九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 241
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在宅認知症患者をもの忘れ外来を通してデイサービスへつなげたOTアプローチ
~家の中から活動範囲・楽しみが広がる外の世界を目指して~
*平山 久美子
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抄録

【はじめに】
  当院では、平成18年5月よりもの忘れ外来を実施している。認知症進行予防と在宅生活の支援、外出の機会を作り、楽しみを見つけることを目的としている。また、精神面でも意欲の向上や情緒面の安定を図り、家族の介護に対する不安を軽減できるのではと考えている。この中で、閉じこもりがちで周辺症状が著明だったがデイサービスへ繋ぐことができた一例を報告する。
【事例紹介】
70代女性。アルツハイマー型認知症。要介護度3。H18年歩行時に転倒し、左大腿骨転子部骨折で他院入院。入院前に長女の夫が亡くなり、その頃から「日時がわからない」など記憶障害が出現。入院中さらに進行し紹介にて当院受診。H20年より週1回もの忘れ外来開始。
【作業療法評価】
HDS-R、MMSE、ADAS、IADLスケールにて評価を実施。見当識、短期・長期記憶、記銘力の低下が著明であり、理解力・判断力も低下している。ADLは全て自立。対人関係は良好で、穏やかな性格である。自己決定が難しく受け身的で、わからないことは夫に聞き答えを求める。
【介入計画】
精神的落ち込みから情緒の安定を図る、認知症進行予防を目的に、学習療法(計算)、創作活動、回想法を実施。
【結果】
スクリーニング検査や計算、創作活動からも見当識の低下や記憶障害が以前より著明になり、家事や電話対応などできなくなった。しかし現在周辺症状は落ち着いて、精神情緒面も安定している。またデイサービスに通い始めたことでさらに外出機会と対人交流が増え、外界からのいい刺激となり脳の賦活や精神面へのアプローチができている。定期的な外来受診と薬物療法、作業療法を組み合わせて相乗効果が出ているのではないかと考える。
【考察】
本症例のように、スクリーニング検査では大幅な改善が見られず、むしろ中核症状は徐々に進行しているケースがある。しかし、周辺症状の徘徊は改善傾向にありADLも維持できているが、今後はADL能力も低下することが予測される。開始時当初は休みがちだったが現在はほとんど休むことはない。笑顔も多く見られるようになり、言動からも症例にとってもの忘れ外来が楽しみの場所であり、定期的な外出を促すことで定着できたのではないかと考える。課題として、現在集団での対応ができていないこと、自宅での訓練や関わりが家族の都合等で定着しにくいことなどが挙げられる。また、当初は軽度認知症で通いはじめたが、年月とともに重度化した場合どう関わりあっていくか目標や方針を考える必要もある。医師との連携や介護保険サービスとの併用、家族の協力体制づくりなど今後充実なければならないと考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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