九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 254
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訪問リハビリテーションの必要性とは
退院後下肢随意性向上を認めた胸髄症患者を経験して
*中薮 誠宮崎 一臣隈井 圭輔中田 健介今任 洋就
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抄録

【はじめに】
 今回発症後1年半経過時、下肢筋力1~2レベルであった胸髄症患者がその後8ヶ月でT杖歩行可能となるまでを訪問リハビリテーションを通して経験する事が出来たので考察を加え報告する。
【症例】
 70歳代、男性、受傷前はADL完全自立であった。H20年2月歩行困難にて救急病院入院。MRIにて第1~3胸椎に狭搾あり第1胸椎人工骨拡大術施行。その後同年3月当院回復期病棟に入院。リハビリ実施後同年8月に退院。退院時ADLとして移動は車椅子使用、ポータブルトイレ及び尿器使用しFIMにて97点。筋力はGMTにて上肢筋力4レベル・下肢筋力1~2レベル(足関節1レベル)・体幹2レベルであった。自宅は市営住宅1階で妻と同居、介護度は要介護2であり、退院直後より2回/週の訪問リハ(2単位)、1回/週の訪問看護、2回/週のデイサービスの利用であった。本報告における本人・家族の同意を得て実施した。
【経過】
 退院時訪問リハ介入目的として1:下肢機能の維持向上2:ADL動作の指導及び再検討、3:転倒時の介助法検討であった。退院後早期は床への転落が何度かあり訪問スタッフ要請にて対応しており、環境設定・動作指導・介助方法指導が課題であったが、3ヶ月時には下肢随意性向上変化無いものの家族介助にて床からベッド等への移乗動作可能となった。下肢機能についてはほとんど随意性及び筋力向上見られなかったが随意性促痛及び筋力向上訓練を継続し可動域維持訓練も実施した。その後発症より1年半後の平成21年8月頃より随意性向上見られ訪問リハ3回/週となった。同年11月に股関節屈曲及び膝関節伸展3レベル・足関節背屈3レベル、同年12月に股関節屈曲及び膝関節伸展4レベルとなった。動作は平成21年8月まで上肢有意の移乗動作であったが平成21年12月には歩行器歩行監視にて可能。平成22年4月にT杖歩行監視にて可能となった。ADLは平成22年4月にFIM107点となり、退院後から希望のあった自宅入浴もヘルパー利用無く妻の見守りにて一人で可能となった。
【考察】
 退院直後の訪問リハ介入時は主治医も下肢の回復は厳しいとの判断であり機能維持・介助方法やADL指導にて在宅生活のサポートをする予定であったが、発症後1年半経過後の下肢機能回復に合わせたADL設定変更や特に随意性の乏しかった足関節の可動域維持を継続できた事がその後のADL向上に繋がったと考える。
 今回の症例を通して退院後リハビリを継続する重要性を改めて感じた。特に自宅での生活変化に対し密接に関わる事ができ、定期的な関節可動域や動作の評価など、1対1でのリハビリが可能な訪問リハビリテーションの必要性を再認識することが出来た。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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