九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 270
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認知過程を活性化することによる脳の変化について
~f-MRIを用いての比較・検討~
*上橋 秀崇中条 一茂大重 匡平名 章二福留 史剛原田 亜希子倉元 笑子前田 敏也杜山 由美庵下 珠美恋塚 雅也下別府 宏光豊島 忍土屋 政寛
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抄録

【はじめに】
 人は環境との相互作用により運動が生まれる。この関係を構築するためには、筋収縮により外部情報(環境)を知覚する。このシステムが健常人においては学習、病的状態からは回復となる。認知理論ではこの運動としてのシステムを学習していく事が回復となり、学習の為には、注意・知覚・記憶・判断・言語といった認知過程・身体イメージを活性化させることがポイントとなる。
 今回、functional magnetic resonance imaging(以下f-MRI)にて認知過程の活性化による脳の変化を画像化し検証を行ったのでここに報告する。
【対象】
 対象者は本研究に同意が得られた中枢神経疾患の既往がない健常男性、28歳。
【方法】
 左手指屈曲運動を以下の3つのパターンにて行う。〔1〕まだ握らないスポンジをイメージして屈曲。〔2〕実際にスポンジを握り質感を感じ取りながら屈曲。〔3〕実際握ったスポンジをイメージして屈曲。以上の3つのパターンをf-MRIにて6スライスの断面に分け、脳全体を関心領域(300.94cm×cm)にて設定し反応した平均値を出し、〔3〕と〔2〕の各スライスの差をA群、〔1〕と〔2〕の各スライスの差をB群とし、t検定にて対応ある統計処理を行った。
【結果】
  A群(〔3〕と〔2〕の各スライスの差)では0.41±0.33%、B群(〔1〕と〔2〕の各スライスの差)では1.75±0.5%と差を認め5%の危険率で有意差を認めた。(mean±SD)
【考察】
 運動において、イメージをして握ることにより、脳活動は変化する。今回の結果より、「〔3〕実際握ったスポンジをイメージして屈曲」においては、「〔1〕まだ握らないスポンジをイメージして屈曲」よりも、「〔2〕実際にスポンジを握り質感を感じ取りながら屈曲」に近いデータとなる。スポンジの質感を表在・深部感覚に注意を向け知覚し、記憶・判断にて認知する。またその過程をイメージ・再現することにより脳の活動が同じ認知過程を活性化し、運動としてのシステムを学習していると考えられる。
【まとめ】
 中枢神経疾患の既往がない健常男性の左手指屈曲運動を、3つのパターンにて行い、脳の変化を検証した。結果、同じ運動であっても情報により認知過程を活性化した運動をイメージして行うことは、情報のない運動の脳活動よりも、イメージの元となる運動の脳活動に差が少ない。
 今回は健常者における研究である。中枢神経疾患のある場合、運動・感覚障害により外部情報(環境)を知覚できず、認知過程に問題が生じる。今後は中枢神経疾患の脳の変化を研究し健常者との比較・検討しリハビリテーションに役立てていきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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