九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 229
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脳卒中患者の移乗動作とBergBalanceScaleの関係
*大城 雪乃末吉 恒一郎伊集 章
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抄録

【はじめに】
移乗動作は車椅子からベッド間、あるいはトイレ間など、日常生活場面において欠かせない項目であり、当院の入院患者においては、歩行時の転倒よりも、発生件数が高い状況である。脳卒中患者の歩行能力の評価や高齢者のバランス検査と転倒との関連性について、バランス評価ツールの1つであるBergBalanceScale(以下BBS)が広く普及している。しかし、歩行以外でのADL評価との関係性についての報告は少ない。そこで今回、移乗動作に着目し、監視群と自立群を比較した結果、若干の知見が得られたので報告する。
【方法】
対象は、回復期病棟に入院している重度の失語症や認知症がない脳卒中患者16名で、研究内容について充分な説明と同意を得て行った。内訳は移乗動作自立群(FIM移乗項目6点以上)10名、監視群(FIM移乗項目5点)6名とした。平均年齢は60.8±15歳であった。方法は対象者にBBSの原法をもとに測定し、自立群と監視群の各項目の関連性を精選した。統計解析にはBonferroniの多重比較検定にて両者を比較し、有意水準5%未満を有意差があるとした。
【結果】
BBSの平均は自立群49.3点、監視群23.1点であり、自立群の方が有意に得点が高かった。(p<0.01)。また、自立群と監視群においてBBS得点を項目ごとに比較した結果、「座位保持」、「座位から立位」、「立位保持」、「立位から座位」、「移乗」、「閉眼立位」の6項目に有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】
今回、BBSを用いて、ADLにおける移乗動作自立群と監視群を比較した結果、6項目において有意差が認められ、中でも座位保持や立位保持などの静的姿勢保持能力や、立ち上がり・着座などの動的姿勢制御が必要になることが示唆された。移乗動作は、座位姿勢より体幹を前傾して立ち上がり、方向転換を行なって着座し、再び座位姿勢に戻るという一連の動作であり、今回はこれらの構成要素が関与し、6項目が精選されたと考えられた。また、有意差がみられなかった項目は、「リーチ」、「物を拾う」、「振り向き」、「タンデム」などの複合的なバランス能力を要する8項目であった。BBSは歩行の評価として使用されているが、移乗動作のような座位から立位間で行われる動作においては、差が認められない項目もあると考えられた。このことから脳卒中患者の移乗動作自立には、基本的なバランス能力が関与しているのではないかと考える。しかし臨床においては所要時間を多く要する為、今後さらに症例数を重ねると同時に、簡略化BBS(6項目)への臨床的な妥当性について検証していきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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