九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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地域在住高齢者の活動能力とQOLとの関係 
性差の検討
*溝田 勝彦村田 伸堀江 淳村田 潤大田尾 浩
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キーワード: 活動能力, QOL, 性差
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抄録

【目的】
わが国では高齢化が進み,2007年には高齢化率が21%を超え超高齢社会へと突入した.そのような状況下,高齢者のQOLの向上は大きな課題の一つである.今回,地域在住高齢者を対象として,活動能力とQOLとの関係について,性差に注目して検討したので報告する.
【対象】
福岡県F町に在住する高齢者で,平成21年8月5日から9月18日にかけて協力が得られた304名のうち,重度の認知症が認められない者(MMSEで20点以上)285名(男性64名,女性221名,平均年齢73.0±7.1歳)を対象とした.対象者には研究の趣旨と内容について説明し同意を得た.
【方法】
F町中央公民館や地域の各集会所にて質問紙法にて調査を実施した.個人の基本的属性(氏名,年齢,性別,家族人数,教育年数)に関する情報収集とMMSEを実施した後,活動能力の評価として老研式活動能力指標,QOLの評価として主観的健康感,生活満足度,生きがい感,人間関係の4項目を評価した.QOLの評価にはVAS(100mmの物差しスケールを用い,最も否定的な状態を0,最も肯定的な状態を100とした)を用いた.統計処理は男女別にピアソンの相関係数を用いて分析した.女性は対象者数が男性の約3倍と多かったため,年齢層別に男性と均等となるように乱数表を用いて抽出した64名を分析対象とし,有意水準は5%とした.
【結果】
基本的属性では,年齢は男性74.4±5.5歳,女性74.0±5.7歳,家族人数は男性2.7±1.6人,女性2.5±1.8人,教育年数は男性11.4±2.5年,女性9.6±2.4年,MMSEは男性28.1±2.4点,女性23.2±2.3点であった.活動能力点数は,男性11.8±1.7点,女性11.9±1.5点で有意な差はなかった.QOLの評価では,主観的健康感は男性60.5±18.7,女性56.0±19.8,生活満足度は男性65.0±18.6,女性62.5±22.0,生きがい感は男性69.1±19.6,女性68.5±22.7,人間関係は男性76.2±21.3,女性78.3±22.3であった.男性高齢者で活動能力と有意な相関が認められたのは,MMSE(r=0.36),主観的健康感(r=0.29),生活満足度(r=0.34),の3項目であった.女性高齢者で活動能力と有意な相関が認められたのは,教育年数(r=0.31),MMSE(r=0.25)の2項目のみで,QOLのすべての下位項目との間に有意な相関は認められなかった。
【考察】
高齢者のQOLに影響を与える要因の研究は多く,共通の関連要因として健康状態と経済状態が挙げられている.しかし,高齢者のQOLと活動能力の性差に関する研究は少なく,関連要因の相違は明らかではない.今回の調査では,男性では活動能力がQOLの関連要因となるが,女性では関連要因とはならないという結果であった.このことから,男性高齢者は女性高齢者よりも,活動能力とQOLとの関連が強いことが示唆された.

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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