九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 271
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慣れ親しんだ動作の治療への応用
~片麻痺患者のプログラムに素振り動作を導入して~
*安藤 隆一石丸 知二玉田 英寛甲斐 恭子原田 琢也渡邉 美幸宮原 龍司佐藤 郁麻生 翔太桑島 悠輔
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抄録
【はじめに】
筋緊張が亢進しやすく、自動運動、荷重練習が困難であった症例に対し、素振り動作を導入したところ上肢の運動と左右の重心移動が促すことができた。この素振り動作について検証を行い、プログラムに導入した。一ヶ月後の再評価で変化が認められた。
【症例紹介】60代、男性、左片麻痺。約30年の野球経験あり。CTにて右前頭、頭頂部の前大脳動脈支配領域、前大脳動脈支配領域と中大脳動脈支配領域の境界域の脳梗塞巣が認められた。
【理学療法評価】
Brunnstrom Stage_IV_:_IV_:_IV_。表在、深部感覚ともに中等度鈍麻。Ashworth Scale:3。左上下肢の自動運動では筋緊張が亢進する。歩行はT字杖使用、左立脚期において下肢の緊張により底屈位となり踵接地、足底接地みられない。
【検査方法】
アニマ株式会社製のGS31Pを使用した。バットはプラスチック製のものを用いた。素振りは3分間実施してもらい1)素振り前後の静的バランス2)素振り前後の動的バランス3)素振り前後半30秒を計測した。4)素振り前後の歩行の評価も行った。静的バランスは静的立位検査、動的バランス、素振り時の検査は左右方向最大動揺テストを用いた。
【検証】
1)静的バランスでは左下肢への荷重量の増大が認められた。左右中心において3.57cmの左側への移動がみられ、重心が中心へ移動していた。また外周面積の減少からふらつきが減少したと判断した。2)動的バランスでは左右中心が左へ4.19cm移動し、左右幅も5.22cmと増大していることから、重心の中心への移動と重心移動の増大が認められた。3)素振り前後半においても、重心の中心への移動と重心移動の増大がみられた。4)素振り後の歩行は緊張の軽減による踵接地がみられ、共同運動による足指の屈曲が軽減した。以上より素振り動作は静的バランスの向上、動的バランスの向上、歩行時の下肢の筋緊張軽減が得られたので、素振り動作を治療に導入し一ヶ月間継続した。また素振り動作中は緊張による足指の屈曲を抑制するため、ロール状に巻いた弾性包帯を敷き、足指を伸展させた。荷重量のフィードバックができるようにモニターを観てもらいながら実施した。
【結果】
一ヶ月継続後の静的バランスでは左右の荷重量がほぼ等しくなり、動的バランスでは左右幅の増大、左右中心が中心へ近付くなどの変化がみられた。歩行状態も独歩にて可能となり、足底接地が可能となった。
【考察】
長年積み重ねられた動作性の手続き記憶により、全身的に連動して行えたこと。バットを振ることに意識が分散され、重心移動への不安感が軽減し筋緊張の助長なくスムーズに動作が行えたこと。体軸回旋運動であるため、単純な側方移動練習よりも筋活動が効率よく行うことができ、神経・筋の協調性が改善されやすく、筋緊張の改善につながったのではないかと考えた。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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