、スピアマン順位相関を用いて相関係数r>0.5で相関ありとした。
【結果】
 強化群の合計得点では、初期時と最終時(以下、初期時/最終時)では、(49.6±19.1/77.4±15.7)、維持群の合計得点では、(78.3±31.7/81.2±33.9)であった。また、ADL強化群ではトイレ動作、維持群では歩行に最も相関を認めた。
 その他のADL強化群のトイレ動作との関連は更衣(下)、更衣(上)、整容、排尿、排便、移乗のベット、トイレ、移動項目の歩行にトイレ動作との相関を認めた。また、維持群においては、トイレ動作の点数に大きな変化は見られなかった。
【考察】
 維持群では最終時に歩行項目の得点が高く、生活範囲の維持・拡大の為に介入した結果であると考える。強化群においては、トイレ動作の介入により他のADL動作との相関を認めた。その要因として一連のトイレ動作には、移動、トランスファ―、立位保持、下衣の上げ下げ、会陰部の始末等、複合的な動作能力等が多く含まれているからだと解釈する。よって、トイレ動作は他のADL動作と強く関連していることが推測され、自宅復帰するためには、重要な動作であると考える。加えて、身体・精神機能の低下を予防する観点からも日々の習慣を大切にして廃用症候群の予防に努めることが重要である。
 今後の課題では、病棟でのトイレ動作が自宅での生活場面に結び付けられるように、ご家族も一緒に向き合い協力を得る事が必要であると考え、トイレ動作自立に対しての取り組み、他のADL動作との関連性について今後も継続して具体的に検討していきたい。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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